7対1の平均在院日数は12日程度にすべき、早期のリハ開始で寝たきり防止を―日慢協・武久会長
2016.1.15.(金)
急性期病棟での手術や処置が終了した後、ただちにリハビリを提供できる病院・病棟の転院・転棟することで寝たきりを防止できる。7対1病棟の平均在院日数は12日程度に短縮すべきであろう―。このような見解を、日本慢性期医療協会の武久洋三会長が14日に明らかにしました。
日慢協が会員病院を対象に、急性期病院から後方病院(リハビリ提供病院)に転院した患者の状況を分析したところ、次のようなことが明らかになりました。
▽急性期病院の入院期間が1か月以上であった患者は、リハビリ提供病院での入院期間は69.18日であるが、1か月未満であった患者は59.76日で、有意に短い
▽急性期病院の入院期間が1か月以上であった患者は、リハビリによるFIM効率(1日当たりのFIM向上点数、数値が大きいほどADL改善度合いが高い)は0.22にとどまるが、1か月未満であった患者は0.24と高くなっている
▽急性期病院の在院日数が長い患者ほど、リハビリ提供病院での入院期間も有意に長くなり、FIM点数も有意に低くなる(ADLが低下している)
こうしたデータをもとに武久会長は、「急性期病院での長期入院が、寝たきりを招いている可能性がある」と指摘しました。急性期で長期間入院することで廃用が生じ、これがために後方病院でリハビリを実施しても効果が低くなってしまう可能性があるというのです。
このため武久会長は、「急性期での手術・処置が終了した後は、日常生活に戻るために『ただちに』リハビリを提供できる病院に転院させ、早期から集中的なリハビリを提供する必要がある」と指摘しました。
ところで2016年度の次期診療報酬改定に向けた議論を行っている中央社会保険医療協議会では、7対1入院基本料の平均在院日数を短縮すべきか否かで、診療側と支払側が対立しており、診療側の委員は「平均在院日数の短縮は限界を超えている」と主張しています(関連記事はこちら)。この点について武久会長は「限界を超えているというのであれば、そのエビデンスを示す必要があるのではないだろうか」と提案しました。
さらに、7対1入院基本料の平均在院日数要件について、将来的には「現在(18日以内)の3分の2、つまり12日程度に短縮する必要がある」との見解を示しました。この根拠として、上記の日慢協調査で得られた「急性期病院の入院期間が14日程度以内であった患者では、後方病院での入院期間も短く、リハビリの効果が高い」というデータを挙げています。
武久会長が提案するように急性期病院の平均在院日数を短縮すれば、後方病院(回復期や慢性期)での在院日数も短縮します。すると日本全国で「空床が数多く生まれる」ことになります。極論すれば、すべての病院で平均在院日数が半減すれば、入院のためのベッドも半数で済む(半分は空床になる)ことになります。
この空床について武久会長は、SNR(Skilled Nursing Residence、従前はSNW:Skilled Nursing Wardとしていた)などに転換することが資源の有効活用になるとも提案しています。武久会長は「SNRはそもそも療養病床などからの転換先として構想したが、昨今の状況を見ると、急性期病床で生じる空床への対策と考えられる」と指摘しました。
ところでSNRは、厚生労働省の「療養病床の在り方等に関する検討会」において、医療外付型(3つのサービスモデルの1つ)として、25対1医療療養・介護療養の『新たな選択肢』に採用されています。武久会長と池端幸彦副会長は、この点について「療養病床の在り方等に関する検討会では、25対1医療療養などの移行先という位置づけだが、急性期からの移行も一定程度認めてよいのではないか」との考えも示しました。
なお『新たな選択肢』について武久会長と池端副会長は、既存の医療資源を有効活用することが極めて重要であるとし、「患者(入所者)1人当たり6.8平方メートル、4人部屋を、既存施設を建て替えるまでは認めることが必要である」と強調しています。
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