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0617ミニセミナーGemMed塾

「ケアプランの医療的部分を病院の他職種チームが作成」することでケアマネの負担軽減と、ケアプランの質向上を実現せよ—日慢協・橋本会長

2025.4.25.(金)

介護保険の要となるケアマネジャー(介護支援専門員)は極めて多忙であり、また医療的知識を身につける余裕もない。そうした中でケアマネの負担を少しでも軽減し、また医療的側面にも配慮したケアプラン作成・介護サービス提供を実現するために、「病院の多職種チーム(医師、看護師、栄養士、薬剤師、リハビリスタッフなど)がケアプランの言わば『医療部分』を作成し、ケアマネに提供する」仕組みを構築してはどうか。これによりケアマネ業務負担の軽減と、より質の高いケアプラン作成・介護サービス提供が実現できる—。

病院では、すで患者の退院に当たって、地域のかかりつけ医療機関や在宅対応する医療機関などに宛てて「退院時サマリ→診療情報提供書」を作成しており、「ケアプランの医療部分作成→ケアマネへの情報提供」が新たな過重な負担にはならないと考えられる—。

このようにケアマネの業務負担を少しでも軽減するとともに、介護保険サービスの司令塔と言えるケアマネの処遇改善を十分に行う必要がある—。

日本慢性期医療協会が4月24日に定例記者会見を開き、橋本康子会長がこうした提言を行いました。

4月24日の定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の橋本康子会長

ケアマネの「業務負担軽減」と「処遇改善」の2つが急務

2025年度に入り、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて、今年度中に75歳以上の後期高齢者に達します。2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

そうした中、要介護高齢者のケアプランを作成し、給付管理を行う「ケアマネジャー」については、▼業務範囲が非常に広範にわたり(法定業務外の業務を利用者・家族から求められることも少なくない)、多忙を極めている▼人材が不足している(高齢化が進み、また成り手の確保にも苦労している)▼各種研修などの負担も極めて重くなっている—などの課題が指摘されています(関連記事はこちら)。

また、ケアマネが作成するケアプランについても、「医療的側面が弱い」「予後予測が十分になされていない」という問題点が指摘されています。例えば「今はきざみ食などの介護食しか食べることができないが、リハビリを続ければ普通食を食べられるようになる(あるいはならない、悪化する)」、「今は自立歩行はできないが、リハビリを継続することで、自立歩行しトイレに行くことができるようになる(あるいはならない、悪化する)」、「疾患を抱えているが、こうした治療を行うことで改善する(あるいはならない、悪化する)などの医療的視点に立った予後予測を行うことで、より利用者の自立支援・重度化防止に資するケアプランが立てられます。

日慢協ではこの点を従前から意識し、「医療的知識を備えたケアマネジャー」(メディカルケアマネジャー)の育成に向けた研修事業を行ってきています。

しかし、上述のようにケアマネは「極めて多忙である」こと、ケアマネ人材が「不足し、さらに減少してきている」こと、また「要介護高齢者の医療ニーズが複雑化し、重度化してきている」ことなどを踏まえれば、こうした取り組みには限界もあります。

そこで橋本会長は、メディカルケアマネの育成を継続したうえで、新たに「病院の多職種チーム(医師、看護師、栄養士、薬剤師、リハビリスタッフなど)がケアプランの言わば『医療部分』を作成し、ケアマネに提供する」仕組みを構築してはどうか、との提言を行いました(メディカルケアプランナー構想)。

日慢協の橋本会長がメディカルケアプランナー構想を提言



ケアプランの医療部分」を病院の医療専門職が作成することで、▼ケアマネの業務負担が軽減する▼より質の高いケアプランの作成・サービス提供が可能になる—という大きなメリットが期待できます。現在でも、ケアマネが病院に赴き「要介護者の退院時カンファレンス」に参加することがありますが、ケアマネの手元に「ケアプランの医療部分」があれば、より積極にカンファレンスに参加し、利用者(退院患者)の状態を深く把握し、医療スタッフから得た情報をケアプラン等に活かすことが可能になります(白紙の状態でカンファレンスに参加した場合、どうしても質問などを積極的に行うことを躊躇することも少なくない)。

病院スタッフも多忙を極めていますが、橋本会長は「現在でも退院患者については、退院後にかかる地域のかかりつけ医療機関や在宅対応する医療機関などに宛てて『退院時サマリ→診療情報提供書』を作成・提供しており、『ケアプランの医療部分作成→ケアマネへの情報提供』が過重な負担にはならないと考えられる」とコメントしています。すでに行われている「医療機関間(病院⇔クリニック等)での情報提供」を「医療機関⇔ケアマネの情報提供」に拡大するイメージです。

その際、病院サイドにインセンティブがあれば情報連携がより積極的かつ円滑に進むと考えられ、「報酬上の加算」付与にも橋本会長は期待を寄せいています。

ただし橋本会長は「介護保険の司令塔であるケアマネについて、処遇改善に係る加算の対象外となっている。こうした事態を改善するために『ケアマネの処遇改善』が最優先である」との考えも強調しています。

ケアマネが処遇改善に係る加算から除外されている結果、「上位職とも言えるケアマネの給与」<「介護福祉士の給与」という事態も生じており(関連記事はこちら)、これが「ケアマネの成り手不足」「離職」にもつながり、結果「ケアマネ不足→要介護高齢者の増加→個々のケアマネの負担増」を招いています。このように「処遇が低く、負担が重い」ために、さらにケアマネ不足に拍車がかかり、現在のケアマネの負担がより重くなるという負のスパイラルに陥ってしまっています。

このスパイラルを断ち切るためには、ケアマネについて「業務負担の軽減」と「処遇改善」が不可欠であり、橋本会長はこの2点に深く関係する提言を行っていると言えます。

さらに、メディカルケアプランナー構想によって、「より質の高いケアプラン作成」→「より質の高い介護サービス提供」が実現されれば、「寝たきり状態に陥る高齢者の増加防止、減少」も期待されます。結果、「高齢者のQOL向上」「医療・介護提供体制の崩壊防止」「医療保険・介護保険制度の持続可能性確保」にもつながります(関連記事はこちら)。

今後の診療報酬改定・介護報酬改定論議の中で、こうしたテーマの検討が進むことにも期待が集まります。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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