入院からのより円滑な在宅復帰を目指し、【院外リハビリ】の算定可能時間延長・実施目的拡大を図るべき—日慢協・橋本会長
2024.12.17.(火)
2016年度診療報酬改定で認められた【院外リハビリテーション】であるが、算定可能時間が短く(現在は3単位、60分まで)、実施目的も限定されているため、利用状況は芳しくない—。
新たな地域医療構想では「リハビリの推進」方向が目指されていることなども踏まえ、入院から「自宅復帰後の生活」により円滑に移行できるよう、【院外リハビリ】における算定可能時間の延長・実施目的の拡大、さらに将来的には「包括評価による柔軟実施」を可能とするべきである—。
日本慢性期医療協会が12月12日に定例記者会見を開き、橋本康子会長がこうした提言を行いました。
より柔軟に院外リハビリを実施できるよう、将来的に「包括評価」も検討を
Gem Medでも報じているとおり、厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で「新たな地域医療構想」の制度設計に関する意見がまとめられました(関連記事はこちらとこちら)。今後、社会保障審議会・医療部会での了承を経て、年明け(2025年)の通常国会への医療法改正案提出へと進んでいきます(改正法成立後にガイドラインを国で作成(2025年度)→都道府県でガイドラインに沿って新地域医療構想を作成(2026年度)→2027年度から新地域医療構想が稼働)。
「新たな地域医療構想」では、▼入院医療のみならず「外来医療」「在宅医療」「医療・介護連携」なども盛り込んだ医療提供体制の総合的な方針とする▼地域医療構想を医療計画の上位計画に位置付ける▼新たに「医療機関」機能の報告も義務付け、「急性期拠点」機能の集約化・絞り込みを進める—などの点が注目されています。
さらに、今後「85歳以上高齢者の割合」が高まり、急性期治療だけでなく「リハビリテーション」などの在宅復帰に向けた取り組みがさらに重要になる点を踏まえて、「必要に応じて専門病院等と協力・連携するとともに、高齢者の抱える背景事情も踏まえた退院調整等による早期退院、他施設とも連携しながら通所や訪問でのリハビリを継続できるような体制の確保」を行うよう提言しています。
この点、2016年度の診療報酬改定では、社会復帰等を指向したリハビリ実施を促すために「IADL(手段的日常生活活動)や社会生活における活動の能力獲得のために、実際の状況における訓練を行うことが必要な場合に限り、医療機関『外』におけるリハビリを1日3単位まで疾患別リハビリの対象に含める」との見直しがすでに行われています【院外リハビリ】。
ただし、橋本会長は上記診療報酬上の【院外リハビリ】対応には次のような問題点があり、新たな地域医療構想で目指す「リハビリ」体制をしっかりと行える環境にはないと指摘します。
(1)1日3単位(=60分)では必要なリハビリを行えない
(2)▼移動手段の獲得▼復職への準備▼家事能力の獲得—の3つの目的に実施する場合に限られており、他の目的でのリハビリ実施が評価されない
まず(1)は、たとえば「復職への準備」に向けて「自宅→公共交通機関の利用→職場→公共交通機関の利用→自宅(帰宅)」という一連のリハビリを行うためにはどうしても数時間程度が必要となるところ、「診療報酬で評価されるのは1時間分」に過ぎないために、「医療機関ではこうした【院外リハビリ】に積極的になれない」(収益獲得のためには、セラピストに「他の診療報酬で評価されるリハビリ」実施を求めたくなる)という問題が生じています。
また(2)では、上記3目的以外にも「復学の準備」や「⾃宅内でのADL動作獲得」などのために【院外リハビリ】が有用ですが、目的外であるため「実施しても診療報酬は算定できない」ことになります。
こうした問題があるため、日本作業療法士協会の調べによれば【院外リハビリ】を実施する医療機関は40%にとどまっており、橋本会長は「少ない」と評価。
さらに、新たな地域医療構想で目指すリハビリ環境を整えるためには、「【院外リハビリ】の問題点を解消し、各医療機関がより積極的に【院外リハビリ】を展開する」ことが重要であるとし、次のような見直しを行ってはどうかと提言しています。
▽【院外リハビリ】について、疾患別リハビリテーションの算定を少なくとも「1日6-9単位」まで認める(120-180分の院外リハビリを保険診療の中で実施可能とする)
▽【院外リハビリ】の算定要件である「目的」について、現在の「移動⼿段の獲得」「復職の準備」「家事能⼒の獲得」に、「復学の準備」や「⾃宅内でのADL動作獲得」にも拡大する
また、より充実した【院外リハビリ】を患者が希望する場合(例えば趣味であるゴルフをできるようになりたいなど)には、選定療養つまり「患者の全額自己負担」による院外リハビリ実施を求めることも提案。
さらに、一歩進めて「【院外リハビリ】を包括評価する」ことも将来の検討課題になると橋本会長は指摘しています。例えば自宅復帰後の「ATMでお金を引き出す」といった行為1つをとっても、「実際に機械を操作してみると、非常に難しいことがわかった」などの事態があることから「包括評価とし、より柔軟に現場判断で【院外リハビリ】を実施できるようになると自宅復帰がより近くなる」と橋本会長は期待を寄せています。
【関連記事】
医師偏在対策を大筋で了承、「医師少数区域等で勤務する」医師の手当て増額を行う経費の一部を保険者にも拠出求める—新地域医療構想検討会
新地域医療構想の内容が大筋でまとまる!「急性期拠点病院の集約化」を診療内容・施設数の両面で進める—新地域医療構想検討会