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7対1の長期入院患者、入院期間に応じて基本料を減額すべき―日慢協・武久会長

2015.11.13.(金)

 2016年度の次期診療報酬改定では、「7対1などの一般病棟に長期間入院する患者について、診療報酬を段階的に減算する仕組み」や、「リハビリは包括評価として、FIMの改善度に着目した加算を設ける」ことを検討してはどうか―。日本慢性期医療協会の武久洋三会長が12日の定例記者会見で、このような提案を行いました。

 また「急性期病棟を持つ大病院のケアミックス」について武久会長は、「競争すればよい」と一定の理解を示しましたが、民間病院と補助金のある自治体病院とでは競争条件が異なっているとの問題点も指摘しています。

11月12日の日本慢性期医療協会・定例記者会見で、提案内容を発表する武久洋三会長

11月12日の日本慢性期医療協会・定例記者会見で、提案内容を発表する武久洋三会長

90日超は13対1の点数、120日超は15対1の点数とすべき

 武久会長は、「これらは要望ではなく提案である」と強調した上で、2016年度の次期改定に向けて次のような内容を検討すべきと発表しました。

(1)7対1などの一般病棟の長期間入院患者について、診療報酬を段階的に減算する

(2)リハビリは包括評価とし、FIMの改善度(例えば30点以上)に着目した加算(FIM利得改善加算)を創設する

 大規模な、いわゆる高度急性期医療を行っている7対1病院にも300日以上の長期入院患者が一部います。この点について武久会長は、「長期間入院しても7対1の入院基本料(1591点)を算定できる仕組みで良いのだろうか」と指摘し、(1)にあるように「90日を超えたら13対1の点数(1121点)、120日を超えたら15対1の点数(960点)という具合に減算していく仕組みを考えてはどうか」と提案しています。

 この点に関連して武久会長は、「7対1病棟にも『施設が確保できない』『家族の希望』という理由で長期入院している高齢者(いわゆる社会的入院)がおり、長期入院患者の3割程度に上る可能性がある」と分析。

 その上で、「7対1では既に病床過剰であり、今後、削減が進むであろう。日慢協が提唱するSNW(Skilled Nursing Ward:院内住居)は、実は7対1をはじめとする一般病棟の救済策(空床対策)になる可能性がある」とも見通しています。

 また(2)の提案は、よりアウトカムに応じた評価をリハビリに導入するものです。武久会長は、「現在は、ともすると『何単位提供するか』に主眼が置かれがちだが、アウトカム評価の導入で『患者の状態を良くする』ことに必死になっていくだろう」と述べました。

大規模病院のケアミックス、競争は自由だが、条件の統一が課題

 ところで診療報酬改定の論議を行う中央社会保険医療協議会総会では、診療側の前委員であった鈴木邦彦氏(日本医師会常任理事)らから「大規模な急性期病院が地域包括ケア病棟などを設置することは、地域医療連携を阻害しかねない。少なくとも自治体立などの大規模病院は高度急性期・急性期に特化すべきである」と主張されています(関連記事はこちら)。

 この点について武久会長は「自由に競争すればよい」と述べ、大規模病院のケアミックスに一定の理解を示しました。ただし、「自治体病院などには補助金が投入されている。これと民間病院では競争の前提条件が異なる」という問題点も指摘しています。

 さらに武久会長は、「日慢協の会員病院は、医師や看護師を加配して高い質の医療を提供している。会員病院の中にも地域包括ケア病棟を設置しているところもある。急性期を維持できず『仕方がないので、地域包括ケア病棟でも設置するか』と考えているような病院に負けるわけがない」、「『地域包括ケア病棟でも設置するか』と考える病院では、在宅復復帰率の関係で自院の急性期から地域包括に患者を送ることも難しいだろう。自分で自分の首を絞める事態になるのではないか」ともコメントしています。

在宅復帰に関する中医協論議に注文

 中央社会保険医療協議会では現在、療養病棟の在宅復帰機能強化加算について「自宅から療養に入院する患者」よりも「急性期から療養に入院する患者」の在宅復帰を高く評価してはどうか、という検討が進んでいます(関連記事はこちら)。

 この点について武久会長は、「自宅から療養への入院の評価を薄くすれば、軽度急性期(sub acute)の患者が、まず急性期に入院するケースが増える。これは医療費適正化に逆高するのではないだろうか」と述べ、慎重に検討するべきと強調しました。

 さらに中医協では、7対1一般病棟や地域包括ケア病棟の施設基準である「在宅復帰率」について、「他病院の療養病棟」などへの転院を、「自宅や高齢者向け住宅」への退院よりも低く評価すべきではないか、という検討も行われています(関連記事はこちら)。

 これについても武久会長は、「病院の中には『自宅への復帰』を確約した患者を選別する(優先入院させる)ところが出てくるだろう」と見通した上で、「まず7対1での入院が必要ない患者を、回復期や慢性期、院内住居(SNW)などに移行する」「その上で自宅や集合住宅への復帰を促進する」という2段構えで対応しなければならないと強く訴えました。

25対1療養病床、20対1への転換を支援すべき

 ところで医療療養病床については、医療法で4対1以上(診療報酬上は20対1)の看護配置が求められており、6対1以上(診療報酬上は30対1)の病床は2017年度までしかありません。

 そのため25対1の療養病棟を持つ病院では、「病院全体で4対1以上を満たす」ことなどを考えなければいけませんが、看護師確保はそう容易ではありません。このため、25対1療養病棟の病床を削減するなどして20対1にすることが考えられます。また、厚労省の「療養病棟の在り方等に関する検討会」で「新たな選択肢」に関する議論も進んでいます(関連記事はこちら)。

 この点について武久会長は、「7対1の長期入院が是正されれば、療養病棟のニーズは高まるだろう」と見通した上で、「25対1療養(療養病棟2)から20対1療養(療養病棟1)を目指す場合には、『転換準備病棟』として医療区分要件(療養病棟1では、医療区分2と3の患者が直近3か月間の間、8割以上)などを段階的に満たせばよいことにしてはどうか」とも提案し、転換を支援すべきと訴えました。

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