療養病床の入院患者に居住費相当の自己負担を求めるのは「理由なき差別」―日慢協・武久会長
2017.11.10.(金)
療養病床に入院する患者にのみ居住費相当の負担を求めるのは、一般病床と療養病床における「理由なき差別措置」で、直ちに是正すべき―。
日本慢性期医療協会(日慢協)の武久洋三会長は11月9日に開いた定例記者会見で、このようなことを主張し、ルール変更を求めていく方針を示しました。
さらに来年4月からは、医療の必要性が高い状態(医療区分3か2)の患者も1日370円を原則負担することが決まっています。医療区分3には、医師などの監視・管理が24時間体制で必要な状態の患者など、医療区分2には、がんで疼痛コントロールを必要とする患者などが当てはまります。それらの患者は、今年9月まで負担を免除されていましたが、10月からは1日200円を支払っています。
日慢協がおかしいと主張するのは、医療法上の区分が療養病床なら入院患者に負担させ、一般病床などなら免除する点です。その結果、患者が入院したのが同じ地域包括ケア病棟でも、医療法上の区分によってルールの適用が変わってしまうと問題視しています。また、療養病床と同じように患者を長期間入院させる一般病床があるにもかかわらず、このルールが適用されていないことも「理不尽だ」と訴えています。
どうしてルールの適用が、医療法上の区分によって変わるのでしょうか。まず医療保険では、病気やけがで入院した患者の食事・居住サービスは、医学的管理の下に保障する必要があることから、保険給付の対象だと位置付けられています(介護保険では給付対象外)。
とはいえ食費や居住費は、入院せずに自宅で療養したとしても掛かります。そこで、それぞれに相当する金額を患者が自分で負担するルールが設けられています。
食費に相当する金額は、入院患者なら誰でも原則負担しています。その一方で居住費に相当する金額は、「住まい」としての機能を持つ病床の入院患者からだけ徴収しようということになり、療養病床だけに適用するルールになったのです。
しかし日慢協は、療養病床の中には「住まい」としての機能ではなく、治療やリハビリテーションなどの機能が主なものもあると主張してきており、そうした病床には現在、最長でも60日間の入院で患者を在宅復帰させる地域包括ケア病棟としての届け出が認められています。
実際には、地域包括ケア病棟の多くは一般病床で届け出されていますが、療養病床で届け出るケースもあります。日慢協の武久会長は、一般病床でも療養病床でも、地域包括ケア病棟として果たす役割は同じはずなのに、療養病床の場合にだけ居住費相当の自己負担を求めるのは「おかしな理屈だ」と疑問を投げ掛けています。
さらに療養病棟の中でも、入院患者に占める医療区分2・3の人の割合が80%以上(療養病棟入院基本料1の施設基準)の病棟では、重症な患者が入院して治療を受けていると指摘し、「重度な患者が入院している病棟」や「入院期間が短い病棟」は、居住費相当の自己負担を求めるルールから外してほしいと話しています。
その一方で、一般病棟でも患者を長期間入院させ、その代わりに療養病棟と同じルールで診療報酬を受けているケースなどには、自己負担のルールが適用されていないと指摘し、「統一してほしい」と訴えています。
また池端幸彦副会長は、患者が負担した金額が「病院の収入になると誤解する人もいる」と話し、患者側に自己負担への理解を求めることが、医療現場の業務負担になっていることも問題だと指摘しています。
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