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「要介護度の改善」をアウトカムとして評価する新たな加算を通所系・施設系の介護サービスに新設せよ—日慢協・橋本会長

2025.1.10.(金)

「要介護度の改善」をアウトカムとして評価する新たな加算を、通所系介護サービスや施設系介護サービスに新設し、要介護2・3から「寝たきりとなる要介護4・5」への悪化・重度化を防止するべきである—。

このためには、新加算の報酬を「要介護度の改善に伴う基本報酬の減少」を上回る水準に設定する必要がある—。

要介護2・3から重度化する人が現在2割弱いるが、それを半減することで1か月当たり100億円程度の介護費が削減でき、これを新加算の財源に充てることが考えられる—。

日本慢性期医療協会が1月9日に定例記者会見を開き、橋本康子会長がこうした提言を行いました。

1月9日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の橋本康子会長

「要介護度の改善に伴う基本報酬の減少」を上回る水準の新加算を設けよ

近く2025年度に入り、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達するため、今後、急速に医療・介護ニーズの増加・複雑化が生じると予想されます。

2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

このため厚生労働省は新たな検討会を設置し、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」の議論を開始。例えば「介護人材確保・定着、テクノロジー活用等による生産性向上」などを検討していきます。

この点、厚労省はすでに「介護ニーズに的確に応えるためには、2022年度から40年度にかけて57万人の介護人材純増が求められる」と試算していますが、少子化のスピードが想定を超えて加速する中では、「人材確保には限界がある」とも考えられます。実際に、2022年度から23年度にかけて「介護職員が初めて2万8000人・1.3%減少」していることも明らかになっています。

また、人材不足を補うためにICTやロボット等の活用による生産性向上も極めて重要となりますが、医療・介護分野では、どうしても「人の手」が必要となります。

このため日慢協ではかねてより「要介護状態を改善し、寝たきりになる者を減らすことこそが極めて重要である」と指摘し、さまざまな提言を行っています(関連記事はこちらこちらこちらこちら

この点に関連し1月9日の定例記者会見では「要介護度改善を評価する新加算」を介護報酬に創設すべきとの提言を行いました。

2018年度の介護報酬改定で、要介護度の維持・改善を評価する【ADL維持等加算】が新設され、2021年度・24年度改定で充実が図られてきていますが(関連記事はこちらこちらこちら)、橋本会長は(1)機能改善を目的とする訪問リハビリ・通所リハビリは加算の対象外である(2)単位数が低すぎ、ADL改善に向けたインセンティブとして弱すぎる—といった課題があると指摘します。

訪問リハ・通所リハにADL維持等加算が設けられていない背景には、「そもそもリハビリテーションは機能改善・ADLの維持向上を目的としたサービスであり、ADL維持改善に加算を設けることは重複評価になってしまう」ことがありますが、橋本会長は「機能維持・改善の強化→寝たきり防止」の取り組みを進めるために「訪問リハ・通所リハにも要介護度改善を評価する加算を積極的に導入すべきではないか」と指摘しています。

また、ADL維持等加算は「ADL利得(機能改善の度合い)が1以上であれば1か月当たり30単位、同じく3以上であれば60単位が算定」可能ですが、要介護度が改善した場合の基本報酬減を賄うことができていません。

例えば、通常規模型の通所介護(デイサービス)における7時間以上8時間未満の基本単位数を見ると、▼要介護5:1148単位▼要介護4:1023単位▼要介護3:900単位▼要介護2:777単位▼要介護1:658単位—と設定され、要介護度を1改善すると基本報酬が120単位程度減少してしまいます。

つまり、通所介護事業所で機能訓練をしっかり行い「ADLの向上→要介護度を1改善する」と、「加算で最大60単位を算定できるが、基本報酬が120単位程度下がり、結果、60単位程度の減収」になってしまうのです。

この点について橋本会長は「ADL改善は、利用者にとっても、ケアを行う医療職・介護職にとっても喜ばしいが、ケアの現場に携わらない経営者視点では別の考えが出てくることは想像に難くない」と指摘します。

こうした状況を踏まえて橋本会長は「要介護度改善を評価する新たな加算」の創設を強く提言しました。上記の弊害を考慮すれば「要介護度の改善による基本報酬の減少分」を上回る程度の単位数(上記の通所介護(デイサービス)では要介護が1改善する都度に120単位超)設定が必要になると橋本会長は指摘します。

この点、例えば東京都では「要介護度改善を評価する独自のインセンティブ」(要介護度が維持される場合には10万円、要介護が改善する場合には20万円をADL維持等加算に上乗せする)を実施しており、制度設計の参考になります。

東京都の要介護度改善に向けたインセンティブ

要介護2・3から重度化する人を半減すれば、1か月当たり100億円程度の介護費削減

ところで新加算を設けるためには「財源」が必要となりますが、橋本会長は「要介護2・3から重度化する人を半分に抑える」ことで1か月当たり、日本全国で100億円超の介護費抑制が可能であり、この抑制分を新加算に充ててはどうかと提案しています。

厚労省の「介護給付費実態統計」によれば、24年3月の介護給付費は6983億6300万円となっています。ここで「要介護2・3の状態から重度化する人(2022年度から23年度にかけて要介護2からの悪化は現在18.5%、要介護からの悪化は現在17.4%)が、現在の半分になった」(悪化する人が半分になり、残りの半分は要介護2・3を維持できた)と仮定すると、介護給付費は6878億1000万円となり、1か月当たり「105億5300万円減少する」と試算できます。あくまで機械的な試算ですが、年間1200億円超の財源を生み出せることとなり、この「介護費軽減分を上記の新加算に充当する」ことができるのではないかと橋本会長は指摘しています。

要介護度の変化状況2(介護給付費等実態統計)

訪問・通所リハ、通所介護などは「要介護度の改善を目指すサービス」

また、リハビリテーション・機能訓練は、どのような状態の要介護者でも必要かつ重要ですが、橋本会長は「要介護2・3の人を重度化させない」ところをまず重視してはどうかと指摘します。

例えば、2023年度の介護給付費実態統計を見ると、2024年3月時点で要介護5(寝たきり)の人が、1年前の2022年4月時点でどのような状態であったかをも見ると、88.4%は要介護5ですが、11.6%は「要介護4以下」、つまり「悪化した」ことが分かります。この悪化した11.6%の内訳を見ると、60.2%が要介護4(ほぼ寝たきり)ですが、32.3%が要介護3、13.9%が要介護2であり、適切なリハビリ・機能訓練で「状態の維持・改善が強く期待できる」人たちと言えます。

要介護度の変化状況1(介護給付費等実態統計)



さらに、こうした要介護2・3の人が多く利用するサービスとしては「訪問リハビリ」「有料老人ホーム」「認知症対応型通所介護(いわゆる認デイ)」「通所リハビリ」「通所介護」などです(利用者の平均要介護度が2-3程度)。

橋本会長は、こうしたサービスは、とりわけ「利用者を不健康にさせない、改善させるべき介護サービス」であると指摘。さらに、介護医療院や特別養護老人ホーム、老人保健施設など平均要介護度が高い施設でも、リハビリや機能訓練の重要性は劣らず、まず、こうした「施設系、通所系サービス」から新加算を導入してはどうかと提唱しています(次いで、これらのサービスで新加算による要介護度改善効果を検証し、訪問系サービスへの拡大を検討していくイメージ)。



なお、リハビリ・機能訓練を十分に行うために橋本会長は「リハビリ介護士」の育成も提唱しています。介護職員に適切なリハビリの知識・技術研修を行うもので、近く詳細な提言が行われます(例えば背もたれを倒したまま食事をすることは誤嚥のリスクが非常に高くなることなどを介護職員に伝え、安全かつ効果的な介助の知識・技術を伝授するイメージ)。



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