診療報酬・介護報酬プラス改定は「国民負担増」にもつながる、寝たきり防止等進め国民に喜んでもらうことが重要—日慢協・橋本会長
2024.1.12.(金)
診療報酬・介護報酬のプラス改定は「国民負担増」にもつながる。例えば寝たきり防止などを診療報酬・介護報酬改定で進めて患者のQOLを高め、「診療報酬等の改定が行われて良かった」と国民に喜んでもらうことが重要である—。
日本慢性期医療協会の橋本康子会長と池端幸彦副会長が1月11日に2024年初の定例記者会見を行い、こうした考えを強調しました。
また、能登半島地震を踏まえた対応についても報告が行われています。
慢性期医療の使命は「病気・ケガを治す」とともに「患者のQOLを高める」こと
Gem Medで報じているとおり、2024年度の次期診療報酬改定に向けて「診療報酬本体を0.88%引き上げる」「介護報酬を1.59%引き上げる」などの方針が武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣との間で決定されました。
この決定内容について橋本会長は「プラス改定は『国民負担の増加』につながる点を医療・介護者は自覚し、その責任を果たさなければならない」と強調。
具体的には「急性期医療の責務は『傷病を治す、命を救う』ところにある。慢性期医療の責務は『傷病を治す』とともに『患者のQOLを高める』ところにあると考える。患者の希望は『旅行に行きたい』『仕事に戻りたい』など様々であろうが、その基礎となるところは『自立』であり、慢性期医療では『寝たきりを減らす』ことが使命と考えられる。医療者の中には『高齢になれば寝たきりは仕方ない、要介護4・5からは回復・改善しない』と考える者もおられるが、それは誤っている。寝たきりは防止可能・改善可能であり、患者や家族にとってはもちろん、介護の人手不足解消というメリットもある」と指摘します。
橋本会長は、これまでの記者会見において、寝たきり防止・寝たきりからの回復に向けて、例えば▼介護福祉士も加えた「寝たきり防止チーム」を病院内に設置し、専門的視点でADL改善に日常的に取り組む▼ADL改善などが見込める者を抽出して集中的なリハビリを実施する▼退院・退所から3か月間「在宅生活の維持を目的とした集中型の訪問リハビリ」を可能とする▼寝たきり防止のため、急性期病棟等に「リハビリ視点での介護を行える介護福祉士」等を配置する▼リハビリ効果につながる食事提供を行う▼noreferrer”>医療において「基準介護」「基準リハビリ」を制度化する▼「総合診療医」の育成進め、高齢患者の機能が落ち切る前の全身管理・リハビリにより「寝たきり防止」を目指す—といった提言を行ってきています。これまでの2024年度診療報酬・介護報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会や社会保障審議会介護給付費分科会論議の中で、これらの提言が採用されてきていることを橋本会長や池端幸彦副会長は高く評価するとともに、「今回の改定で寝たきり防止が進み、良かった」と国民が喜んでくれるような改定内容になるとよい、と橋本会長は期待を寄せています。
さらに、これまでの改定論議を振り返り、「患者負担増ではあるが、入院時食事療養費が25年ぶりに引き上げられることは病院にとってはありがたい」「慢性期医療サイドだけでなく、急性期医療サイドからも『高齢の入院患者に対する介護・ケア』の重要性を理解・指摘する声が出てきたことは非常に大きい。2024年度診療報酬改定でも『直接ケアを行う看護補助者の評価』が検討されており、病院における介護・ケア評価の第一歩になると期待している。現場では『急性期/回復期/慢性期/介護』という垣根がとれてきている」「2024年度診療報酬改定の指揮をとる厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は、2021年度介護報酬改定の指揮もとられており(当時、厚労省老健局老人保健課長)、同時改定ならではの対応が随所にちりばめられている」「高齢の救急患者対応の議論もかなり進んできている」「介護医療院の多床室の室料負担が一部に導入されるが、今後は『病院病床の室料負担』論議が出てくることを危惧しており、これに適切に反論するための理論武装を進める必要がある」などのコメントが橋本会長・池端副会長から示されています。
また、1月1日に発生した能登半島地震について▼交通網が寸断しており、十分な支援が行われている地域が少なくない▼いわゆる「災害関連死」の多発が心配される。現状では被災地に向かうことが難しく、被災者を余力のある病院・介護施設等で受け入れているが、情報共有に問題がある(例えば施設入所の要介護高齢者を隣県の介護施設に搬送した場合などに、家族等への連絡が難しい状況などがある)—といった厳しい状況が、福井県医師会長でもある池端副会長から報告されています。
さらに橋本会長、池端副会長は、今後の災害対策に向けて▼過去の診療情報の共有がいかに重要であるかを痛感しており、医療DXをさらに進めていく必要がある▼被災時の対応マニュアルなどを整備しておく必要があり、「日慢協としての災害対応マニュアル」(被災者を受け入れる病院のリスト化など)の整備を進めていく—といった考えも示しています。
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