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GemMed塾0319ミニセミナー

スタッフが育児休業等を取得した際にも人員基準をクリアできるよう、「代替人員」雇用の助成金対象医療法人拡大を—日慢協・橋本会長

2025.3.18.(火)

少子化対策・働きやすい職場環境の確保に向けて「育児休業などをより取得しやすくなる」仕組みが本年(2025年)4月からスターとする—。

この点、スタッフが育児休業等を取得した場合でも人員基準をクリアできるよう、平時から「基準を超える人員配置」をしておくことが重要である。このため「代替人員」雇用の助成金について、対象医療法人を拡大すべきである。これによって「より育児休業などを取得しやすい、働きややすい職場」が実現し、少子化対策にも資すると考えられる—。

日本慢性期医療協会が3月13日に定例記者会見を開き、橋本康子会長がこうした提言を行いました。

3月13日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の橋本康子会長

医療・介護スタッフが育児休業・介護休業を取得しやすくなるよう、代替要員確保進めよ

間もなく2025年度に入り、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達するため、今後、急速に医療・介護ニーズの増加・複雑化が生じると予想されます。

2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

そこでは、人材不足を補うためにICTやロボット等の活用による生産性向上も極めて重要ですが、医療・介護分野では、どうしても「人の手」が必要となります。



「人の手」を確保するためには、給与増とならんで「働きやすい環境」の整備が重要です。政府は、後者の「働きやすい環境」確保、さらに少子化対策の一環として「育児・介護休業法」を改正し、育児休職中の給与保障を拡充することによって、「より育児休業を取得しやすい」環境の整備を図ります(2025年4月スタート、厚生労働省サイトはこちら)。)。

育児支援制度の拡充(日慢協会見1 250313)

育児開業給付の拡大(日慢協会見2 250313)



ただし、この「育児休業を取得しやすい」環境の整備によって、医療・介護現場では「人手不足」に拍車がかかる可能性もあります。

保険医療・介護制度では、診療報酬・介護報酬を取得するために「人員基準」を遵守しなければなりません(患者●人に対し1人以上の看護師配置など)。このため「同じ量の医療・介護サービス提供」を行うためには、「育児休業を取得した分の人手」を何らかの手立てで確保しなければならないのです。

この点について橋本会長は、例えば次のような手段が考えられることを紹介します。
(1)代替⼈員雇⽤:平時から「患者●人に対し1人以上の看護師配置」という基準を超えて看護師等を配置し、育児休業等の取得者が出ても人員配置基準を割らないようにしておく

(2)プール制の導⼊:育児休業等の取得者が現われた場合に、ヘルプで入れる看護師等を確保・プールしておく

(3)リモートケア:育児休業等の期間中にWEBでの指示等を行う

育休・介護休拡大による課題への対応イメージ(日慢協会見4 250313)



しかし、▼病院経営が極めて厳しい中で、人件費のさらなる高騰につながる「(1)の代替人員雇用」や「(2)のプール制」は難しい▼(3)が常態化すれば「休業」にならない—などの大きな問題点があります。

代替人員等確保ができなければ「人員基準等を満たせず収益が下がってしまう」「「現場で働くスタッフの負担が大きくなり、疲弊→離職へとつながってしまう」という事態が生じ、医療機関や介護事業所等の経営維持が困難になってしまうと橋本会長は指摘。

この点、残った職員への⼿当⽀給や代替⼈員雇⽤などへの助成を行う「両⽴⽀援等助成⾦」も準備されています(厚労省サイトはこちら)。

ただし、この助成金の対象となる医療法人は「常時使用する労働者が100人以下」(▼持分なし法人では「常時使用する労働者が100人以下」▼持分あり法人では「出資総額5000万円以下、かつ常時使用する労働者が100人以下」—)に限られます。大半の病院では労働者が100人超であるため「助成金を活用できる病院は3割程度にとどまるのが実際である」と橋本会長は指摘します。

両立支援等助成金の対象医療法人は限定的である(日慢協会見3 250313)



そこで、上記の問題点・課題を解決するために、「両⽴⽀援等助成⾦」の支給対象を「大幅に拡大する」ことが必要であると橋本会長は訴えています。

助成対象の拡大によって、「病院等が代替人員を確保しやすくなる」→「育児休業・介護休業などを取得しやすくなる」→「より働きやすい環境が確保される」→「医療人材をより雇用しやすくなる」→「さらに育児休業・介護休業が取得しやすくなる」・・・という好循環も期待できそうです。このため橋本会長は「産休/育休/有給などの取得率向上」や「職員退職率の低減」をアウトカム指標に据えて、助成対象の拡大による効果測定をすることも重要とコメントしています。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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