新型コロナの退院基準を満たした患者は早急に後方病床に転院を、療養病床でもコロナ患者を積極的に受け入れる—日慢協・武久会長
2021.1.15.(金)
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で、療養病床でも積極的に感染患者の受け入れを行っている。また、回復患者については、退院基準を満たした場合には、できるだけ早期に療養病床などの後方病床に送ってもらうことが重要である—。
日本慢性期日医療協会の武久洋三会長と池端幸彦副会長は、1月14日に開催した定例記者会見でこのような見解を述べています。
2021年度の次期介護報酬改定、バランスのとれた優れた内容である
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい、我が国でも昨年(2020年)終盤からからいわゆる第3波が到来。新規感染者や重症患者が急増し、都市部を中心に新型コロナウイルス感染症対応病床の逼迫が生じています。
事態を重くみた菅義偉内閣総理大臣は1月7日に東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の1都3県を対象に緊急事態宣言を発令。14日には対象地域を栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県にも拡大。飲食店を中心に営業時間短縮等を要請して「感染拡大防止」に取り組むとともに、「医療提供体制の確保」に向けた強力な支援を行っています。
この点、感染患者の急増によって各地で「病床逼迫」が懸念され、急性期病棟にとどまらず、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟、さらには医療療養病棟などで新型コロナウイルスの感染患者を受け入れなければならないケースも増えてきています。療養病棟や地域包括ケア病棟には、「回復後患者の転院先」としての役割のみならず、「初期対応」としての役割も期待されつつあるのです。実際に日慢協の役員病院の半数では、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを行っています。
こうした状況の中で日本慢性期医療協会は、昨年(2020年)12月21日に厚生労働省保険局医療課の井内努課長に宛てて「一般病床以外の病床においても新型コロナウイルス感染症患者を直接治療している場合には、そのコストが賄えるよう、しかるべき対応をしてほしい」旨を要望。当時は、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた場合の診療報酬上の臨時特例措置などは「一般病床」が対象であり、療養病床で新型コロナウイルス感染症患者を受け入れて補助を受けるためには、「人員配置を見直し(例えば、ベッド数を減らして看護配置を20対1から15対1・13対1・10対1・7対1などに引き上げる)、療養病床から一般病床へ転換する」ことが必要であったためです。
しかし、こうした手続きを、いわば有事の中で求めることは迂遠であるとし、厚労省は日慢協の要望も踏まえて、1月13日に次のような対応をとることを決定しています。
▽診療報酬上の臨時特例措置(関連記事はこちら)
→新型コロナウイルス感染症患者を、都道府県から受け入れ病床として割り当てられた「療養病床」に入院させた場合、一般病床と見做して【一般病棟入院基本料】のうち【特別入院基本料】を算定することとして差し支えない
▽緊急包括支援事業の柔軟措置(関連記事はこちら)
→都道府県から新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病床として割り当てられた「療養病床」については、「一般病床」と見做して病床確保料の対象とすることを可能とする
▼ICU内の病床を確保する場合:1床・1日当たり9万7000円
▼重症患者または中等症患者を受け入れ、酸素投与・呼吸モニタリングなどが可能な病床を確保する場合: 1床・1日当たり4万1000円
▼上記以外の場合:1床・1日当たり1万6000円
この対応について武久会長は、「厚労省の中には『療養病棟は楽ちんな患者しか診ない』という認識があるのかもしれない。しかし、療養病棟入院基本料1では医療区分2・3の重症患者割合が80%以上という施設基準が定められ、実態は重症患者が90%以上を占めており、厚労省の一部認識と、実態との乖離は大きい。療養病棟でも新型コロナウイルス感染症患者を受け入れており、我々もそこから逃げない」旨を強調。
また池端副会長は、「診療報酬上の臨時特例措置は、一般病棟の【特別入院基本料】の算定のみを認めるというもので、忸怩たる思いがないわけではない。しかし、この短い期間では相当の配慮をしてもらったと受け止めている」とコメントしています。
一方、武久会長は、療養病棟等には「新型コロナウイルス感染症から回復した患者の受け入れ」が求められている点に関連して、「新型コロナウイルスに感染して発熱した患者では、通常よりも多くの水分・栄養補給が必要であるが、必ずしもそれが十分に行われず、結果として状態が悪化してしまっている事例がある」点を指摘。専ら新型コロナウイルス感染症に対応する急性期病棟に対し、「退院基準を満たした場合には、できるだけ早く我々の後方病床に患者を送ってほしい」とも要請しました。あわせて、より多くの公立・公的病院が新型コロナウイルス感染症対応を行うことにも期待を寄せています。
なお、来年度(2021年度)の介護報酬改定論議が社会保障審議会・介護給付費分科会で最終局面を迎えていますが、武久会長は「今回の改定は、非常に細かい部分にまで気を配った、バランスのとれた内容になっている。ただし、赤字の続くケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)については加算等が十分ではなく、今後の改定でさらなる支援をする必要がある」ともコメントしています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
【関連記事】
療養病床を「新型コロナ受け入れ病床」とした場合、「一般病床」と見做して病床確保補助の対象に—厚労省
療養病床で新型コロナ患者受け入れた場合、一般病棟の【特別入院基本料】算定可能—厚労省
2021年度介護報酬改定に向け「人員配置基準」改正を了承、サービスの質確保前提に基準緩和—社保審・介護給付費分科会
来年度(2021年度)介護報酬改定に向けた審議報告を了承、限られた人材での効率的なサービス提供目指す―社保審・介護給付費分科会
新型コロナ対策をとる医療機関を広範に支援する新臨時特例措置、介護報酬0.7%プラス改定、中間年度薬価改定など決定―厚労省
ICT活用する介護施設等で夜勤スタッフ配置緩和、感染症等で利用者急減した通所事業所の経営を下支え―社保審・介護給付費分科会(3)
グループホームの夜勤配置・個室ユニットの定員を緩和、サービスの質等担保に向け運用面で工夫―社保審・介護給付費分科会(2)
リハ職による訪問看護、【看護体制強化加算】要件で抑制するとともに、単位数等を適正化―社保審・介護給付費分科会(1)
介護サービスの人員配置緩和・感染症等対策・認知症対応など柱とする運営基準改正へ、訪問看護は戦術変更―社保審・介護給付費分科会
公正中立なケアマネジメント推進、通所サービスの大規模減算は維持するが「利用者減」に迅速に対応―社保審・介護給付費分科会(4)
ADL維持等加算を特養等にも拡大し、算定要件を改善(緩和+厳格化)―社保審・介護給付費分科会(3)
個別要介護者のみならず、事業所・施設全体での科学的介護推進を新加算で評価―社保審・介護給付費分科会(2)
介護医療院への「移行定着支援加算」、当初期限どおり2021年3月末で終了―社保審・介護給付費分科会(1)
小多機の基本報酬見直し・加算の細分化を行い、看多機で褥瘡マネ加算等の算定可能とする―社保審・介護給付費分科会(4)
すべての生活ショートに外部医療機関・訪問看護STとの連携を求め、老健施設の医療ショートの報酬適正化―社保審・介護給付費分科会(3)
通所リハを「月単位の包括基本報酬」に移行し、リハマネ加算等の体系を組み換え―社保審・介護給付費分科会(2)
訪問看護ST、「看護師6割以上」の人員要件設け、リハ専門職による頻回訪問抑制へ―社保審・介護給付費分科会(1)
見守りセンサー等活用による夜勤スタッフ配置要件の緩和、内容や対象サービスを拡大してはどうか―社保審・介護給付費分科会(2)
介護職員の【特定処遇改善加算】、算定ルールを柔軟化すべきか、経験・技能ある介護福祉士対応を重視すべきか―社保審・介護給付費分科会(1)
状態・栄養のCHASEデータベースを活用した取り組み、介護データ提出加算等として評価へ―社保審・介護給付費分科会(2)
【ADL維持等加算】を他サービスにも拡大し、重度者への効果的な取り組みをより手厚く評価してはどうか―社保審・介護給付費分科会(1)
老健施設「入所前」からのケアマネ事業所との連携を評価、在宅復帰機能さらに強化―社保審・介護給付費分科会(5)
介護報酬や予算活用して介護医療院への移行・転換を促進、介護療養の報酬は引き下げ―社保審・介護給付費分科会(4)
ケアマネ報酬の逓減制、事務職員配置やICT利活用など要件に緩和してはどうか―社保審・介護給付費分科会(3)
4割弱の介護事業所、【特定処遇改善加算】の算定ベース整っても賃金バランス考慮し取得せず―社保審・介護給付費分科会(2)
介護サービスの経営状況は給与費増等で悪化、2019年度収支差率は全体で2.4%に―社保審・介護給付費分科会(1)
訪問リハビリや居宅療養管理指導、実態を踏まえた精緻な評価体系を構築へ—社保審・介護給付費分科会(3)
訪問介護利用者の負担増を考慮し、「敢えて加算を取得しない」事業所が少なくない—社保審・介護給付費分科会(2)
訪問看護ステーション本来の趣旨に鑑み、「スタッフの6割以上が看護職員」などの要件設定へ—社保審・介護給付費分科会(1)
生活ショート全体の看護力を強化し、一部事業所の「看護常勤配置義務」を廃すべきか—社保審・介護給付費分科会(3)
通所リハの【社会参加支援加算】、クリームスキミング防止策も含めた見直しを—社保審・介護給付費分科会(2)
デイサービスとリハビリ事業所・医療機関との連携が進まない根本に、どのような課題があるのか―社保審・介護給付費分科会(1)
グループホームの「1ユニット1人夜勤」体制、安全確保のため「現状維持」求める声多数—社保審・介護給付費分科会(3)
小多機の基本報酬、要介護3・4・5を引き下げて、1・2を引き上げるべきか—社保審・介護給付費分科会(2)
介護療養の4分の1、設置根拠消滅後も介護療養を選択、利用者に不利益が生じないような移行促進が重要—社保審・介護給付費分科会(1)
介護人材の確保定着を2021年度介護報酬改定でも推進、ただし人材定着は介護事業所の経営を厳しくする―社保審・介護給付費分科会
寝たきり高齢者でもリハ等でADL改善、介護データ集積・解析し「アウトカム評価」につなげる—社保審・介護給付費分科会
介護保険施設等への外部訪問看護を認めるべきか、過疎地でのサービス確保と質の維持をどう両立するか—社保審・介護給付費分科会
特養老人ホームのユニット型をどう推進していくか、看取り・医療ニーズにどう対応すべきか―社保審・介護給付費分科会(3)
老健施設、「機能分化」や「適正な疾患治療」進めるために介護報酬をどう工夫すべきか―社保審・介護給付費分科会(2)
介護医療院の転換促進のために、【移行定着支援加算】を2021年度以降も「延長」すべきか―社保審・介護給付費分科会(1)
ケアマネジメントの質と事業所経営を両立するため「ケアマネ報酬の引き上げ」検討すべきでは―介護給付費分科会(2)
訪問看護ステーションに「看護職割合」要件など設け、事実上の訪問リハビリステーションを是正してはどうか―介護給付費分科会(1)
介護保険の訪問看護、医療保険の訪問看護と同様に「良質なサービス提供」を十分に評価せよ―介護給付費分科会
2021年度介護報酬改定、「ショートステイの長期利用是正」「医療機関による医療ショート実施推進」など検討―社保審・介護給付費分科会(2)
通所サービスの大規模減算を廃止すべきか、各通所サービスの機能・役割分担をどう進めるべきか—社保審・介護給付費分科会(1)
小多機や看多機、緊急ショートへの柔軟対応を可能とする方策を2021年度介護報酬改定で検討―社保審・介護給付費分科会(2)
定期巡回・随時対応サービス、依然「同一建物等居住者へのサービス提供が多い」事態をどう考えるか—社保審・介護給付費分科会(1)
2021年度介護報酬改定、介護サービスのアウトカム評価、人材確保・定着策の推進が重要—社保審・介護給付費分科会
2021年度介護報酬改定、「複数サービスを包括的・総合的に提供する」仕組みを―社保審・介護給付費分科会
2021年度介護報酬改定、「介護人材の確保定着」「アウトカム評価」などが最重要ポイントか―社保審・介護給付費分科会