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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

後発医薬品の信頼回復が急務、「後発品業界の再編」検討する時期―中医協総会(1)

2021.3.24.(水)

後発医薬品メーカーの不祥事が続き、後発医薬品への信頼が失われてきている。今後、信頼回復に向けた取り組みを強力に進める必要がある―。

3月24日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論が行われました。

関連して厚生労働省医政局経済課の林俊宏課長は、「量」(安定供給)と「質」(品質管理)の両方を確保できるメーカーのみが医薬品提供をすべきであるとし、「後発品業界の再編を検討する時期に来ている」との考えも示しています。

従前から「後発品メーカー、後発品銘柄が多すぎる」との指摘も

医療技術の高度化(例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)といった超高額薬剤の保険適用など)が進み、医療費の増加を招いています。

また少子・高齢化もとどまるところを知りません。2022年度からは、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となるため、今後、急速に医療ニーズが増大し、当然「医療費の増加」も生じると考えられます。

一方、2025年度から2040年度にかけては、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。増加する医療費を、少なくなる支え手(主に現役世代)で賄わなければならないため、今後、我が国の医療保険財政は厳しさを増していきます。

そうした中では、医療保険制度の持続可能性を高めるために「医療費の伸びを、我々国民が負担可能な水準に抑える」(医療費適正化)方策がますます重要となり、その1つに「後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮」があげられます。

主に中小企業の会社員とその家族が加入する「協会けんぽ」に関しては、昨年(2020年)11月に、ついに調剤・医科・DPC・歯科の全体で「後発品の使用割合が80%に到達した」ことが分かっています。



しかし、後発品をめぐっては「後発品メーカーの不祥事」が続き、その信頼が揺らいでいます。小林化工社(福井県)では、白癬等治療薬(イトラコナゾール錠50「MEEK」)について多量の睡眠薬成分が検出され、因果関係こそ不明なものの「2名の死亡事例」が生じました。「承認と異なる製造手法」「管理者の監督不十分」などが背景にあり、業務停止命令が下されています。また日医工(富山県)でも、「承認と異なる製造手法」「管理者の監督不十分」などが発覚し、業務停止命令処分を受けています。



こうした事態について中医協では、支払側・診療側双方の委員から「後発品への信頼を損ねる由々しき問題である。信頼回復に向けた取り組みが必要である」との意見が相次ぎました。

診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「薬局の薬剤師に対し『もう後発品は使いたくない』との声も届いている。後発品だけでなく、後発品を奨めてきた薬剤師の信頼も揺らいでいる」と、「すでに信頼失墜事象が出ている」こと、さらに「それは後発品にとどまらない」ことを紹介。また、信頼回復に向けた努力とあわせて、安定供給に向けた「流通改善」が大きな課題であることを指摘しました。

同じく診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「恥ずべき事態である。『安かろう、悪かろう』という評判を業界自ら作り上げてしまっている」と批判し、是正を強く要望。島弘志委員(日本病院会副会長)や池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)も「信頼回復に向けて早急に取り組むべき」と強く求めています。

また、今村聡委員(日本医師会副会長)は「今後も同様の事態が繰り返されるのではないか、と懸念している。後発品の在り方について、抜本的な取り組みが必要である」と、城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「国は様々な方策を考えているが、さらに『後発品の再評価』なども検討する必要があるのではないか」と提案しています。



一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も「使用割合が8割まで来ているが、後発品の信頼感が一気に崩れ去ることを懸念している。健保組合の中でも『後発品は品質に問題があるのでは』という声が出てきており、早急な信頼回復に向けた対応が求められる」とコメント。同じく支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も「患者・国民の信頼が最も重要である。『高いが、安全である』として患者・国民が新薬を選択するようになれば、国として大きな損失である。政府を挙げて信頼回復に取り組んでほしい」と要望しています。



こうした指摘を受けて、林経済課長も、「これまで長い期間をかけて、組織的に後発品の使用促進に取り組んできたが、そこに『水を差すもの』として懸念している。残念である」と心情を吐露。信頼回復に向けて▼無通告立ち入り検査の増加▼国による立ち入り検査(通常は都道府県が立ち入り検査を行う)▼業界への指導―などを強化している点を紹介するとともに、「従前から後発品メーカー、後発品銘柄が多すぎると指摘されている。後発品のシェアが医薬品全体の8割を占める時代では、『量』から『質』への転換が求められている。『業界再編』を考えるべき時期に来ている。『量』(つまり安定供給)と『質』(つまり品質確保)との両方を確保できるメーカーのみが医薬品を提供すべきである」との考えを示しました。

林経済課長は「現在、新たな『新医薬品産業ビジョン』の策定に向けた議論が進んでおり、そこでは、こうした点も重要論点になる」と見通しており、今後、急速に「後発品メーカーの再編統合」論議が進むことになると考えられます。



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