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GemMed塾 看護モニタリング

新型コロナ状況を踏まえ、電話・オンライン診療の臨時特例措置を当面「継続」―オンライン診療指針見直し検討会(2)

2020.11.4.(水)

新型コロナウイルス感染症に係る「電話・情報通信機器を用いた診療」の臨時特例措置を、当面「継続」する―。

11月2日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)では、こういった点も了承されています。

11月2日に開催された「第11回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

不適切事例は一部あるが、完全初診患者へのオンライン診療等は増加していない

新型コロナウイルス感染症対策の一環として、臨時特例的に「電話や情報通信機器(ビデオ通話システムなど)を用いた診療」が大幅に拡大されています。

新型コロナウイルスへの感染を恐れ、医療機関を受診する人が大きく減少していることを踏まえて「医療へのアクセス」を最低限確保することが狙いで、政府の規制改革推進会議からの「初診患者についても医療へのアクセシビリティを確保すべき」との強い意向を踏まえ、「初診患者」、しかも「過去に一度も自院の受診歴がなく、他院からの診療情報提供もない患者」(以下、本稿では「完全初診」とする)に対する「電話・情報通信機器を用いた診療」が認められています。

もっとも初診患者へのオンライン診療には、「誤診や重症化の見落としなどのリスク」が強くつきまとうことから、初診患者への「電話・情報通信機器を用いた診療」については、次のような留意点が厚生労働省から示されています。

▼初診から電話や情報通信機器を用いて診療を行うことが適していない症状や疾病等、生ずるおそれのある不利益、急病急変時の対応方針等について、医師から患者に対して十分な情報を提供し、説明した上で、その説明内容について診療録に記載すること

▼医師が地域における医療機関の連携の下で実効あるフォローアップを可能とするため、対面による診療が必要と判断される場合は、「電話や情報通信機器を用いた診療を実施した医療機関において速やかに対面による診療に移行」する、それが困難な場合は、「あらかじめ承諾を得た他の医療機関に速やかに紹介」する



さらに、完全初診患者では「誤診や重症化の見落としなどのリスク」が極めて強くなることから、次のような制限がかけられています。

(1)「麻薬」「向精神薬」の処方はできない
(2)「特に安全管理が必要な医薬品」(【薬剤管理指導料】の「1」の対象となる抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤等のハイリスク医薬品)の処方はできない
(3)処方日数は7日間を上限とする
(4)「完全初診患者に対する電話・情報通信機器を用いた診療」は、過去の受診歴とならない(「完全初診患者に対する電話・情報通信機器を用いた診療」を終えた後に、当該患者が再度、電話・情報通信機器を用いた診療を受けたとしても、(1)-(3)の縛りが継続する)



あわせて厚労省は、こうした電話・情報通信機器等を用いた臨時特例的な診療について、全症例を報告することを義務付け。その報告内容を集計・分析し、「原則として3か月ごとに検証する」こととしています。今般、7-9月分の診療状況が検討会に報告されました。実施件数は前3か月(4-6月)と同程度で、また前3か月(4-6月)と同様に、▼不適切な事例が散見される▼発熱患者等への「対面診療の受診勧奨」はごく一部にとどまっている―などの状況が分かりました。

▽全医療機関に占める「電話・オンライン診療の実施体制がある医療機関」の割合は15.0%(10月末時点)、「初診から電話・オンライン診療を実施できる医療機関」の割合は6.3%(同)で、6月末から大きな増減はない

電話・オンライン診療を実施する医療機関は目立った増加を示していない(オンライン診療指針見直し検討会(2)1 201102)



▽全医療機関に占める「初診から電話・オンライン診療を実施した医療機関」の割合は0.66%(9月)、「完全初診患者に電話・オンライン診療を実施した医療機関」の割合は0.36%(同)で、5月・6月から大きな変化はない

完全初診患者への電話・オンライン診療は増加していない(オンライン診療指針見直し検討会(2)2 201102)



▽「電話・オンライン診療」に占める電話診療の割合は、▼4月:56.9%▼5月:56.0%▼6月:61.4%▼7月:73.3%▼8月:64.6%▼9月:72.9%―で増加しているように見える

▽年齢階級別の患者構成を見ると、電話診療・オンライン診療ともに「0-10歳」が3分の1を締め、50歳以下が9割弱を占める(高齢者は少ない)

▽主な疾患は、0-14歳では「上気道炎」と「気管支炎」が半数近くを占め、15歳を過ぎるとバラエティに富むが「発熱」が2割程度で最多となる

▽完全初診の割合は、0-14歳では20%、65歳以上では32%にとどまるが、15-64歳では51%となる

▽禁止されている麻薬・向精神薬の処方が一部にある

麻薬を完全初診患者に処方するケースもある(オンライン診療指針見直し検討会(2)3 201102)



▽禁止されているハイリスク薬の処方が一部にある

ハイリスク薬を完全初診患者に処方するケースもある(オンライン診療指針見直し検討会(2)4 201102)



▽遠隔地に生活拠点がある患者への電話・オンライン診療が一部行われている(東京都の医療機関が、北海道や福岡県の患者を診療するなど)

▽電話で「蕁麻疹」などの診療を行っているケースが一部にある

電話診療で蕁麻疹などを診療するケースも一部にある(オンライン診療指針見直し検討会(2)5 201102)



▽対面診療の受診勧奨は一部にとどまっている(例えば「発熱」患者など背後に重篤な疾患が隠れている可能性のある場合でも、電話・オンライン診療だけで済ませているケースが多い)

発熱など重症疾患が背後に隠れている可能性のあるケースでも、対面診療の受診勧奨は一部にとどまっている(オンライン診療指針見直し検討会(2)6 201102)



麻薬や向精神薬などを電話・オンライン診療で処方した理由を見ると、「事務連絡」を認識していなかったという声のほか、患者・家族の要望でやむを得ずに処方したというものもあります。

後者からは「患者側のモラル、認識にも大きな問題がある」ことが分かりますが、これは電話・オンライン診療に限ったものではないことにも留意が必要です(救急車をタクシー代わりに使う患者等が従前から問題視されている)。

前者については、事務連絡等のさらなる周知が必要と考えられますが、どのような手法をとるのか工夫が求められます(同じ事務連絡を再度示しても効果は薄い)。また、不適切事例に対しては都道府県による指導等が行われています(関連記事はこちら)。



ところで、極めてリスクの大きな「完全初診患者への電話・オンライン診療」を実施する医療機関が増加していないことからは、医療現場がモラルのある対応を行っている状況を伺うことができます。ただし「現在は臨時特例措置のために電話・オンライン診療を実施しないが、恒久化された場合には実施する」医療機関も少なくないと考えられる点にも留意が必要でしょう。

新型コロナの状況を踏まえ、臨時特例措置の「当面、継続」を決定

各種の調査によれば、医療機関を受診する患者は徐々に増加してきていることが明らかになっていますが、検討会では▼9月以降、新型コロナウイルス感染者数は横ばいから微増傾向にある▼秋冬には季節性インフルエンザとの並走(いわゆるツインデミック)も予想される―ことなどを踏まえて、臨時特例措置を「当面、継続する」ことを決定しました。

この点、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「情報量が極めて少なく、誤診等のリスクが高い『初診患者への電話診療』は、そろそろやめるべきではない」との考えを提示。ただし落合孝文構成員(日本医療ベンチャー協会理事)は「将来的には、電話初診はやめるべき」としたものの、「現時点で電話初診をストップすれば、医療へのアクセスが閉ざされてしまう患者もいる(スマートフォンなどを扱えない高齢者も少なくない)。一定期間は継続すべき」とコメントしており、当面は「電話初診も含めて継続する」ことが決定しています。

なお、将来の「初診患者も含めたオンライン診療の恒久化」方針の中でも、「電話初診は除外する」こととなっており、今後、臨時特例措置においても「電話初診は認めない」との方向に見直される可能性もあります。



また、津川友介構成員(カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授)は「米国では4月時点では診療の7割程度がオンライン診療であったが、新型コロナウイルス感染症の影響が増した7月には2割程度に減少している。患者のオンライン診療指向は一過性のもので、患者・医師ともに対面診療を希望するようになる。日本でも、そうなる可能性があり、今後も状況を注視していく必要がある」と進言しています。



厚労省では今後も臨時特例措置の状況を把握・分析し、「臨時特例措置を延長すべきか否か」はもちろん、「オンライン診療の恒久化」に向けた検討にも活用していく考えです。

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