病棟看護師の大半は薬剤師などの病棟配置に期待、入院基本料での評価が必要—日慢協・武久会長
2017.6.26.(月)
病棟に勤務する看護師の大半は、介護福祉士や薬剤師、リハビリ専門職、歯科衛生士などの病棟配置を望んでいる。入院基本料の評価は看護師配置数だけでなく、さまざまなメディカル・スタッフ(コ・メディカル)の配置をも勘案して行うべきである—。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、22日の定例記者会見で改めてこのように強調しました。
また武久会長は、高齢者の肺炎は病原菌の感染だけでなく、嚥下機能の低下や低栄養・脱水などさまざまな要素が関係していることから、総合的な対応によって「高齢者であっても肺炎治療を行うべきである」と強く訴えました。
目次
病棟看護師、84%は介護福祉士、79.8%は薬剤師の病棟配置に期待との調査結果
武久会長は、5月11日の前回会見で「入院基本料の評価に当たっては、看護師配置数だけでなく、さまざまなメディカル・スタッフの配置をも勘案すべき」と訴えました、例えば7対1入院基本料や10対1入院基本料において「50名の看護師配置が必要」となる病院であれば、50名全員を看護師とするだけでなく、40名を看護師、10名分を薬剤師や介護福祉士などとすべき、との見解です(関連記事はこちら)。
日慢協では、この考え方が現場の病棟看護師にどう受け止められるかを緊急調査。日慢協会員病院で、病棟に勤務する看護師6000名弱(平均勤続年数16.1年、勤続11-30年のベテラン看護師が過半数)を対象に「どのような職種に、病棟で一緒に働いてもらいたいか」(病棟配置への希望)をアンケート調査しました。
その結果、全体では▼介護福祉士では、全体の84.0%が病棟配置を希望▼薬剤師79.8%▼理学療法士79.3%▼作業療法士76.7%▼歯科衛生士74.1%▼言語聴覚士73.8%▼社会福祉士73.0%▼管理栄養士71.4%▼臨床検査技師59.3%—と、大多数の看護師が病棟におけるメディカル・スタッフ配置を希望していることが判明。また、病棟の種類によっては、より介護福祉士やリハビリ専門職配置を希望していることも分かりました。
武久は、この結果を見て「正直びっくりした。例えば介護福祉士は、現在、診療報酬上は看護助手としてしかカウントされないが、現場の看護師は高く評価していることが分かった」とコメント。改めて「入院基本料の評価は看護師配置数だけでなく、さまざまなメディカル・スタッフ(コ・メディカル)の配置をも勘案して行うべきである」と強調しています。2018年度の次期診療報酬改定に向けて提言を行う考えです。
高齢者の肺炎、抗菌剤投与と同時に水分・栄養補給や嚥下訓練を行うことが重要
ところで日本呼吸器学会は、今年(2017年)4月21日に、「寝たきりやサルコペニアのある高齢肺炎患者では、抗菌剤(抗生物質)投与が必ずしも生命予後を改善するとは限らない」「抗菌剤投与でQOLが低下するケースもある」ことから、高齢者の肺炎において「必ずしも抗菌剤使用を推奨しない」旨の見解を示しています。
この点について武久会長は、「高齢者の肺炎治療は、抗菌剤投与だけでなく、水分・栄養補給や嚥下機能訓練を同時並行しなければならない。大学病院で臓器別専門医が、抗菌剤投与のみを行い、『治療効果が上がらないので、最初から抗菌剤治療を行わない』とするのは乱暴である」と批判。
さらに日慢協会員病院の高齢肺炎患者において、治癒し在宅復帰した患者と死亡退院した患者とでは、前者(治癒した患者)のほうが「栄養状態が良好(アルブミン値が高い)で、水分状態も良好(尿素窒素値が低い)である」といったデータも提示。武久会長は「必ずしも十分なN数ではない」と前置きを置いた上で、「高齢者であっても総合的な治療を行えば肺炎は治る」と指摘しています(関連記事はこちら)。
医療保険・提供体制の両面で、都道府県の役割がさらに重要に—厚労省の眞鍋企画官
また定例記者会見に先立って実施された日慢協総会では、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨企画官から「社会保障の持続可能性」についての講演が行われました。
眞鍋企画官は、我が国の社会保障創設からの歴史を紐解いた上で、社会保険(自助、共助、公助のうちの「共助」に該当)、特に医療・介護には、▼質▼効率性▼透明性▼持続可能性—の評価軸があり、このうちの「持続可能性」に課題がある点を強調。政府をあげて改革に取り組んでいることを説明しました。
さらに2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定が控えていますが、同時に「国民健康保険の財政責任主体が都道府県に移管する」点が極めて重要と眞鍋企画官は指摘(さらに新たな医療費適正化計画も都道府県が作成)。「言ってみれば、財布を握る主体が、計画(医療計画など)を作ることになる。各病院の機能や考え方を都道府県に理解してもらうことが、より重要になるのではないか」と述べ、各病院がこれまで以上に都道府県と情報共有を行うことを推奨しました。具体的には、▼地域の医療ニーズと、自院の機能、立ち位置、さらに施策などの情報を共有する▼数年後の病院の建て替えや改修を考えているのであれば、早めに都道府県と協議し、調整する—ことなどが必要ではないかと指摘しています(関連記事は こちらと こちらと こちらとこちら)。
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