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「リハビリの視点・知識・技術」を持った介護職員(リハビリ介護士)の養成・配置により寝たきり高齢者の増加を防止せよ—日慢協・橋本会長

2025.2.14.(金)

介護人材確保が困難となる中では、「寝たきり高齢者」の増加を防止することが必要不可欠である。このためには、「リハビリテーションの視点・知識・技術を持った介護福祉士」などを養成し、日常生活を支援する中でのリハビリ実施を進めていくことが重要である—。

日本慢性期医療協会が2月13日に定例記者会見を開き、橋本康子会長がこうした提言を行いました。

2月13日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の橋本康子会長

「リハビリの視点・知識・技術」をもって日常生活介助することで自立支援につながる

近く2025年度に入り、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達するため、今後、急速に医療・介護ニーズの増加・複雑化が生じると予想されます。

2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

このため厚生労働省は新たな検討会を設置し、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」の議論を開始。例えば「介護人材確保・定着、テクノロジー活用等による生産性向上」などを検討していきます。

また厚労省はすでに「介護ニーズに的確に応えるためには、2022年度から40年度にかけて57万人の介護人材純増が求められる」と試算していますが、少子化のスピードが想定を超えて加速する中では、「人材確保には限界がある」とも考えられます。実際に、2022年度から23年度にかけて「介護職員が初めて2万8000人・1.3%減少」していることも明らかになっています。

また、人材不足を補うためにICTやロボット等の活用による生産性向上も極めて重要となりますが、どこまで最新テクノロジーを導入したとしても、医療・介護分野では、どうしても「人の手」が必要となります。

このため日慢協ではかねてより「医療・介護人材の確保が困難になる中では、要介護状態を改善し『寝たきりになる者』を減らすことこそが極めて重要である」と指摘し、さまざまな提言を行っています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら

この点に関連し2月13日の定例記者会見では、橋本康子会長・矢野諭副会長から「リハビリの視点・知識・技術を持った介護福祉士」(リハビリ介護士)の養成が極めて重要であるとの提言が行われました。

述べるまでもなく、介護福祉士をはじめとする介護職員は、介護事業所・施設はもちろん、医療機関においても移譲・食事・排泄などの日常的な介助を行います。

しかし、例えば「背もたれを倒したまま食事をすることは誤嚥のリスクが非常に高くなってしまう」「移譲において力学的視点・知識が十分でないために、介護者の肉体的負担が大きくなる(腰痛につながる)」などの課題が指摘されています。

この点について橋本会長は「リハビリ専門職の視点・知識・儀重を介護職員に伝授する」ことにより、「安全かつ効果的・効率的な介助」が実現できると指摘します。

また、「介護職員が、患者や入所者と接する時間」はおよそ4-5時間にも及び、どの職種よりも長くなっています。この長時間の日常的な生活支援の際に「リハビリの視点・知識・技術」が加わることで、「少量・頻回のトレーニング」を実施できることになり、これは確実に自立支援につながると期待できます。橋本会長は、例えば排泄について「おむつ使用の場合には、何回、おむつ交換を行ったとしても自立支援にはつながらない。しかし、利用者自身がトイレで排泄できるように介助を適切に行えば、徐々に、かつ少人数ではあるが自立排泄に近づいていく利用者が現われる」と指摘します(すべての要介護者を自立させることは難しいが、寝たきりになる要介護者を減らしていくことが重要である)。

あわせて、病院(とりわけ回復期リハビリ病棟等)で濃厚なリハビリを行ったとしても、介護施設や自宅に移行した後には十分なリハビリが行われず、時間の経過とともに再びADL低下等が低下してしまいます。この点、介護事業所・施設の介護職員が「リハビリの視点・知識・技術」を持つことで、自宅・施設でも比較的手厚い「日常生活におけるリハビリ実施→ADL低下の防止」を実現できると期待されます。

介護職員が患者・入所者と接する時間は長い(日慢協1 250213)

リハビリ介護の潜在力(日慢協2 250213)



こうした「リハビリの視点・知識・技術」はリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)から学ぶことが最短ルートですが、橋本会長は「介護職員にリハビリの視点・知識・技術を伝授する研修会を実施する」構想にも言及しています。例えば「1泊2日で知識・技術を学び、その後、年1回程度のフォローアップ研修を受ける」ことなどが考えられ、今後、日慢協で具体的な研修プログラムを詰めていきます。

リハビリ介護士が学ぶべきプログラム例(日慢協3 250213)



さらに、こうした研修に介護職員が積極的に参加できるようになるには「診療報酬・介護報酬による手当て」が重要となります(加算等がつくことで、病院長や施設長などが安心してスタッフを研修に出すことができる)。橋本会長は「地域包括ケア推進病棟協会(仲井培雄会長)では『POC(point of care)リハビリ』(患者の傍らで、20分未満の短時間、ADL改善訓練を行うもの、POCリハビリを行わない場合に比べて、ADL改善効果が高いとの研究成果あり)を提唱している。この考え方とも調整し、リハビリ介護士の診療報酬・介護報酬上の評価を厚労省に提言していく」考えも明らかにしています。

リハビリ介護士の評価(日慢協4 250213)



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