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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「急性期病院」機能の集約化・絞り込みは必要だが、丁寧にステップを踏んで進めなければハレーションが生じる—日病・相澤会長

2024.10.23.(水)

新たな地域医療構想・病床機能報告においては、従前からの「病棟・病床の機能」報告に加えて、「医療機関の機能」報告も求めることになる。「医療機関の機能」の1つとして、「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」(いわば急性期病院機能)があり、医療の質の維持、病院経営の維持のために、「医療提供内容の基準」や「地域ごとの病院数に関する基準」などを設定して集約化・絞り込みを図る方向性が示されている—。

患者減→病院経営の厳しさが増す中では、こうした「急性期病院機能の集約化・絞り込み」を行うことは必要である—。

しかし、急速に強引に進めればハレーションが生じる。「いつまでに、どのようなステップを踏んで医療提供体制改革を進めるのか」を丁寧に議論していくことが極めて重要となる—。

10月23日に四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成)の総合部会(幹部会議)が開かれ、終了後の記者会見で日本病院会の相澤孝夫会長がこうした考えを述べました。

10月23日の四病院団体協議会・総合部会後の記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

新地域医療構想で求められる「医療機関機能」について、さらなる整理などが必要

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が、厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)検討会で進んでいます。2025年以降、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)▼人口構造の変化は、地域によって大きく異なる—ことなどを踏まえ、「2040年頃を見据えた新たな地域医療構想」を策定し、これに基づいて医療提供体制を地域ごとに改革していくことが求められているためです。

これまでに、▼病院は、現在の地域医療構想で医療機関に求められている「病棟の機能」報告に加えて、新たに「医療機関の機能」報告も行う(関連記事はこちら)▼「医療機関の機能」として、以下の4区分とする(関連記事はこちら)—などの方向が固まってきています。
(1)高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能
(2)在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能
(3)救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能(いわば急性期病院機能)
(4)その他の機能(例えば「回復期リハビリテーションを主に提供する機能」(いわゆる回リハ病院)や「一部の診療科に特化した医療機関」(専門病院)など)

新たな地域医療構想・病床機能報告では、従前の「病棟・病床機能」に加えて「医療機関の機能」報告も求める(新地域医療構想検討会(1)1 241017)

新たに報告する「医療機関機能」について(新地域医療構想検討会(2)8 240930)



医療機関は、この4区分の中から「自院は●●機能である」「自院は●●機能と◆◆機能を併せ持つ」などと選択し、毎年度、都道府県知事に報告を行うことになります。



この医療機関機能について、厚労省は下図のようなイメージを提示しています。

地域医療構想区域について(新地域医療構想検討会(2)9 240930)

地域ごとに求められる医療機関の機能(新地域医療構想検討会 241017)



しかし、こうした医療機関機能やイメージ図に対し四病協の総合部会(4団体の会長はじめ幹部クラスの会合)では、▼(1)の「高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能」には、いわゆる2次救急病院も含まれるのであろうか。含まれるとすれば、そこでは高齢者だけでなく、若人の救急患者にも対応しており、厚労省の示す内容とマッチしないのではないか▼(3)の「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」(いわば急性期病院機能)を持つ病院とは3次救急病院のみをイメージするのか、もう少し広い救急機能を意味するのかが分かりにくい—などの異論が出ていることが、日本病院会の相澤孝夫会長から紹介されました。

四病協の総合部会では、「現在の整理、イメージ図では誤解を招きかねない。さらなる整理・修正を厚労省に求めていく」考えで一致しています。

急性期病院の集約化は必須と考えるが、強引・急激に進めればハレーションが起こる

ところで、10月17日の検討会では、上記(3)の「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」(いわば急性期病院機能)について、次のような客観的基準等を設け、その基準等をクリアした病院のみが【急性期病院】として報告可能とする、つまり「集約化・絞り込みを行う」考えが示されました。状況は地域ごとに異なるため、例えば「都市部向けの基準」「医師少数区域向けの基準」など複数の基準等が設定されることになりそうです。

▽医療の質やマンパワーの確保のため、一定の症例数集約が求められる【急性期病院】機能について、都道府県知事への報告にあたっては「一定の水準を満たす役割」(いわば基準値)を設定することが必要となる

▽その際、「絶対的な医療提供量」だけでなく、「地域でのシェア等の地域の医療需要に応じた役割」の設定も検討する

▽持続可能な医療従事者の働き方や医療の質を確保するための医師や症例等の集約化に資するよう、【急性期病院】機能について、「構想区域ごとに、どの程度の病院数を確保するか」を、アクセスの観点や構想区域の規模等も踏まえながら検討する



保険医療機関の収益の大部分は「診療報酬」収益であり、これは「患者数」に大きく依存します。しかし、多くの地域で「人口の減少」が進み、在院日数の短縮化(=延べ患入院者数の減少)が進む中では、「患者数の減少→診療収益の減少→病院経営の破綻」という事態が生じかねず、「1つ1つの医療機関で一定の患者数を確保するために、病院の集約化・重点化を行う」ことが必要との観点に基づく提案と言えます。



四病協の総合部会では、この「急性期病院機能の集約化・重点化・絞り込み」方向について、まだ具体的な議論は行われていませんが、相澤・日病会長は個人的な見解として次のような考えを明らかにしています。

▽地域によって人口構造や交通事情、医療資源などは千差万別であるため、医療機関の機能・役割分担は「地域の話し合い」の中で決めていくべきである

▽もっとも、「様々な医療機関が様々な機能を持つ」ままでは、今後、ますます患者が減少していく中で、すべての病院の経営が厳しくなっていくため、地域で医療機関の機能・役割分担を進め、どこかの病院にリソース(医療人材など)を集中させる必要がでてくる

▽しかし、この取り組みは「現在、各医療機関が保有している機能・規模の縮小」などを伴い、その実現には医療機関サイドに「相当、厳しく苦しい決意・覚悟・決断」が必要となる。そこには何らかの支援をするべきであろう

▽また、一部の病院に急性期機能を集約した場合、その急性期病院が広く救急医療提供を行うとなれば、周辺の2次救急病院などから患者がいなくなってしまいかねない(やはり経営が成り立たなくなってしまう)。そこで、集約化された急性期病院において、例えば「比較的医療資源投入量が少ないであろう軽症・中等症の患者は受けない」などの制限を検討する必要性も出てこよう

▽ただし、地域によっては、集約化された急性期病院が「軽症救急患者も含めて対応しなければならない」ケースもあり(例えば医療資源の少ない地域では、基幹的病院が軽症から重症まで広く対応しなければなららない)、どういった医療機関がどういった役割を担うかは「地域ごとの話し合い」の中で決定しなければならない

▽医療提供体制の構造改革は必須と考えるが、強引に急激に進めれば必ずハレーションが出てくる。このため、「いつまでに、どのようなステップを踏んで改革を進めるのか」を丁寧に議論することが極めて重要となる



急性期病院の集約化・絞り込みは「必要であるが、地域の実情・医療機関の状況などを見極め、丁寧に関係者の理解を得ながら段階的に進める必要がある」との考えと言え、大きく頷ける見解です。今後の検討会論議でも、極めて重要な視点となるでしょう。



なお四病協の総合部会では「薬剤師の地域偏在、医療機関(とりわけ病院)・薬局偏在について、医師偏在と同様に、一定の規制的手法も勘案しながら是正を進めていく必要がある」との点でも一致しています。





なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

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従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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