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2018年の国保都道府県化や診療報酬改定など「惑星直列」に向け、2017年が重要―厚労省・鈴木保険局長

2017.1.20.(金)

 お伝えしているとおり、厚生労働省は19、20に2日間にわたって全国厚生労働関係部局長会議を開催しました(厚労省のサイトはこちら)。

 2017年度の重要事項を都道府県の保健福祉担当者に詳しく紹介するもので、保険局の重要事項については、厚生労働省保険局の鈴木康裕局長が大枠を、担当課長が詳細を説明しています。

1月19日に開催された全国厚生労働関係部局長会議で厚生労働省保険局の施策について説明した、鈴木康裕局長

1月19日に開催された全国厚生労働関係部局長会議で厚生労働省保険局の施策について説明した、鈴木康裕局長

低所得者に配慮した上で、世代間・世代内の負担の公平化を図る

 鈴木保険局長は冒頭、「来年(2018年)には、▼国民健康保険の財政都道府県単位化▼新たな医療費適正化計画の実施▼診療報酬改定(介護報酬との同時改定)―などが控えており、我々はこれを『惑星直列』と呼んでいる。こうした制度に向けて、今年(2017年)は非常に重要な年になる。都道府県担当者と意思を1つにして向かっていきたい」と述べ、協力を求めました。

 保険局の2017年重要事項としては、(1)医療保険制度改革(2)国民健康保険制度改革(3)薬価改革(4)療養費制度改革―などがあげられますが、鈴木保険局長は「2025年にはいわゆる団塊の世代がすべて75際以上になる。それまでに、なんとかして高齢で要介護度が高くなっても住み慣れた地域で暮らせるように、また保険制度が持続可能となる仕組みを創る必要がある」とも強調しています。

 

 (1)の医療保険制度改革の内容は多岐にわたりますが、まず「70歳以上高齢者の高額療養費の見直し」が注目されます。鈴木保険局長は「低所得者に配慮した上で、『世代間、世代内の公平性』を確保するための見直しである」ことを指摘(関連記事はこちらこちら)。

 詳細については、厚労省保険局総務課の城克文課長から、▼高額所得者(現役並み所得者)について70歳未満と同様に「所得に応じた3区分」とし、それぞれで月額上限を設定する▼一般区分の所得者について月額上限を見直して多数回該当を創設、さらに外来特例を引き上げる(ただい年間上限を設定する)▼低所得者の負担上限は現行を維持する―といった点が説明されました。

 なお急激な負担増を避けるために、「今年(2017年)8月から」と「来年(2018年)8月から」の2段階に分けて引き上げが行われます。

高額療養費制度の見直し概要

高額療養費制度の見直し概要

 

 また医療療養病床に入院する65歳以上の高齢者について、「居住費負担」(光熱水費相当)の見直しが行われます。

 すでに居住費負担(1日当たり320円)が設定されている「医療区分1」の入院患者については、「介護保険施設の多床室に入所する低所得者において、家計調査踏まえて居住費負担が2015年4月から370円に引き上げられた」ことを踏まえて、今年(2017年)10月から「1日当たり370円」に引き上げられます。城総務課長は「介護保険施設入所者とのバランス」を指摘しています。

 また、これまでに居住費負担のなかった「医療区分2・3」の入院患者については、▽今年(2017年)10月から1日当たり200円▽来年(2018年)4月から1日当たり370円―の居住費負担を求めることになります。

 ただし難病患者では、居住費負担は求められません。

医療療養に入院する65歳以上・医療区分1の患者について光熱水費負担を引き上げるとともに、65歳以上・医療区分2・3の患者にも新たに光熱水費負担を求めることが提案されている

医療療養に入院する65歳以上・医療区分1の患者について光熱水費負担を引き上げるとともに、65歳以上・医療区分2・3の患者にも新たに光熱水費負担を求めることが提案されている

子ども医療費減額に伴う「国保国庫負担の減額」、2018年度から見直し

 (2)の国保改革のうち、子ども医療費を減額した場合の「国庫負担減額措置」が見直しされます。

 市町村が独自の判断で「子どもの医療費自己負担」を減額(償還払いは除く)した場合、医療費が通常の範囲を超えて増加することが経験的に分かっています(長瀬効果)。厚労省は「市町村独自の判断で医療費膨張を招き、これを国民全体で負担することは好ましくない」として、現在、こうした独自の子ども医療費減額を行っている市町村国保について国庫負担金の減額を行っています(医療費の増加分は市町村が負担する)。しかし、市町村などからは「子どもの医療費助成は少子化対策の一環であり、国庫負担の減額は行うべきでない」との批判が出ていました。

子ども医療費の助成状況。未就学児については、入院・外来ともにすべての市町村で何らかの医療費助成が行われている。

子ども医療費の助成状況。未就学児については、入院・外来ともにすべての市町村で何らかの医療費助成が行われている。

 鈴木保険局長と厚労省保険局国民健康保険課の榎本健太郎課長は「自治体の指摘や、審議会(社会保障審議会・医療保険部会)の議論を踏まえ、2018年度から『未就学児』を対象にとした医療費助成については国庫負担金の減額を行わない」取り扱いとしたことを説明しました。

 なおこの取り扱いにより市町村では「財源が浮く」ことになりますが、鈴木保険局長は「浮いた財源は子育て支援に使ってほしい」と要望。また榎本国保課長は「財源の使途について、2018年度に詳細調査を行う予定である」ことを明らかにしています。

薬価制度、皆保険の維持やイノベーション推進などの4原則に沿って抜本改革

 (3)の薬価制度については、昨年(2016年)末に抜本改革の基本方針が、塩崎厚生労働大臣や麻生太郎財務大臣らによって定められ、今年(2017年)から具体的な改革内容が中央社会保険医療協議会で議論されています(関連記事はこちらこちら)。

 鈴木局長は、抜本改革の4原則として▼国民皆保険の持続性▼イノベーションの推進▼国民負担の軽減▼医療の質の向上―をあげ、この原則に則って具体案を議論してもらう考えを強調しました。

 また厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、都道府県担当者に対し「医療機関などにも影響する事項であり、薬価制度抜本改革の全体像を把握しておいてほしい」と要望しています。

 抜本改革の柱は次の3本で、このほかに「薬価算定方式の透明化」や「流通の効率化」なども検討することになっています。

(1)保険収載後の状況の変化に対応できるよう、効能追加などに伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するため、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す

(2)市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う。そのため、薬価調査(2年に一度)の中間年においても大手医薬品卸業者などを対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目(詳細は2017年中に中央社会保険医療協議会で検討)について薬価改定を行う。また薬価調査の結果の正確性や調査手法などを検証し、それらを踏まえて薬価調査事態の見直しを検討し、2017年中に結論を得る

(3)革新的新薬創出の促進に向け、▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度のゼロベースでの抜本的見直し▼費用対効果評価の本格的導入(費用対効果の高い薬は薬価引き上げを含めて)―などにより、真に有効な医薬品を適切に見極めて、イノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図る

塩崎恭久厚生労働大臣を始めとする4大臣(財務、官房長官、内閣府特命担当)会合で12月20日に決定された、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針

塩崎恭久厚生労働大臣を始めとする4大臣(財務、官房長官、内閣府特命担当)会合で12月20日に決定された、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針

  
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