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新型コロナ対策 症例Scope

オンライン診療予約から受診までの数時間で重篤化する危険も、事前トリアージを実施しては―オンライン診療指針見直し検討会

2020.12.22.(火)

オンライン診療においては、申し込み(予約)から受診までに数時間がかかるケースが多く、その間に重篤な状態に陥る可能性もある。患者は緊急性を判断できないことも多く、事前にオンラインや電話でトリアージを行い、▼オンライン診療を待つ▼すぐに対面診療を受ける▼すぐに救急搬送を要請する―などの判断を行ってはどうか―。

オンライン診療では得られる情報が限られるために、見落としや誤診のリスクが高い。このため、必要に応じて対面診療に移行する場合があることなどを、事前に医師が患者に丁寧に説明し、同意を得ることを義務付けてはどうか―。

12月21日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました。

なお検討会では、当初「2020年内に初診患者を含めたオンライン診療の恒久化に向けた方向性を示す」考えでしたが、新型コロナウイルス感染症がみたび猛威を振るっている状況から「当面、臨時特例措置を継続し、恒久化に向けては専門的な観点も含めて丁寧に検討することが適当」と田村憲久厚生労働大臣が判断したことも踏まえ、▼来年(2021年)6月に恒久化に向けた意見を取りまとめる▼関係学会での意見も踏まえて同年9月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を見直す―こととなりました。

12月21日に開催された「第13回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

オンライン診療の予約から実施までに数時間の待ち時間、その間に事前トリアージを実施

菅義偉内閣総理大臣を筆頭に、平井卓也IT担当大臣、河野太郎行革担当大臣、田村憲久厚生労働大臣が「安全性と信頼性をベースに、初診も含めオンライン診療は原則解禁する」(恒久化)方針を決定しました。これを受けて検討会では、初診を含めたオンライン診療を適切に実施するための安全性・信頼性に係る次の7つの論点を今後検討していくことを確認しています(関連記事はこちらこちら)。

(1)医師・患者間の関係性の醸成
(2)必要な対面診療の確保
(3)事前のトリアージ(オンライン診療に不適な症状を事前に除外し、対面診療へ誘導する仕組み)
(4)事前の説明・同意(説明・同意についての統一フォーマット、事前同意取得の義務化など)
(5)患者・医師双方の本人確認(マイナンバーカード、HPKI等を用いた本人確認の必須化など)
(6)処方の制限(リスクの高い処方薬等の制限・処方日数制限など)
(7)研修の必修化(オンライン診療に必要な知識・技能についての研修の必修化)

これまでに(1)(2)の論点についてなされた議論の中で、▼過去一定期間内に受診歴のある患者も、初診からのオンライン診療の対象とする▼受診歴がない患者についても「どのような情報を把握できていれば初診からのオンライン診療を一定程度安全に実施できるか」と専門家の意見も踏まえて検討する▼必要に応じて、オンライン診療から対面診療にすぐさま移行できることが重要であり、対面診療は「オンライン診療を実施した医師の所属する医療機関」で受けることを基本とする―などの大きな方向が固まってきています。今後、「過去一定期間内の受診歴」について、どの程度が適当と考えられるか、などをさらに検討していくことになります。

12月21日の検討会では、残りの(3)-(7)の論点について議論を深めました。



まず(3)は、オンライン診療を受ける前に、オンラインや電話でのトリアージを行うことで「オンライン診療に適さない症状や状態の患者」を選別し、適切に対面診療に導くこととしてはどうか、という論点です。

この点、オンライン診療の間口を絞るのでなく「▼対面診療に移れる体制▼医師への適切な研修▼患者の同意取得―を確保することで、オンライン診療が適さない患者を速やかに対面診療に導けば良いのではないか」(黒木春郎構成員:医療法人社団嗣業の会理事長)などの指摘もあります。たしかに、「オンライン診療を申し込んで『すぐ』に医師のオンライン診療を受けられる」状況であれば、その場で医師が「オンライン診療で良いか、対面診療を促すべきか」を判断することができそうです。しかし、厚労省は「現状では、オンライン診療の申し込み(予約)を行ってから、実際にオンライン診療を受けられるまでに、数時間の待機が必要なケースも少なくない。その数時間で重篤な事態に陥る可能性もある(少なくとも患者には重篤化の危険性などを判断できない)ことから、単に待機するのではなく、▼オンライン診療まで待機してよい▼医療機関での対面診療を受けるべき▼すぐに救急搬送を要請すべき―などを判断する仕組みが必要である」と事前トリアージの必要性・重要性を説明しています。

オンライン診療を実施するまえにトリアージを行うことが重要である(オンライン診療指針見直し検討会2 201221)



このほかにも「安全性を重視しすぎるとオンライン診療の間口が狭まってしまう」(大石佳能子構成員:メディヴァ代表取締役社長)、「患者の症状・状態を極めて多様であり、絞りこむことは困難ではないか」(高林克日己専門委員:医療法人社団鼎会理事/三和病院顧問、千葉大学名誉教授/日本内科学会)など、さまざまな意見が出ており、山本隆一座長(医療情報システム開発センター理事長)は「事前トリアージのイメージが構成員間で異なるようだ。一度、実際のトリアージについて説明を受け、共通認識の上で議論を深めることとする」と議論を整理しています。すでにAI(人工知能)を活用したトリアージシステムなども開発されており、これらの活用も検討される見込みです。

なお、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「患者の立場では、『安全性』が最優先されるべき論点である」と強調し、「利便性に偏ったオンライン診療推進姿勢」に釘を刺しています。冒頭に述べたように、首相や関係大臣も、初診を含めたオンライン診療の恒久化に当たって、ベースは「安全性」「信頼性」にあることを確認しており、例えば、オンライン診療の「市場拡大」を重視して「安全性を重視しすぎるべきでない」と考えることは好ましくありません。

関連して、実際にオンライン診療に携わる大橋博樹構成員(多摩ファミリークリニック院長)からは、「患者サイドは『動けないのでオンライン診療があってよかった』と感じるが、そうしたケースで医療サイドは『動けないほどであればこそ対面診療が必要である』と強く感じる。こうした意識の乖離があることを踏まえる必要がある」と指摘しています。患者サイドが「オンライン診療で良い」と判断しても、医療の専門家からすれば「オンライン診療は適さない」ケースが少なからずあり、事前トリアージが必要かつ重要な場面も少なくないと考えられます。

「オンライン診療は得られる情報が少なく、必要に応じ対面診療に移行する」ことなど説明

また(4)は、対面診療と比べてオンライン診療では「医師サイドが得られる情報が限られている(触診などが行えない)ことから、見落としや誤診のリスクがあるため、必要な場合には対面診療に移行する」ことなどを受診前に医師が丁寧に患者に説明し、同意を得るべきではないか、との論点です。

厚労省は、医療機関が▼オンライン診療においては得られる医学的な情報が限られるため、対面診療が必要になる場合がある▼患者が事前のトリアージを受けている▼対面診療が必要と医師が判断した場合に対面診療を実施する医療機関を確認する▼医師が対面診療を指示した場合は、患者は速やかに対面診療を受診する▼これらを踏まえて、患者がオンライン診療の受診を希望する—旨について、事前に説明・確認して同意を得ることや、同意取得の方法などをオンライン診療指針に記載する考えを提示。概ね了承されました。

この点、津川友介構成員(カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授)は「米国では、オンライン診療と対面診療とは同じ医師が行っており、日本でも同じ仕組みが原則となるべきである」と指摘。山本座長もこれを確認したうえで、「例外的に異なる医療機関となるケースがあり、その場合の説明・同意規定を明確にする必要がある」旨を説明しています。例えば、東京に在住する患者が旅行先で具合が悪くなり、かかりつけの医療機関でオンライン診療を受診した際に「旅行先の対面診療を受けられる医療機関を確認する」などの例外的ケースがイメージされます。

関連して「オンライン診療で見落としや誤診があった場合の責任の所在」が論点の1つに浮上しています。「オンライン診療には見落とし・誤診のリスクがある」旨の説明を受け、患者がこれに同意した場合には「見落とし・誤診」は患者の自己責任となるのか、という論点です。

この点、津川構成員は「患者の自己責任はあり得ない。必要な場合には対面診療への切り替えを行う義務が医師にあり、誤診等の責任は医師が負わなければならない」と強調しました。今後、「ベンダー(オンライン診療システムを開発・運用する企業等)の責任」も含めた議論が行わると思われます。

オンライン診療に特有のスキルを身に着けるため、研修を充実する

また(5)は「なりすまし医師」などを防ぐために、医師・患者の双方が「身分確認書類を画面上で提示する」ことなどで本人確認を徹底する方向が確認されています。医師等の資格を電子的に証明するための仕組みとして厚労省がHPKI(保健医療福祉分野の公開鍵基盤、Healthcare Public Key Infrastructure)を認めていますが、十分に普及しているとは言い難いのが実際です。

一方(6)は、オンライン診療において、▼初診ではリスクの高い未承認薬、適応外医薬品の処方は不可とする(対面診療から移行したオンライン再診での継続処方は可能とする)▼医学的に「高リスクで特段の配慮が必要な医薬品」の取り扱いについて、関係学会から意見を求める―方針も確認されました。

さらに(7)は、オンライン診療で特有の技術等を身に着けるための研修を行うべき、との論点です。現在でもオンライン診療を実施するためには研修を受けることが求められており、そこでは▼オンライン診療の基本的理解とオンライン診療に関する諸制度▼オンライン診療の提供に当たって遵守すべき事項▼オンライン診療の提供体制▼オンライン診療とセキュリティ▼実臨床におけるオンライン診療の事例(在宅診療での活用事例を含む)―を学ぶことになっています。

オンライン診療が拡大されることから、上記に加えて▼オンライン診療における問診のあり方(効果的な事前問診(Web上の回答))▼オンライン診療における理学的所見の取り方▼対面診療との効果的な組み合わせ方―も学んでいくことになります。

この論点について佐藤主光構成員(一橋大学経済学研究科・政策大学院教授)は「医療技術の進展等を踏まえた更新の仕組み」「患者が『研修を受講した医師である』旨を簡易に確認できる仕組み」について検討すべきと提案しています。いずれも重要な視点と言えます。



検討会では、論点について一通りの議論を終え、今後、残された論点(例えば「過去にどの程度の受診歴があれば、初診からのオンライン診療を認めてよいか」、「事前のトリアージをどう考えるか」など)を詰めるとともに、関係学会など専門家による検討・研究も求めていくことになります。

来年(2021年)6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2021を見据えて、検討会の意見を取りまとめ、さらに学会による細部の検討(事前トリアージ、処方薬等の制限、研修の充実など)も踏まえて、来年(2021年)9月にオンライン診療指針の改訂が行われる見込みです。

初診を含めたオンライン診療の恒久化に向けて、来秋に指針見直しを行う(オンライン診療指針見直し検討会1 201221)



ただし、指針の見直しによって、直ちに「現在の臨時特例を廃止し、新制度に移行する」わけではありません。新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて、臨時特例を継続するのか、新制度に移行するのか、などを見極めることになります。

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