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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

地域包括ケア病棟の在宅復帰先から老健施設を除外、ベッド稼働率が如実に悪化―日慢協・武久会長

2018.8.10.(金)

 2018年度の診療報酬改定で、地域包括ケア病棟からの「在宅復帰先」として指定介護老人保健施設(老健施設)が除外されるなどの見直しが行われた。老健施設では、在宅強化型が超強化型でも経営が厳しくなっており、とくに「地方で開設する単独型」の老健施設は非常に厳しい。制度的な手当てを考えていく必要がある―。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、8月9日の定例記者会見でこう訴えました。

8月9日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

8月9日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

 

地方・単独型の老健施設でとくに経営が悪化、2021年度の介護報酬改定で手当てを

冒頭に述べたように、2018年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟の「在宅復帰」先から老健施設が除外されました。これは、「病院から老健施設へ」という患者の流れを変える恐れがあり、現場からは「病院から入所者(退院患者)が来なくなってしまった。一方で、在宅復帰には力を入れなければならず、ベッドの稼働率が低下し、経営が厳しくなっている」との悲鳴が上がっているといいます。

少し分解して整理してみましょう。

老健施設は、もととも1986年に「病院と自宅との中間施設」として設置され、2000年度から介護保険施設の1つに位置付けられています。老健施設に入所する前の居場所、つまり「入所者は、どこから老健施設に来ているのか」を見ると、強化型では▼自宅等51.7%▼医療施設43.0%―、加算型では▼自宅等39.1%▼医療施設56.0%―、従来型では▼自宅等29.3%▼医療施設65.1%―という状況で、「医療施設(病院や診療所)からの入所者」が相当部分を占めていることが分かります。

老健施設の入所者の相当部分は医療施設からの退院患者(水色部分)で占められている

老健施設の入所者の相当部分は医療施設からの退院患者(水色部分)で占められている

 
しかし、2018年度改定で地域包括ケア病棟からの「在宅復帰」先から外れた(従前は後述する強化型・加算型は在宅復帰先にカウントされていた)ため(関連記事はこちらこちら)、在宅復帰率を確保したい病院は、患者の退院先を「老健施設以外」にシフトすると考えられます。これは、老健施設サイドからみると「新規入所者の供給が大きく減少する」ことを意味します。
2018年度の診療報酬改定で、地域包括ケア病棟の在宅復帰先から老健施設(強化型・加算型であっても)は除外された(上段)

2018年度の診療報酬改定で、地域包括ケア病棟の在宅復帰先から老健施設(強化型・加算型であっても)は除外された(上段)

一方、老健施設は、そもそもの成り立ちが「中間施設」、つまり「在宅復帰を目指す施設」という位置づけであることを踏まえ、前回の同時改定(2012年度改定)で「在宅復帰に力を入れる施設の基本報酬を高く評価する」(在宅復帰率等に応じて▼基本報酬の高い「強化型」▼基本報酬はそのままに加算を算定できる「加算型」▼基本報酬がそのままの「従来型」—に区分)こととなりました。2018年度改定では、さらにリハビリ提供機能(これも在宅復帰に向けた重要な要素である)なども勘案し、▼超強化型▼在宅強化型▼加算型▼基本型▼その他型―に細分化。報酬の高い「超強化型」や「在宅強化型」を目指すには、在宅復帰率を高めていくことが求められます。

2018年度の介護報酬改定において、老健施設は在宅復帰率や機能に応じて細分化された

2018年度の介護報酬改定において、老健施設は在宅復帰率や機能に応じて細分化された

 
もっとも「在宅復帰率を高める」ことは「入所者を減らす」ことにつながり、これは「収益の悪化」を意味します。単純な在宅復帰率の向上は経営悪化を招いてしまうのです。

したがって、メディ・ウォッチでもたびたびお伝えしていますが、「在宅復帰率の向上」を進める(病院では平均在院日数の短縮)と同時に、「新規入所者の獲得」策を強化しなければならないのです。しかし、前述のように「新規入所者の獲得が難しい」ため、老健施設の多くで「経営悪化」が指摘されているのです。

 
この点について、日慢協が会員施設を対象に調査を行ったところ(150施設、定員1万3364人)、次のように「非常に厳しい経営状況にある老健施設が多い」ことが分かりました。

▽2015年度時点と比べて、全体では39.8%でベッドの稼働率が落ちている(▼超強化型:23.0%▼在宅強化型:50.0%▼加算型:50.0%▼基本型:34.2%▼その他型:60.0%▼介護療養型(転換型):50.0%—)

▽2013年度時点と比べて、全体では46.1%で収支が悪化している(▼超強化型:31.6%▼在宅強化型:100.0%▼加算型:48.1%▼基本型:50.0%▼その他型:0.0%▼介護療養型(転換型):50.0%—)

 
日慢協会員の開設する老健施設には、「職員配置(とくにリハビリスタッフ)が手厚い」「在宅復帰率が高い」といった特徴がありますが、それでも経営が悪化しています。とくに強化型では、「老健施設が在宅復帰先としてカウントされなくなり、稼働が悪化している」状況のようです。また、介護報酬(基本報酬)を2012年度と2018年度で比較すると、超強化型以外は低下しており、これも経営悪化に追い打ちをかけていると日慢協は分析しています。

武久会長は、「都市部に設置していたり、病院に併設している老健施設ではまだしも、地方に設置する、単独型の老健施設では経営が非常に厳しくなっている。老健施設は37万床あり、『病院に併設しているか否か』『他の介護施設(特養ホーム等)に併設しているか否か』『設置の地域(都市部か、地方部か)』などの違いから、一律に考えることは難しいのではないか。地方で、質の高いサービスを提供する単独型の老健施設でも、適切に運営できるようにする必要がある」と強調し、2021年度に予定される次期介護報酬改定に向けて調査・分析を深めていく考えを述べています。

 
 
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