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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

新型コロナ感染防止のため、臨時・特例的に「初診からのオンライン診療」認める―オンライン診療指針見直し検討会

2020.4.3.(金)

「医療機関の直接受診による新型コロナウイルス感染を防止するため」また「多くの患者が医療機関を受診して、いわゆる『医療崩壊』が起こることを防止するため」に、あくまでも臨時特例的ながら「初診からのオンライン診療」を認めてはどうか―。

ただし、当該医療機関を全く受診したこともなく、他医療機関からの情報提供もない患者に対し、初診時からオンライン診療を行うことは、リスクが非常に高いために、外来医療が極めて危機的な状況になった地域の患者に限定して認めることとしてはどうか―。

4月2日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)で、こうした「特例」が概ね了承されました。規制改革会議の意見を踏まえて「特例」の内容を固め、詳細を厚生労働省で詰めていきます。

なお、検討会は「厚労省と各構成員をオンラインでつなぐ」形で実施されています。

4月2日に開催された、「第9回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」。山本隆一座長・厚労省当局と書く委員とをオンラインで結ぶ形で開催された。

新型コロナ患者の急増や院内感染増加を踏まえ、初診時からのオンライン診療を再検討

新型コロナウイルスが我が国でも猛威を振るう中、検討会では「慢性疾患患者を中心にオンラインによる診療や医薬品処方が可能な範囲を特例的・臨時的に広める」方針を3月11日に了承(関連記事はこちら)。これを受けて、厚労省は3月19日に事務連絡「新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての電話や情報通信機器を用いた診療等の臨時的・特例的な取扱いについて」を示し、例えば、事前のオンライン診療計画への記載がなくとも、慢性疾患患者における「予測される症状変化に対応する医薬品」の処方を電話再診やオンライン診療で可能とすることを明らかにしました(関連記事はこちらこちら)。

検討会では、その際「オンライン診療による新型コロナウイルス感染症等の診断」などについて検討を行いました。「急性期症状について、初診からオンライン診療を認めるべきか」という論点です。

この点、従前から検討会で共通認識となっている「オンライン診療のリスク」(▼全身状態の把握や一定の診断ができない(ビデオ画像や音声から得られる情報は極めて限られる)▼オンライン診療を行うまでオンライン診療で対応可能な状態や疾患であるかの把握ができない(後の対面診療で重症であることが判明するなど)▼なりすまし(適切な本人確認が困難)や通信傍受等、セキュリティの脆弱性などの問題がある▼費用徴収や処方薬横流し等の恐れがある▼すぐさま治療が必要なケースに対応ができない(オンライン診療予約から実際のオンライン診療までにタイムラグが生じる)▼重症化徴候を見逃す恐れがある▼患者が想定した疾患以外を見逃す恐れがある―)を再確認。

オンラインのリスク(オンライン診療指針見直し検討会3 200402)



また感染症治療・研究の専門家である大曲貴夫参考人(国立国際医療センター国際感染症センター長)・加藤康幸参考人(国際医療福祉大学大学院教授)の「オンライン診療による新型コロナウイルス感染症などの診断は極めて難しい。PCR検査結果も100%ではない。自覚症状とSPO2結果とが乖離しているケースもある。『息苦しさがある』『生汗をかいている』などの臨床判断が重要である」との意見を重視し、「不可」としました。



しかし、その後に新型コロナウイルス感染患者が急増していること、院内感染事例が増加していること、新型コロナウイルス感染を恐れ多くの患者が受診控えをし「重症化の恐れ」が生じていることなどを踏まえ、安倍晋三内閣総理大臣が3月31日の経済財政諮問会議で「初診時からのオンライン診療」を検討するよう加藤勝信厚生労働大臣に指示。また規制改革推進会議の「新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォース」でも、「初診時からのオンライン診療を解禁するべき」との意見が相次ぎました。

新型コロナウイルス感染患者の動向1(オンライン診療指針見直し検討会1 200402)

新型コロナウイルス感染患者の動向2(オンライン診療指針見直し検討会2 200402)

医療機関が患者情報を一定程度把握している場合には、初診からのオンライン診療が可能

こうした要請を受けて検討会では「オンライン診療による新型コロナウイルス感染症等の診断」、具体的には「継続した発熱等、新型コロナウイルスへの感染を疑う患者の治療(新型コロナ等の診断)」「軽度の発熱、上気道症状、腹痛、頭痛等について、対症療法として解熱剤等の薬を処方(急性期症状への治療)」の是非について改めて検討を行うこととしたものです。

検討に当たっては次の4ケースに分けた議論が行われています。
(1)既に診断され、治療中の慢性疾患で「定期受診中」の患者に対し、新たに別の症状についての診療・処方を行う場合
(2)過去に受診履歴のある患者に対し、新たに生じた症状についての診療・処方を行う場合
(3)過去に受診履歴のない患者に対して診療を行う場合(まったくの初診患者)
(4)過去に受診履歴のない患者に対し、かかりつけ医等からの情報提供を受けて、新たに生じた症状についての診断・処方を行う場合(▼院内感染が発生し、かかりつけ医療機関が外来診療を行えないケース▼感染者の「濃厚接触者」と判断され、医療機関外来を受診できないケース―など)

このうち(1)(2)(4)のケースについては、オンライン診療を行う医療機関が当該患者の情報を一定程度把握できていることから、医師が「オンライン診療のリスク(上述)とベネフィット(新型コロナ感染リスク低減など)とを比較考量」して、あくまで例外的・臨時特例的に「初診時からオンライン診療を行う」ことが概ね認められました。

もっとも、すべての急性期症状について初診時からのオンライン診療が認められるわけではありません。例えば、「非常に激しい頭痛」(脳卒中の恐れ)や「締め付けられるような激しい胸の痛み」(急性心筋梗塞の恐れ)、「大量出血」などの場合には、当然のことならがオンライン診療を行っている場合ではなく(予約してオンライン診療を待っていたのでは命に危険がある)、救急搬送要請などを行うことが求められます。

厚労省では「初診時からのオンライン診療が不適切な場合」をリストアップし、国民・患者・医療機関等に広く周知する考えを示しています。

初診時からのオンライン診療が認められるのは、例えば「咳や発熱があるが、新型コロナウイルス感染なのか、ただの風邪なのかを一定程度判断する」(医師が問診等で帰国者・接触者外来受診の必要性を判断することになると考えられる)、「『腹痛や頭痛があるが、新型コロナウイルス感染の恐れがあるので、医療機関を受診したくない』と考える患者に対し、診断を行い、必要な医薬品等の処方を行う」などのケースが想定されます。

なお、高齢者や障害者などではスマートフォンやタブレット端末の操作が苦手な人も少なくありません。島田構成員らは「誰でも使える『電話』の活用が重要になる」と指摘しています。もっとも、その際には「患者から電話がかかってきた場合でも、医療機関から電話し直し本人確認を行う」などの対応が重要となることも確認されました。

まったくの初診患者へのオンライン診療、外来医療が極めて危機的な地域出のみ可能

一方、(3)の「過去に受診履歴のない患者に対する、初診時からのオンライン診療」には医療提供サイドから「極めて危険である」との反対意見が相次ぎました。

例えば島田潔構成員(板橋区役所前診療所院長)や今村聡構成員(日本医師会副会長)は、「まったくの初診患者では、隠れている疾患が見えず、重症化徴候を見逃す可能性もある。これらを患者に自己責任とすることは医療ではない。明確に反対する」とコメント。

また患者代表とも言える山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)も「まったくの初診患者ではオンライン受診勧奨にとどめるべきである」との考えを明確に示しています。

しかし、金丸恭文構成員(フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長グループCEO)や落合孝文構成員(日本医療ベンチャー協会理事)から「緊急時であり、医師の判断でなしうる限りのオンラインによる診療完結(初診から投薬まで)を認めるべきである」「戦時とも言える状況であり、医師をはじめとする医療従事者、患者の双方を守るために、オンライン診療を拡大すべきである」「外来受診が難しくなる中で、『まったく医療機関にかかれない』よりは、オンライン診療でも良いので、医師の診療を受けられる道を用意すべきである」との考えを示しています。

こうした状況を踏まえて山本隆一座長(医療情報システム開発センター理事長)は「(3)のケースについては、地域等を厳格に規定して実施を認めることとしてはどうか」とまとめました。「オンライン診療のリスク」と「外来受診が全く受けられなくなった場合のリスク」を考慮し、例えば「外来医療が極めて危機的な状況になった地域」で臨時的・特例的に、まったくの初診患者についてもオンライン診療を例外的に認めるという方向です。

「外来医療が極めて危機的な状況になった地域」については、厚労省が今後、具体的に詰めていきます。医療提供体制の責任は都道府県が負うことから、例えば「厚労省が一定の目安を示し、都道府県がその目安を踏まえて『自地域では、外来医療が極めて危機的な状況にある。まったくの初診患者であってもオンライン診療を実施してよい』と判断する」ことなども考えられそうです。しかし、島田構成員・今村構成員等が指摘するように、まったくの初診患者へのオンライン診療には極めて大きなリスクがあることから、「都道府県に判断を委ね、そこまでの責任を負わせもよいものか」との懸念もあります。どのような地域で「まったくの初診患者へのオンライン診療を認める」のか、今後の動きを注視する必要があります。



なお、留意すべきは(1)-(4)のすべてにおいて「初診時からのオンライン診療を全面解禁したわけではない」という点です。あくまで臨時・特例的に認められるもので、新型コロナウイルス感染症が収束した折には、これらの特例は廃止されます。オンライン診療には上記のような大きなリスクがあるため、拙速な拡大は許されず、「リスクとベネフィットを比較考量しながら、段階的に拡大を検討していく」ことが重要です。

軽症の自宅療養患者等へのオンライン診療によるフォローアップ、より柔軟に実施可能

このほか、4月2日の検討会では、次のような点も概ね固められています。

▽オンライン診療や電話による診療・受診勧奨の有効性を国民・医療機関に広く呼び掛けるとともに、対応可能な医療機関の情報を収集し、活用を促す。さらに、セキュリティを確保したうえで、ビデオ画像通信などの汎用ソフトを活用することでオンライン診療が実施可能なことなども周知する(専用のオンライン診療アプリなどを必ずしも使う必要はない)

▽無症状や軽症の新型コロナウイルス感染患者が自宅療養する場合に、オンライン診療でフォローアップ(指導管理の実施や重症化のチェックなど)を行うことが可能だが(関連記事はこちらこちら)、「当該患者の診断を行った医師から情報提供を受けていれば、広くオンライン診療を実施してよい」と幅を広げる(なお、厚労省は「当該患者を診断した医師と同じ2次医療圏内における医療機関に所属する医師がオンライン診療を行うべき」との考えを示しましたが、加藤参考人らは「同じ県の医療機関」程度に広げてはどうかと提案しており、医療機関の地理的範囲についてさらに検討する)

▽新型コロナウイルス感染者(重症者)の入院管理において、例えば専門医療機関が主治医と連携してオンライン診療(主には呼吸器管理等を想定)を行うことを可能とする

中央ICUが集中治療に関する指導をオンラインで実施することを可能に(オンライン診療指針見直し検討会4 200402)



▽インフルエンザ疑い患者に「検査キットを送付し、オンラインでの医師の指導の下に患者自身や家族が検査を行う」ことについては認めない(検査精度を確保できず、医療安全上の問題も大きい。また検査キット送付には時間がかかり、早期対応が困難である)。ただし、新型コロナウイルス感染を恐れてインフルエンザ診断が滞っている状況に鑑み、診断アルゴリズム(例えば「高熱が続き、関節痛がある場合には、臨時特例的にインフルエンザ治療薬の処方を認める」など)を確立していく



厚労省は、こうした方針について規制改革推進会議サイドに報告。そこでの意見を踏まえて、「オンライン診療の臨時・特例的なさらなる拡大」に関する法令の整備(通知や事務連絡など)を早急に進める考えです。



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