急性期病院における栄養・水分補給の充実で、回復期・慢性期の入院期間短縮を—日慢協・武久会長
2017.4.14.(金)
急性期病院から慢性期病院に転院する患者の多くは、低栄養・脱水状態となっており、慢性期病院では治療の前に栄養・水分補給をしなければならない。慢性期・回復期の入院期間を短縮し、寝たきり患者を半減させるために、急性期病院における「栄養・水分補給の早期実施」が必要である—。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、13日の定例記者会見でこのように強調しました(会見時の資料はこちら(日慢協のサイト)から)。
介護施設からの入院患者に比べ、急性期病院からの転院患者は低栄養・脱水が進行
武久会長は、日慢協の会員病院の入院患者3万7730名(2010年1月-2016年12月入院)の「入院時における栄養状態」などを分析。それによると、▼腎機能低下(BUN20.1以上)患者が39.65%▼低ナトリウム(Na136未満)患者が29.64%▼低栄養(ALB3.8未満)患者が59.7%―など、相当数の患者が脱水や低栄養状態で入院してきた状況が明らかになりました。
これを入院経路別に見ると、多くの病院では「急性期病院からの転院患者」において低栄養・脱水状態の割合が高いことも分かりました。
日慢協所属のI病院においては、ALB2.5未満という極めて栄養状態が悪化している患者の9割超、またBUN25以上という脱水状態がかなり進行している患者の4分の3が急性期病院からの転院患者という状況です。
こうした状況を重く見て、武久会長は「急性期病院では感染症などの急性期症状だけでなく、とくに後期高齢者の栄養状態・水分補給状態を十分に見てほしい。低栄養・脱水の状態で慢性期・回復期病院に転院してくると、治療などの前に栄養・水分補給をしなければならない。急性期病院で適切な栄養・水分補給がなされれば、慢性期・回復期の入院期間も短くなり、寝たきりも半減できる」と強調しています(関連記事はこちら)。
低栄養・脱水がターミナルと判断されないよう、国がターミナルの定義明確化せよ
さらに武久会長は、こうした低栄養・脱水と「ターミナル」との関係にも言及しました。急性期病院で後期高齢者が低栄養・脱水状態となれば、フレイル(虚弱)が進行し、廃用症候群につながります。こうした患者が慢性期病院に転院した際、適切な栄養・水分補給を行えば、活動性が高まり、傷病が改善することもあります。しかし、現在は「ターミナルの基準」がないため、武久会長は「低栄養・脱水状態の患者も『ターミナル』状態と判断され、適切な治療がなされない可能性がある」と危惧します。
日本医師会(2009年)や日本老年医学会(2012年)では終末期について、「担当医を含む複数の医療関係者が、最善の医療を尽くしても、病状が進行性に悪化することを食い止められず死期を迎えると判断し、患者・家族が『終末期』であることを十分に理解したと担当医が判断した時点から死亡まで」(日本医師会グランドデザイン2009)などと定義していますが、国の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、こうした定義はなされていません。
武久会長は「施設ごとに独自の基準でターミナルの判断を行っている」という現状を訴え、「ターミナルの定義」を明確に定めるよう国に要望。かねてから「超高齢者であっても、治せる傷病は治療し、天寿を全うさせることが必要である。十分に治療できない病院ほど、適切な治療を行えないことを『ターミナル』という言葉で逃げている」と述べており(関連記事はこちら)、今回の会見で、改めてこの点を強調したものと言えます。
このほか13日の会見で武久会長は、「高齢化と少子化が進む中では、元気な高齢者が医療・介護分野に参入することが期待される。そうした方の教育の場として『准看護師養成校』の拡充を行うべき」(関連記事はこちら)、「マイケアマネジャーを制度化し(現在は居宅、居住系施設、施設でケアマネが変わってしまう)、要介護者が入院する前に病院スタッフとケアマネとの連携を行う」(関連記事はこちら)ことが重要との見解も改めて披露しました。
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