大病院の地ケアでpost acute受入特化は是正されているか、回リハ病棟で効果的リハ提供進む―入院医療分科会(3)
2021.6.17.(木)
地域包括ケア病棟について、2020年度の前回診療報酬改定では「自院の急性期病棟からの転棟患者(post acute)受け入れ」特化を是正するための措置が導入されたが、その効果が現れてきているようにも見える―。
回復期リハビリ病棟では、リハビリテーション実績指数が2020年度改定後に向上し、質の高い効果的なリハビリ提供が進んでいると考えられる―。
地域包括ケア病棟では、新型コロナウイルス感染症の蔓延当初から、少数ではあるが「コロナ感染患者の受け入れ」を行っている。またコロナからの回復後患者については、地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟ともに一定程度行われ、今冬からより積極的に進んだと思われる―。
6月16日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で、こういった議論も行われています(急性期入院医療に関する記事はこちら、DPC特別調査に関する記事はこちら)。
目次
大病院の地ケア病棟、「自院のpost acute患者受け入れ」特化は是正されてきたか
お伝えしているとおり、6月16日の入院医療分科会では、2022年度の次期診療報酬改定(うち「入院医療改革」)に向けた議論が本格スタートし、膨大な調査結果が報告されました。本稿では「地域包括ケア病棟」「回復期リハビリテーション病棟」に焦点を合わせてみます。
まず「2020年度の前回診療報酬改定の影響・効果」に関連する部分を見てみましょう。
地域包括ケア病棟に関しては、2020年度改定で主に次のような見直しが行われました。大病院では「急性期機能への特化」を進め、中小病院では「sub acute(軽症急性期)対応や在宅医療提供機能など地域密着型機能」を推進する、という厚生労働省の意図が見えます(関連記事はこちらとこちら)。
(1)許可病床数400床以上病院の「地域包括ケア病棟」について、入院患者のうち同一医療機関内の一般病棟から転棟した患者割合を6割未満とする
(2)許可病床数400床以上病院について、地域包括ケア病棟の新設を認めない(ただし既に保有する地域包括ケア病棟は維持できる)
(3)同一医療機関内のDPC病棟から地域包括ケア病棟(ここは病棟のみ、病室は除外)に転棟した患者について、DPC点数表の入院期間IIまでDPC点数を算定する
(4)地域包括ケア病棟入院料1・3の実績に係る基準を見直す
(5)地域包括ケア病棟入院料の施設基準において「入退院支援・地域連携業務を担う部門の設置」を要件(義務化)とする
(6)地域包括ケア病棟における疾患別リハビリテーション提供について「患者の入棟時に測定したADLスコア結果等を参考にリハビリの必要性を判断すること」を要件とする
(7)地域包括ケア病棟入院料の施設基準において「適切な意思決定支援に関する指針(いわゆるACP)を定めていること」を要件とする
このうち(1)は、地域包括ケア病棟に求められる3機能(▼post acute患者受けれ▼軽症救急患者の受け入れ▼入院患者の在宅復帰促進—)の中でも「自院の急性期病棟からの患者受け入れ」に特化した病棟が一部にある(とりわけ大規模急性期病院に設けられた地域包括ケア病棟)ことを踏まえ、「3機能をバランスよく発揮してもらう」ために実施された見直しです。
この点「自院の急性期病棟(一般病棟)からの転棟患者」割合」(高いほど「自院のpost acute患者受け入れに特化している」と言える)を見ると、「低い方向にシフトしている」ように見え、「2020年度改定に一定の効果あり」と考えることができそうです。今後、入院医療分科会・中医協総会で慎重な評価を行い、「(1)の基準値を厳しくし、大病院の地域包括ケア病棟において、さらに3機能のバランス確保を目指すのか」などを検討していくことになるでしょう。なお、「自院のpost acute患者を、自院の地ケア病棟で受け入れる」ことが問題なわけではなく(それは3機能の1つとして正面から認められている)、「自院のpost acute患者受け入れ」のみに特化するあまり、「在宅療養患者が急変した場合の受け入れ」などがあまりに疎かになってしまっている、という点が問題視されている点に留意しなければなりません。
また、(4)は、「許可病床数200床未満の病院における地域包括ケア病棟」のうち、sub acute対応機能や在宅医療提供機能を強化している病棟について、より実態にあった基準値を設けたものです。許可病床数200床未満病院に設置された地域包括ケア病棟には、「軽症救急患者の受け入れ」や「在宅医療提供」などの、いわゆる「地域密着型病院」としての機能強化を期待し、2018年度改定で「評価指標の設定」とともに、「報酬の引き上げ」が行われました。ただし、評価指標の中には「クリアが容易なもの」と「クリアが非常に困難なもの」とが混在したために、偏り(ある指標は多くの病院がクリアしているが、別の指標はほとんどの病院がクリアできない)があったことから、2020年度改定で基準値の見直しなどが行われたのです。
この点、改定後(2020年11月)の指標クリア状況を見ると、2020年度改定前に比べて「平準化されている」ように見えます。今後、各指標のクリア状況を精査し、「基準値の見直し」がさらに必要かなどを検討していくことになるでしょう。
回リハ病棟のリハビリ実績指数は向上、「心大血管リハ」の実施促進求める声も
回復期リハビリ病棟に関しては、2020年度の前回改定で、次のような見直しが行われました。より効果的かつ、質の高いリハビリ提供を目指すものと言えます(関連記事はこちら)。
(1)入院料1・入院料3におけるリハビリテーション実績指数の基準値を引き上げる
(2)リハビリテーション実績指数のベースとなるFIMについて、入院時・目標・退院時のそれぞれで「リハビリテーション実施計画書」を用いて説明し、計画書を交付する
(3)重症者の定義として、日常生活機能評価に代えてFIM総得点を用いてもよいこととする
(4)入院料1では常勤の管理栄養士1名を専任配置とし、入院料2-6では常勤の管理栄養士1名の配置が「望ましい」との施設基準を追加する
この点、2020年度改定前後(2019年10月→2020年10月)における、リハビリ実績指数を見ると、いずれの入院料取得病棟においても「向上している」ことが確認できます。各病院ともに改定の趣旨に添い、より効果的かつ質の高いリハビリ提供に取り組んでいることが分かります。
ただし、疾患別リハビリテーション料の届け出状況を見ると、▼脳血管疾患リハビリ料▼廃用症候群リハビリ料▼運動器リハビリ料—はほとんどの病棟で届け出がなされているものの、「呼吸器リハビリ料は半数程度の届け出」にとどまり、「心大血管疾患リハビリ料の届け出は一部」にとどまっていることが確認されました。
田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)は「心疾患が増加し、医学・医療の進展で予後が良好になってきたことを受け、心大血管疾患リハビリのニーズが高まってきている」ことを指摘。回復期リハビリ病棟における「心大血管疾患リハビリの推進」にも期待が集まります。
地ケア病棟などでも、2020年4月から、少数だが「コロナ患者の受け入れ」を実施
次に、地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟における「新型コロナウイルス感染症への対応」状況を見てみましょう。
まず「コロナ感染患者の受け入れ」については、地域包括ケア病棟では10%弱程度、回復期リハビリ病棟ではごくわずかとなっています。回復期リハビリ病棟では、そもそも「急性期患者の受け入れ」が想定されていないことから、この数字に疑問が生じません。また、この中には「他傷病で入院中に、院内でコロナ感染した患者を、当該病棟で継続入院させた」事例も含まれているものの、「感染症が我が国で蔓延した当初から、未知の感染症への対応が一定程度行われていた」ことは、高い評価に値すると見ることができそうです。
次に、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟に強く求められている「新型コロナウイルス感染症から回復期した患者」の受け入れ状況を見ると、地域包括ケア病棟では30-50%程度、回復期リハビリ病棟では10-80%程度となっており、「新型コロナウイルス感染症が蔓延しだした当初(2020年4月)から、第3波到来前(2020年10月)まで、大きな動きはない」ことも確認できました。
昨年(2020年)末から今年(2021年)初めにかけての「第3波」、その後の「第4波」では、「医療提供体制の逼迫」が各地域で生じ、「新型コロナウイルス感染症受け入れ病棟の回転を上げ、新規患者受け入れを促進するために、回復後患者の受け入れに関するインセンティブ付与」(例えば【二類感染症患者入院診療加算】の3倍(750点)の算定や、【救急医療管理加算1】(950点)の90日間算定など)が行われており、今回の調査結果の後に「より多くの地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟で、回復患者の受け入れが進んだ」ものと見られます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
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