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療養病棟評価する医療区分に「治療効果が報酬に反映されない」等の問題、報酬体系の改善・抜本改革を—日慢協・橋本会長、矢野副会長

2023.1.13.(金)

療養病棟を評価する医療区分には、「治療効果が報酬に反映されない、アウトカムとして見える化されない」などの問題点がある。今後、改善あるいは抜本改革に向けた研究・検討を進めていく必要がある—。

あわせて、それまでの過渡的な「医療資源投入量に応じた点数設定」も考える必要がある—。

日本慢性期医療協会の橋本康子会長と矢野諭副会長は、1月12日に開催した本年初の記者会見でこのような考えを示しました。

1月12日の新年記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の橋本康子会長(写真向かって右)と矢野諭副会長(写真向かって左)

療養病棟を評価する医療区分には「治療効果が報酬に反映されない」などの問題点

療養病棟入院基本料は、3つの医療区分と3つのADL区分のマトリックスにより点数設定がなされています。

このうち医療区分は、疾患(難病や肺炎、尿路感染症など)と処置(中心静脈栄養、人工呼吸器、透析など)とが混在。また疾患の中には「難病や脳梗塞など、改善が困難で『悪化させない』ことを主目的とする疾患」と「糖尿病や脱水、貧血、腎不全など改善可能で『軽快・改善させる』ことを主目的とする疾患」とが混在し、多くの患者が「複数の疾患を併発している」(脳梗塞でありながら貧血・脱状状態にもあるなど)状態にあります。

療養病棟入院基本料(その1)

療養病棟入院基本料(その2)



このため、現在の医療区分に基づく報酬体系下では、次のような不都合が生じてしまうのです。

▽例えば「中心静脈栄養」を実施している患者は医療区分3に該当し、高点数を算定できるが、「中心静脈からの離脱」を実現でき、他に医療区分3に該当しなければ、医療区分2・1の低い点数を算定することになる
→状態を改善させると、点数(=収益)が下がってしまう

▽「脊髄損傷」(医療区分2)と「尿路感染症」(医療区分2)を併発する患者について、尿路感染症治療を終えた後は、「脊髄損傷」のみで医療区分2と評価される
→状態を改善させたが点数(=収益)は変わらず、「アウトカム」が目に見えない(評価されない)。

▽「透析」(医療区分1)と「尿路感染症」(医療区分2)を平h津する患者について、尿路感染症治療を終えた後は、「透析」のみで医療区分1と評価される
→状態を改善させると、点数(=収益)が下がってしまう

また、療養病棟入院基本料1には「医療区分2・3の患者割合が80%以上」、療養病棟入院基本料2には「医療区分2・3の患者割合が50%以上」との施設基準が設定されており、効果的な治療を行い「医療区分2・3の患者を、医療区分1に改善させる」と施設基準クリアが厳しくなります。

さらに、改善効果(=アウトカム)が「見えない」という問題点もあり、これは医療従事者のモチベーションにも深刻な影響を及ぼしかねません。

このため日慢協は、かねてより「慢性期DPC」の構築・報酬化を目指した研究を続けています(関連記事はこちらこちら)。ただし、慢性期入院医療には▼複数疾患を併発している患者が多く、「最も医療資源を投入した傷病」を決定しにくい▼DPCは「傷病名→手術や処置」という流れでコードを決定するが、現在の医療区分には「傷病」と「処置等」が並列で評価されている—など「DPCに馴染みにくい」部分もあります。また、上述した「治る疾患・軽快を目的とする疾患」はDPCに馴染みやすいですが、「治らない疾患・悪化せない疾患」はDPCに馴染みにくいという側面もあります。

このため橋本会長と矢野副会長は「少し時間をかけて、慢性期DPCが好ましいのか、あるいは医療区分を改善する手法が好ましいのかなど、『療養病棟のあるべき評価体系』を研究・検討していく必要がある」「あわせて、各種のデータ(傷病、処置、資源投入量、治療成績など)を収集し、慢性期入院医療の臨床指標(CI、Clinical Indicator)構築していく」との考えを示しました。



もっとも、こうした研究を進め、それを診療報酬に実装するには時間がかかるでしょう。この間、上述した医療区分の問題点を放置することも好ましくありません。この点について橋本会長は「医療資源投入量に応じた診療報酬設定を行うために、『出来高評価』あるいは『対象疾患の明確化による報酬設定』を検討するべき」とも提案しています。これは「将来の報酬体系」が固められるまでの「過渡的な報酬」という位置づけと言えるでしょう。

将来の診療報酬改定を念頭においた研究・検討が進められますが、今春(2023年春)頃から本格化する「2024年度の次期診療報酬・介護報酬同時改定」論議にも注目が集まります。



このほか橋本会長は、▼世間一般では新型コロナウイルス感染症の危機感が薄れているが、入院患者・施設入所者がコロナに罹患すれば「死亡」可能性が高く、医療現場では依然として強い危機感をもっている▼「コロナ補助金で病院経営は良好」と言われるが、回復期・慢性期の経営は非常に厳しい▼コロナ感染症は、インフルエンザと異なり「有効な治療薬・予防薬」が十分に開発されていない。そうした中で5類に移行させることにはリスクもある▼シームレスな医療・介護提供を実現するために、ケアマネジャーの医療知識向上を目指す研修に力を入れていく(ケアマネジャーが入退院支援にも積極的に関与する)—などの考えを明らかにしています。

1月12日の記者会見終了後、役員新年会で挨拶する橋本康子会長



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