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新型コロナ対策 症例Scope

診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)

2021.8.2.(月)

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で、我が国の医療提供体制には「医療資源が散在している」などの課題があることが明確となった。診療報酬改定の側面から医療提供体制改革にアプローチするために、「医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進」というテーマがこれまで以上に非常に重要となってくる―。

医師を始めとする医療従事者の働き方改革を診療報酬で進めるために、例えば「医師をサポートする事務スタッフの配置」や「入院病棟における介護スタッフの配置」などが重要であり、これらを診療報酬で評価するべきではないか―。

7月29日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こういった議論が行われました。

なお、同日の医療保険部会では、診療報酬改定基本方針のほかにも、「医療費適正化計画の見直し(2024年4月から)」「NDBから提供する情報の拡大」「オンライン資格確認」などが議題となっており、これらは別稿で報じます。

7月29日に開催された「第144回 社会保障審議会 医療保険部会」

医療保険部会・医療部会、内閣、中医協で、診療報酬改定論議の役割分担

2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が中央社会保険医療協議会(中医協)で進んでいます。

◆急性期入院医療に関する記事はこちらこちら
◆地域包括ケア病棟に関する記事はこちら
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◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちら



ところで、かつて中医協を舞台とした「汚職事件」が生じました。その背景には、中医協の所掌範囲・権限があまりに大きくなり過ぎたことが指摘されています(「中医協委員に金品を授受し、自身に有利な改定内容を導く」など)。

そこで2006年度の診療報酬改定から、▼改定の基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率(つまり財源配分の大枠)を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中医協で改定内容を詰める―という役割分担が行われています。

この役割分担を踏まえて、今般、医療保険部会で「2022年度改定の基本方針」策定論議がスタートしたもので、近く社保審・医療部会でも議論が始まります。基本方針策定に当たっては、医療保険制度・医療提供体制の関係者が大所高所からの視点で、診療報酬を通じて「現在の医療をとりまく課題を解決し、将来、あるべき方向へ進む」方策を練っていきます。

これまでは、主に秋(改定前年の9月頃)に、厚生労働省が、現下の医療に関する基本認識や改定に向けた視点・方向性などの、いわば「素材」を示し、それを踏まえて委員間で「方針策定論議」を行ってきました。しかし、厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は「前回(2020年度)改定の基本方針策定論議を進める中で、委員から『スタートが遅いのではないか、厚労省の考えを追認する議論ではいけない』との指摘が出た。それを踏まえて、より早期に、白地の段階から委員に議論をしてもらいたい」旨の考え方から、素材のない段階でキックオフ議論が始まっています。

7月29日の医療保険部会では、例えば▼新型コロナウイルス感染症対応▼医療提供体制改革への診療報酬でのアプローチ▼医師を始めとする医療従事者の働き方改革▼後発品使用促進▼オンライン診療―などに関する意見が出されています。

コロナ感染症対策に関しては、すでに中医協において第1ラウンド論議が行われており、例えば「診療報酬臨時特例の取り扱い」「医療機関等の経営支援の側面もある【感染対策実施加算】の在り方」などが論点として浮上してきています。

この点、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「コロナ感染症と闘う医療機関に対する診療報酬臨時特例について、その効果検証などを行う」ことの重要性を強調しています。佐野委員は、例えば「重症患者を受け入れるICU等での特定入院料3倍算定」などの特例をターゲットに据えており、「医療機関経営支援等の側面も持つ【感染対策実施加算】」はターゲットに置いていないと見られます。なぜなら、同じ健保連の代表として中医協に参画する幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、【感染対策実施加算】について「10月以降の継続や恒久化は認められない」と強調しているためです。ただし、この点も今後、医療保険部会で議題に上がってきそうです。



また、コロナ感染症が猛威を振るう中で「我が国の医療提供体制の課題」が浮き彫りとなりました。具体的には、「小規模な医療機関が乱立し、医療資源が散在してしまっている」「病院の役割分担(機能分担)・連携がなされていない」「クリニックや中小病院において、かかりつけ医機能が果たされていない」ことなどです。

佐野委員もこの点を改めて指摘し、2020年度の前回改定において改定の柱の1つに据えられた「医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進」というテーマが、ますます重要性を増していると強調しています。例えば▼医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価▼外来医療の機能分化▼質の高い在宅医療・訪問看護の確保▼地域包括ケアシステムの推進のための取り組み―などが具体的方向性として挙げられ、2022年度の次期改定においても「最重要項目」の1つに据えられることでしょう。

2020年度診療報酬改定基本方針の概要(社保審・医療部会1 191209)



一方、医療提供者である松原謙二委員(日本医師会副会長)や池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「コロナ感染症に対応する中で、『医療提供体制の余力』が重要であることが再確認された。ギリギリの医療提供体制では、新興感染症などの緊急時には対応できない」と指摘しています。「一定の余力を持つことのできるような入院料の施設基準を設定する」ことなどが今後、提案されることでしょう。



医療提供体制改革は、「医師を始めとする医療従事者の働き方改革」にも大きく関連します。例えば、上記の課題の1つである「小規模な医療機関が乱立し、医療資源が散在してしまっている」状況は、「個々の医療機関に勤務する医療従事者が少なく、それぞれの医療従事者の負担を過重にしている」(スタッフ数が少なければ、例えば「勤務シフトを組みにくく、過重な労働が発生しやすい」などの弊害を生む)と指摘されます。

このため「働き方改革」においては、「地域医療構想を始めとする医療提供体制改革の実現」や「医師の地域・診療科偏在の是正」を同時に進めることが必須の要素となってくるのです。

この点に関連して、松原委員は「勤務医の業務の中で、最も負担が大きいのは『事務作業』と言える。例えば、補助スタッフ(医療クラークなど)を確保し、医師は『医師免許取得者でなければ実施できない業務』に専念することが本来の姿であり、それがなければ働き方改革は実現できない」と提案。また池端委員は「現在の入院料では医師と看護職員の配置を基準に据えているが、薬剤師や看護補助者という名の介護スタッフなども、配置基準を設定するべき時期に来ている。コロナ感染症対応の中でも『高齢の感染患者に対する介護』業務が、看護職員の大きな負担になっていた。病院において『介護スタッフの配置基準』を検討する必要がある」と強く訴えています。



他方、後発品使用促進については、一部後発メーカーの不祥事により「後発品の信頼性が低下し、また安定流通にも支障を来している」点が複数の委員から指摘されました。高齢化の進展や医療技術の高度化が進む中では「医療保険制度の持続可能性を確保するために、医療費適正化を進める必要がある」点に疑いはありません。そうした中で「後発品への信頼低下」は由々しき事態であり、一刻も早い「信頼回復」が重要となります。

関連して佐野委員は「2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、医療ニーズ・医療費の増加、現役世代負担の増加が生じる。医療保険制度の安定性・持続可能性確保の観点から、2022年度の次期改定でも、効率化・合理化の視点が極めて重要である」と指摘しています。



オンライン診療については、コロナ感染症下で「最低限の医療アクセスを確保する」ために臨時特例的に大幅拡大(初診からオンライン診療も可能に)され、さらに「初診からのオンライン診療の恒久化」に向けた検討も進んでいます。

この点、「オンライン診療を推進するための診療報酬設定」(例えば、オンライン診療料の引き上げなど)を求める声も少なくありませんが、松原委員・池端委員は「オンライン診療は極めて重要であるが、あくまで『対面診療の補完』である。コロナ禍でWEB会議(医療保険部会もWEB形式で開催されている)が盛んになっているが、やはり物足りない。問診だけで患者の状態を把握することはできない」点を強調し、「安易なオンライン診療の拡大」に警鐘を鳴らしています。



医療保険部会、近く議論をスタートさせる医療部会では、今後もこうした検討を進め、12月初旬から中旬にかけて「基本方針」を決定する予定です。



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