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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

老健施設の「在宅復帰率向上」と「稼働率向上」とをどう実現するか、好事例を分析―日慢協

2019.10.11.(金)

 老人保健施設については、昨今の介護報酬改定で「在宅復帰」機能強化の方向が明確にされたが、「在宅復帰」を進めた場合、「ベッドの稼働率」が下がり経営が悪化してしまうことがある。このため「在宅復帰率を高めながら、稼働率の維持・向上も実現している」好事例を分析し、そのノウハウを情報提供していく―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長と田中志子常任理事(日慢協老健委員会委員長)は、10月10日の定例記者会見でこういった考えを明らかにしました。

 また日本長期急性期病床(LTAC)研究会が、来春に「地域病病連携推進機構」に改組され、より広範に「地域の病院間連携」を進めていくことも発表されました。

10月10日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

 

在宅復帰の推進で、稼働率が低下し経営が悪化してしまうケースも

 介護老人保健施設は、今や介護保険施設の1つとして要介護者の生活を支えています。しかし、そもそもは、従前の老人保健法で「病院と在宅との中間施設」、つまり「在宅復帰を目指す施設」という位置づけで成立しました。

こうした点を踏まえて2012年度の介護報酬改定において「在宅復帰に力を入れる老人保健施設の基本報酬を高く評価する」(在宅復帰率等に応じて▼基本報酬の高い「強化型」▼基本報酬はそのままに加算を算定できる「加算型」▼基本報酬がそのままの「従来型」—に区分)こととなりました。

2018年度改定では、さらにリハビリ提供機能(これも在宅復帰に向けた重要な要素である)なども勘案し、▼超強化型▼在宅強化型▼加算型▼基本型▼その他型―に細分化。報酬の高い「超強化型」や「在宅強化型」を目指すには、在宅復帰率を高めていくことが求められます。

しかし「在宅復帰率を高める」とは、すなわち「入所者を退所させる」ことにほかならず、何らの対策をしなければ「ベッドの稼働率」が落ち、経営の悪化を招いてしまいます。実際に、日慢協が会員の開設する老人保健施設を対象にアンケート調査を行ったところ「在宅復帰を進めたところ、ベッドの稼働率が下がり経営が悪化した」という声が出ています。

「介護の質」を高めたにもかかわらず、経営が悪化してしまったのでは、「良質な介護サービス」に向けたモチベーションが下がってしまい、最終的には要介護者・その家族が不利益を受けます。

そこで日慢協では、「在宅復帰率を高めながら、ベッド稼働率の維持・向上を実現している」老健施設、つまり好事例について分析等を行い、介護の質と経営の質を同時に向上させるためのノウハウを提供する方針を固めました。新規の入所者を確保するために、例えば近隣の病院や居宅サービス事業者等と連携を密にすることなどが想像されますが、具体的にどのように連携を密にしているのかなど、詳細な分析はこれからです。

なお、2018年度の診療報酬改定では、老人保健施設が「地域包括ケア病棟」の在宅復帰先から除外されたため、「地域包括ケア病棟からの退院患者」受け入れというルートが細くなったと考えられます。こうした中で、どのように「在宅復帰率を高めながら、ベッド稼働率の維持・向上を実現している」のか関心が高まります。

 
ちなみに田中常任理事は、日慢協会員の開設する老人保健施設について、例えば次のようなデータを提示しています(今年(2019年)7月1日の状況)。在宅復帰機能の強化に力を入れている施設の多いことが伺えます。

10月10日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事(老健委員会委員長)

 
【介護報酬の届け出】
▼超強化型:38.2%(老健施設全体では16.9%)▼在宅強化型:10.7%(同8.1%)▼加算型:31.3%(同33.7%)▼基本型:16.8%(同36.6%)▼その他型:0.8%(同4.8%)―という具合に「在宅復帰機能を強化した老人保健施設」が多い

【入所者数/入所定員数(1日の稼働状況)】
▼95%以上100%以下:会員施設の45.0%▼90%以上95%未満:同24.8%▼85%以上90%未満:同15.5%▼80%以上85%未満:同7.0%▼75%以上80%未満:同3.1%▼70%以上75%未満:同1.6%▼65%以上70%未満:同2.3%▼60%以上65%未満:同0.8%―で、平均92.2%

【3年前と比較した稼働率の推移】
▼高くなった:27.2%▼1%未満で大きな変動なし:35.2%▼低くなった:37.6%―

【在宅復帰率】
▼50%超(在宅復帰・在宅療養支援等指標20点、他との合計で70点以上でなければ超強化型になれない):会員施設の38.3%▼30%超(指標10点):同29.7%▼30%以下(指標ゼロ点):32.0%―

【ベッド回転率】
▼10%以上(指標20点):会員施設の57.0%▼5%以上(指標10点):34.4%▼5%未満(指標ゼロ点):8.6%―

【入所前後訪問指導割合】
▼30%以上(指標10点):会員施設の60.2%▼10%以上(指標5点):21.1%▼10%未満(指標ゼロ点):18.8%―

【退所前後訪問指導割合】
▼30%以上(指標10点):会員施設の85.2%▼10%以上(指標5点):4.7%▼10%未満(指標ゼロ点):10.2%―

【在宅復帰・在宅療養支援等指標合計】
▼80点以上90点以下(90点が上限):会員施設の18.8%▼70点以上80点未満:同26.6%▼60点以上70点未満:同10.9%▼50点以上60点未満:同11.7%▼40点以上50点未満:同15.6%▼30点以上40点未満:同9.4%▼20点以上30点未満:同6.3%▼10点以上20点未満:同0.0%▼0点以上10点未満:同0.8%―で、平均60.5点(60点以上でなければ強化型になれない)

2018年度介護報酬改定で、介護老人保健施設には在宅復帰機能に関するポイント制が導入された(日慢協会見 191010)

 

LTAC研究会、来春に「地域病病連携推進機構」に改組

 また、10月10日の記者会見では、日本長期急性期病床(LTAC)研究会が、来春に「地域病病連携推進機構」に改組されることも明らかにされました。

 引き続き会長を務める予定の上西紀夫会長(公立昭和病院院長)は、「地域において急性期と回復期・慢性期との連携はまだ十分には進んでいない。当院の所在する北多摩北部2次医療圏(東京都小平市、東村山市など)では、42病院・6市医師会が参画する病院連絡協議会を開催。単なる顔合わせに終わらせず、看護師やMSWなども含めた連携職種が、例えば『回復期・慢性期の病院では●●状態の患者も受け入れられる』などの情報交換をすることで、急性期は回復期・慢性期側の、回復期・慢性期は急性期側の状況を理解し、地域医療連携の実効性が高まっている」と述べ、「地域病病連携推進機構」で機能の垣根を超えた病病連携を推進する考えを強調しています。

10月10日の定例記者会見に臨んだ、長期急性期病床(LTAC)研究会の上西紀夫会長

 
 
 
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