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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

慢性期病院、介護療養から新類型への転換やリハ機能充実で大幅収益改善も―日慢協・武久会長

2017.2.13.(月)

 慢性期に力を入れている病院が、介護施設の新類型(介護医療院・仮称)とのケアミクスを選択した場合には相当な増収が見込まれる一方で、急性期を自認する病院が、空床対策として新類型などとのケアミクスを選択しても大きな増収は見込めない―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は9日、定例記者会見の中でこのような試算結果を発表しました。

 例えば200床の慢性期病院(20対1医療療養:100床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が、【15対1回復期リハ2:50床、20対1医療療養:100床、新類型I-2:50床に転換】に転換すると1か月当たりの収支差が1719万円増加しますが、200床の急性期病院(10対1一般:150床、回復期リハ1:50床)が、【10対1一般:50床、回復期リハ1:50床、20対1医療療養:50床、新類型I-2:50床】に転換すると逆に279万円収支差が悪化する、などと試算しています。

2月9日に、定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長

2月9日に、定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長

看護配置の手厚い慢性期病院、「少しの頑張り」でも大きな収益増が見込める

 日慢協では昨年(2016年)12月8日に、介護療養から各新類型へ転換した場合の収支状況について、一定の前提をおいて試算。その結果、新類型への移行により収支差が改善する可能性が高いことが分かりました(関連記事はこちら)。

日本慢性期医療協会では、介護療養病床などからの新たな転換先(新たな介護保険施設)について、一定の仮定を置いて収益性に関する試算を行った

日本慢性期医療協会では、介護療養病床などからの新たな転換先(新たな介護保険施設)について、一定の仮定を置いて収益性に関する試算を行った

 今般、日慢協では慢性期・急性期の病院が、新類型を含めたさまざまなケアミクス形態に転換した場合、収支差にどのような影響が出るのかを試算しています。

 まず看護配置を手厚くしている慢性期病院(20対1医療療養:100床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)について、「リハビリ機能の充実」した場合や「介護療養から新類型への転換」を進めた場合の試算結果を見ると、次のようになっています。

【パターン1】13対1地域包括ケア1:50床、15対1回復期リハ2:50床、20対1医療療養:50床、新類型I-2:50床に転換 → 主に増収によって、収支差が1か月当たり1776万円増加(従前の218万円から1994万円に)

【パターン2】13対1地域包括ケア1:50床、20対1医療療養:100床、新類型I-2:50床に転換 → 主に増収によって、収支差が1か月当たり365万円増加(従前の218万円から583万円に)

【パターン3】15対1回復期リハ2:50床、20対1医療療養:100床、新類型I-2:50床に転換 → 主に増収によって、収支差が1か月当たり1719万円増加(従前の218万円から1937万円に)

 とくにパターン3について武久会長は、「少しの頑張り(リハ専門職や看護師の確保)で、大きな収益増が見込める」旨を説明しています。

慢性期病院(20対1医療療養:100床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換した場合の試算(パターン3)その1

慢性期病院(20対1医療療養:100床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換した場合の試算(パターン3)その1

慢性期病院(20対1医療療養:100床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換した場合の試算(パターン3)その2

慢性期病院(20対1医療療養:100床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換した場合の試算(パターン3)その2

25対1医療療養と介護療養のミクス型病院、新類型への転換で収益増が見込める

 次に、200床の老人収容型の慢性期病院(25対1医療療養:100床、30対1介護療養:100床)においては、医療療養・介護療養のいずれもが設置期限が2018年3月で消滅するため、すべての病棟について何らかの転換措置が必要になります。日慢協は、次の3つの転換パターンを想定して収支差を試算した結果、相当な収支改善が見込めることが分かりました。

【パターン1】20対1医療療養:50床、回復期リハ2:50床、新類型I-2:50床、新類型II(特定施設入居者生活介護):50床に転換 → 主に増収によって、収支差が1か月当たり2046万円増加(従前の69万円から2115万円に)

【パターン2】20対1医療療養:50床、新類型I-1:50床、新類型I-2:50床、新類型II(同):50床に転換 → 主に人件費減によって、収支差が1か月当たり667万円増加(従前の69万円から734万円に)

【パターン3】20対1医療療養:50床、新類型I-2:100床、新類型II(同):50床に転換 → 主に人件費減によって、収支差が1か月当たり822万円増加(従前の69万円から891万円に)

 武久会長はこの結果を踏まえて、「パターン1は『回復期リハ病棟を設置する』もので、収支差が大幅に改善する。しかし現実的に『回復期リハ設置にはリハ専門職確保など、敷居が高い』と考える病院ではパターン2・3を選択することになり、それでも収支は大きく改善する」と見ています。

慢性期病院(25対1医療療養:100床、30対1介護療養:100床)が転換した場合の試算(パターン1)その1

慢性期病院(25対1医療療養:100床、30対1介護療養:100床)が転換した場合の試算(パターン1)その1

慢性期病院(25対1医療療養:100床、30対1介護療養:100床)が転換した場合の試算(パターン1)その2

慢性期病院(25対1医療療養:100床、30対1介護療養:100床)が転換した場合の試算(パターン1)その2

一般や地域包括ケア・回復期リハなどのケアミクス病院、機能強化が収益改善の鍵

 また、【7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床】というケアミクス病院が、地域ニーズの変化や、介護療養の廃止などを踏まえ、次のような病床戦略を行った場合の試算を見ると、やはり一定の増収が見込めることが分かりました。

【パターン1】7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、20対1医療療養:50床、新類型I-2:50床に転換 → 主に人件費減によって、収支差が1か月当たり309万円増加(従前の1094万円から1403万円に)

【パターン2】7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、新類型I-2:50床、新類型II:50床に転換 → 主に人件費減によって、収支差が1か月当たり492万円増加(従前の1094万円から1586万円に)

【パターン3】7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、15対1回復期リハ2:50床、20対1医療療養:50床に転換 → 主に増収によって、収支差が1か月当たり1596万円増加(従前の1094万円から2690万円に)

 ケアミクス病院では、リハ充実などの機能強化を図ることが大きな増収に結びつくようです。

ケアミクス病院(7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換する場合の試算(パターン3)その1

ケアミクス病院(7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換する場合の試算(パターン3)その1

ケアミクス病院(7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換する場合の試算(パターン3)その2

ケアミクス病院(7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、25対1医療療養:50床、30対1介護療養:50床)が転換する場合の試算(パターン3)その2

空床目立つ急性期病院から慢性期などとのケアミクスへの移行、収益増は厳しい

 さらに、200床の急性期病院(10対1一般:150床、13対1回復期リハ1:50床)で、「空床増」や「人材確保困難」などの事情で次のような病床再編を行った場合、経営的には維持あるいは悪化となるようです。

【パターン1】7対1一般:50床、10対1地域包括ケア1:50床、13対1回復期リハ1:50床、20対1医療療養:50床に転換 → 主に材料費減などによって、収支差が1か月当たり271万円増加(従前の1905万円から2176万円に)

【パターン2】10対1一般:50床、13対1回復期リハ1:50床、20対1医療療養:50床、新類型I-2:50床に転換 → 主に減収によって、収支差が1か月当たり279万円減少(従前の1905万円から1625万円に)

 10対1一般病棟から医療療養や新類型への転換は、患者1人当たり単価が大きく異なるため、人件費減を上回る大幅な減収となってしまうことが分かりました。

急性期病院(10対1一般:150床、13対1回復期リハ1:50床)が転換する場合の試算(パターン2)その1

急性期病院(10対1一般:150床、13対1回復期リハ1:50床)が転換する場合の試算(パターン2)その1

急性期病院(10対1一般:150床、13対1回復期リハ1:50床)が転換する場合の試算(パターン2)その2

急性期病院(10対1一般:150床、13対1回復期リハ1:50床)が転換する場合の試算(パターン2)その2

 

 地域医療構想や病床機能報告でも同様ですが、病院がどのような病床機能を選択するかに当たっては、▼地域の医療ニーズ(地域住民の人口構成や疾病構造など)▼地域のリソース(他院がどの機能を選択し、どのような能力を持っているのか、また介護サービスはどれだけ整備されているかなど)▼自院のリソース(自院の医師の得意分野、看護配置、リハ専門職配置、機器整備状況など)―を考慮することが重要です。武久会長も、「どちらが儲かるか、という視点で病床機能を選択することは好ましくない」と指摘しています。

 しかしグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが提唱する「No margin ,No mission」(利益なくして、果たせる使命なし)の言葉どおり、病院は収益増を目指さなければいけません。人材確保や機器などの設備整備、さらには将来の建て替えなども考慮しなければならないからです。武久会長は、「当初は転換促進のために新類型の介護報酬は高く設定すると思われるが、将来的には報酬を下げていくことになろう。とはいえ転換しなければさらに状況は悪くなる。それほど選択肢は多くない」ともコメントしており、経営的な視点も加味して自院の病床戦略を立てる必要があります。

 なお、急性期からケアミクスへの転換にあたっては経営改善の道は厳しそうですが、武久会長は「急性期を自認している病院が『空床が目立つ』という理由で、回復期や慢性期に機能転換しても、その機能にふさわしい医療が提供できるのだろうか」との疑問もを呈しています。

   
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