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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

グループホームの夜勤配置・個室ユニットの定員を緩和、サービスの質等担保に向け運用面で工夫―社保審・介護給付費分科会(2)

2020.12.11.(金)

グループホームの夜勤体制について「1ユニット1人」の原則を維持したうえで、安全性を確保できていると認められる場合には、例外的に「3ユニット2人」体制を選択することを可能とする―。

個室ユニット型施設のユニット定員について、「原則10人まで、最大15人まで」に緩和するが、介護サービスの質を確保し、またスタッフ負担が過重とならないよう、夜勤等の人員配置について厳しい努力義務規定を設け、国と都道府県で監視することとする―。

12月9日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった点が固められました。ただし異論も決して少なくなく、今後、「介護サービスの質を確保し、スタッフの負担が過剰にならない」ような運用方法(例えば解釈通知や事務連絡など)を詰めていくことになります。

グループホームの夜勤、1ユニット1人の原則を維持し、安全性確保される場合には緩和

Gem Medでお伝えしているとおり、来年度(2021年度)の介護報酬改定に向けた介護給付費分科会論議が佳境を迎えています。12月9日には「運営基準改正案」を了承したほか、「審議報告案」について議論しています。本稿では「運営基準」改正の内容に焦点を合わせます(訪問看護の見直し修正案に関する記事はこちら)。

介護保険事業所・施設の指定は、条例に定められた基準に則って自治体が行います。運営基準は、この条例を定めるための拠り所となり、条例改正論議の時間を考慮して、他の事項に先んじて改正案を固める必要があります。

12月2日の前回会合で「運営基準改正案」の議論を行い、概ねの了承が得られましたが、(1)グループホームの夜勤配置(2)ユニット型特別養護老人ホームの定員緩和―の2点については賛否両論があったことから、田中滋分科会長(埼玉県立大学理事長)が「さらに議論を尽くす必要がある」と判断。12月9日の分科会に、厚労省からこの2点についての修正案が提示されました。

まず(1)のグループホームの夜勤配置については、過去の事故対応などへの反省を踏まえて「1ユニットにつき夜勤1人以上」という規定がありますが、これを維持したうえで「3ユニットの場合、一定要件の下で『夜勤2人以上』の配置に緩和することを可能とする」との見直し案が示されていました。

今般、厚労省は「3ユニットでも夜勤3人(1ユニット1人夜勤)が原則である」ことを再確認したうえで、▼各ユニットが同一階に隣接している▼職員が円滑に利用者の状況把握を行い、速やかな対応が可能な構造である▼十分な安全対策(マニュアルの策定、訓練の実施)をとっている―ことを要件として、「例外的に夜勤2人以上の配置」に緩和できるとの提案を行いました。スタッフ確保が極めて難しくなっている状況から、「安全性」確保等を要件に柔軟な人員配置を可能とするものです。

また3ユニット2人夜勤は「事業所が選択する」こととなり、常に「3ユニットの場合には2人夜勤となる」ものでもありません。またこの場合には夜勤体制が手薄になることから、介護報酬も低めに設定されます。

さらに、施行後の状況を十分に把握し、安全性・サービスの質に問題が生じていないか、スタッフの負担増などが生じていないかを検証し、次の改定(2024年度改定)で必要な対応を行うことも明確にされました。

グループホームの夜勤配置緩和方向(介護給付費分科会(2)1 201209)

個室ユニットの定員、新規施設では「原則10人、最大15人」に緩和

また(2)は、個室ユニット型施設における1ユニットの定員について、「概ね10人以下」という基準を、「原則10人以下、上限は15人」と緩和するものです。

新規に開設する施設にのみ緩和規定が適用され、サービスの質・安全性を確保し、またスタッフの負担が過重にならないよう、例えば夜勤(夜間・深夜)については「15人ユニットの場合では、2ユニット1.5人以上のスタッフ配置」(つまり10人当たり1人の夜勤配置)などの努力義務規定が設けられます(日中のスタッフ配置規定などは今後詰めていく)。

厚労省老健局高齢者支援課の齋藤良太課長は、この努力義務規定を各施設が遵守するよう、▼10人超のユニットを整備する施設では、介護職員・看護職員の総数、夜勤の介護職員・看護職員の数を都道府県に届け出ることとする▼努力義務を果たしていない施設には、都道府県の指導が行われる国が通知を行うとともに、国が指導マニュアル等を示す▼10人超ユニットの整備・運営状況を国が定期的に把握し、必要な制度改正を行う—考えを提示しています。

1ユニットの定員緩和方向(介護給付費分科会(2)2 201209)

サービスの質が確保され、スタッフ負担が過重にならないよう「運用面での工夫」

これまでの見直し案に比べて「サービスの質・安全性の確保、スタッフの負担への配慮」などがなされていることから、武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)、小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)、河本滋史委員(健康保険組合連合会理事)らは厚労省の考え方に賛成しました。

しかし、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)、鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)、石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会理事、名古屋学芸大学看護学部教授)らは「サービスの質が確保されるのか」「スタッフの負担増となり、離職が相次ぐのではないか」「利用者・家族の安心が確保できないのではないか」と指摘し、緩和案(両案ともに人員配置の緩和を意味する)の撤回を求めました。

両者の意見ともに頷ける部分があります。例えば、「人員配置を緩和して、サービスの質などが低下した」施設・事業所については「評判が落ち、利用者が逃げていく」ことになると思われます(利用者・家族が抑止力となる)。もちろん、利用者・家族サイドにしてみれば「事業所・施設の選択肢」はそれほど多くないために、サービスの質・安全性が確保されるよう都道府県による適切な監視・指導が重要となるでしょう。

さらに厚労省は、人員配置を緩和した事業所・施設については定期的にウォッチを続け、問題(サービスの質低下、安全性の低下、スタッフの負担増など)が生じている場合には、次の改定(2024年度改定)で必要な見直しが行われることになります。

田中分科会長は、こうした点を踏まえて「適正な運用を行う」ことを条件に、この2点の見直し案を分科会として了承することを決定しました。

この決定を受け、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨老人保健課長は、運営基準改正案について国民からパブリックコメント募集に付すことを説明しています。今後、パブコメ内容を踏まえた法令改正を行い、その後、各自治体の議会で条例改正の審議が行われることになります。

人員配置緩和後もサービスの質が確保され、スタッフ負担が増加しないような「運用面での工夫」が、今後の重要な検討ポイントとなるでしょう。答申後に示される関連通知や事務連絡などに注目が集まります。



●2021年度介護報酬改定に向けた、これまでの議論に関する記事●
【第1ラウンド】

▽横断的事項▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保―、後に「感染症対策・災害対策」が組み込まれる)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護▼夜間対応型訪問介護小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼認知症対応型共同生活介護▼特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護▼認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問リハビリテーション▼居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設(老健)介護医療院・介護療養型医療施設—)

【第2ラウンド】
▽横断的事項
(▼人材確保、制度の持続可能性自立支援・重度化防止地域包括ケアシステムの推進―)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型訪問介護、看護小規模多機能型訪問介護(以下、看多機)認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護・認知症対応型通所介護、療養通所介護通所リハビリテーション、福祉用具・住宅改修短期入所生活介護、短期入所療養介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護、訪問入浴介護訪問リハビリ、居宅療養管理指導居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護医療院・介護療養型医療施設介護老人保健施設、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)短期入所生活介護、短期入所療養介護―)

▽横断的事項(その2)(▼地域包括ケアシステムの推進▼自立支援・重度化防止の推進(関連記事はこちら(ADL維持等加算)こちら(認知症対策、看取り対応、科学的介護など)、▼処遇改善、▼人材確保、制度の安定性・持続可能性の確保など―)

▽実態調査(▼介護事業経営処遇改善―)

▽詰めの議論(▼多機能型サービス短期入所系サービス通所系サービス訪問看護「介護医療院・介護療養型医療施設」科学的介護の推進(データ提出)ADL維持等加算ケアマネジメント―)

▽最終調整の議論(▼運営基準見直し―)

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