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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

寝たきり防止のため、急性期病棟等に「リハビリ視点での介護を行える介護福祉士」等を配置し、評価せよ—日慢協・橋本会長

2023.3.17.(金)

「寝たきり防止」のために、急性期病棟などにも「リハビリテーション視点での介護を行える介護福祉士」等を配置し、それを診療報酬で評価するべきである—。

日本慢性期医療協会の橋本康子会長が3月16日に定例記者会見を開き、こうした提言を行いました。

中医協等でも「寝たきり防止」のために、急性期病棟での介護士配置などを議論へ

日慢協では従前より「寝たきり防止」対策の必要性・重要性を強く訴えています。「寝たきり」となれば、本人のQOLが著しく低下するとともに、家族や介護職の負担が増す、医療費・介護費が膨張する事態を招いてしまいます。

寝たきりになる原因は様々ですが、日慢協では「急性期段階で、適切な全身管理・リハビリを行わずに『寝かせ切り』にしてしまう」点に注目しています。筋肉量は1週間に10-15%程度の割合で低下し、関節は1週間程度で拘縮が始まることが分かっています(関連記事はこちら)が、急性期治療を行う病棟では「介護スタッフの配置が充実していない」「看護職が多忙を極め、介護・ケアなどを十分に行えない」のが実際です。結果、急性期治療を終え、回復期・慢性期病院に転院してきた段階で「寝たきり」になっており、「実際にリハビリを開始できるようになるまでに、1―2か月の栄養補給・水分補給・拘縮対応などが必要になり、また早期リハビリが阻害されることで効果も落ちてしまう」ことを橋本会長は従前から指摘しています(関連記事はこちら)。

そこで橋本会長は「急性期病棟における基準介護」、より具体的には「リハビリテーション視点での介護を行える介護福祉士等の配置」を行うことを提言しました。

「リハビリテーション視点での介護」とは、「要介護者の残存能力を引き出す」ための介護です。例えば、「おむつ交換」は重要な介護業務ですが、「おむつ交換を行う」だけでは、どれだけ頻回・長期間実施しても「排泄の自立」にはつながりません。しかし、「排泄自立」を目指し、「一定時間(例えば2時間)おきにトイレへ誘導する」介護を行えば、▼「要介護者の排泄パターン」を確認できるようになる→▼そのパターンに沿うようにトイレ誘導を行うことが可能になる→要介護者が尿意を覚えた際に、自身で「トイレへ連れて行ってほしい」と意思表示できるようになる→▼排泄自立につながる—という効果が得られると橋本会長は指摘。排泄場面にとどまらず、食事や更衣・整容、入浴などの場面でも、こうした「リハビリテーション視点での介護」が行われることで「残存能力が維持・向上して自立が可能になり、寝たきりが防止される」「結果、要介護者が減り、介護者の負担も軽減される」と期待されます。

「リハ視点での介護」技術を持ち、実践することが重要(日慢協会見1 230316)



もっとも、こうした「リハビリテーション視点での介護」は、現行の介護福祉士等養成課程では必ずしも十分には学べておらず、橋本会長は「日慢協と日本介護福祉士会とで協力し、『リハビリテーション視点での介護』能力をもち、実践できる人材」の養成を進めていく考えを明らかにしています。

リハ視点での介護技術を伝授することも重要(日慢協会見3 230316)



また、こうした「リハビリテーション視点での介護を行える介護福祉士等を急性期病棟に配置する」にとどまらず、「直接介護に専念してもらう」ことが重要とも指摘します。

急性期病棟における介護業務を、▼入院、検査、病棟移動のための搬送、見守り、食事介助、口腔ケア、洗髪、洗面、整容、排泄介助、清拭、更衣、おむつ交換、体位交換、シャワー入浴介助、留置カテーテルに溜った尿の廃棄などの【直接介護】▼病床・病床周辺の清掃・整頓、病室環境の整備、シーツ交換、ベッドメイキング、リネン類の管理、配膳・下膳などの【間接介護】—とに区分。前者は「リハビリテーション視点での介護を行える介護福祉士等」が担い、後者はいわゆる介護助手が担うという役割分担を行うことで、限られた人材でも「効果的かつ効率的な介護ケア」が可能になると考えられるためです。

医療・介護職の専門性に応じた役割分担が必要である(日慢協会見2 230316)



さらに橋本会長は、こうした「リハビリテーション視点での介護を行える介護福祉士等の配置」を【基準介護加算】として入院基本料に上乗せする(急性期一般入院料1―6に上乗せする加算など)ことや、H004【摂⾷機能療法】を「リハビリテーション視点での介護を行える介護福祉士」等が実施した場合にも算定可能とすることなども提言しています。H004【摂食機能療法】は、摂食機能障害(発達遅滞、顎切除・舌切除の手術、脳血管疾患の後遺症による)を有する患者に対して、個々の患者に対応した診療計画書に基づき、医師などの指示の下に、言語聴覚士(ST)や看護師などが1回に30分以上訓練指導を行った場合に算できますが、橋本会長は「実際に食事介助などを行っている介護福祉士等に期待すべき」と指摘しています。

リハ視点での介護を行える介護福祉士配置等を診療報酬でも評価する必要がある(日慢協会見4 230316)



日慢協では、従前より「寝たきり防止のため、急性期病棟にも介護福祉士を配置すべき」との提言を強く行ってきています。3月15日に開催された中央社会保険医療協議会と社会保障審議会介護給付費分科会の意見交換会でも、この点が正面から議論されるに至っており(関連記事はこちら)、「日慢協提言がついに日の目を見ることになった」と考える向きもあります。

ところで意見交換会では「介護人材が不足する中では、急性期病棟への介護福祉士配置は非現実的ではないか」との声も出ています。この点について橋本会長は「介護職の処遇改善などが行われているが、現場の肌感覚では効果を感じていない。介護職人材の確保のためには、処遇改善にとどまらず、『やりがい』を持ってもらうことが必要ではないか。急性期病棟で直接介護を行い、『患者の状態が改善していく』実感(成功体験)こそが、まさに『やりがい』となる。介護職員確保のためにも、急性期病棟への介護福祉士配置を検討すべき。また『寝たきり防止』をしなければ、どれだけ介護事業所・施設を整備しても足らないことにも留意が必要である」との考えを述べています。

また意見交換会にも参加する日慢協の池端幸彦副会長は「現在、病院内の介護福祉士は『看護補助者』として扱われており、忸怩たる思いもあると聞く。介護福祉士の専門性を病院内でも発揮できるような仕組みづくりが求められる」と指摘しています。

2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定(障害福祉サービス等報酬の改定も加わりトリプル改定でもある)において、こうした仕組みがどう議論されていくのか、今後の中医協論議に注目が集まります。



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