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薬価の毎年改定方針を決定、DPC点数表も毎年改定へ―厚労省

2016.12.20.(火)

 現在、2年に一度行われている薬価調査に加え、中間年に「大手医薬品卸事業者などを対象とした調査」を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う。つまり、「毎年の薬価改定」を行う―。

 こういった「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」が20日、塩崎恭久厚生労働大臣、麻生太郎財務大臣、菅義偉内閣官房長官、石原伸晃内閣府特命担当大臣の4大臣会合で確認されました。近く開かれる経済財政諮問会議に報告されます。

 薬価が毎年改定されることに伴い、DPCの包括点数についても毎年何らかの見直しを行わざるを得ないことになります。さらに、イノベーションの評価に向けて費用対効果評価の導入を本格化させる方針も確認されています。

12月20日の閣議後に4大臣会合で薬価制度抜本改革の基本方針を確認、決定。その旨を説明する塩崎恭久厚生労働大臣

12月20日の閣議後に4大臣会合で薬価制度抜本改革の基本方針を確認、決定。その旨を説明する塩崎恭久厚生労働大臣

薬価の毎年改定(引き下げ)に合わせて、DPC包括点数も見直さざるを得ない

 オプジーボのような極めて高額な薬剤が開発され、新たな医療技術に国民がアクセスできるという点では喜ばしいものの、社会保障財政の面からは「医療費の高騰につながる」という問題もあります。そこで安倍晋三内閣総理大臣は「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を経済財政諮問会議で策定する」ことを指示。上記4大臣で具体的な方針を検討しており(関連記事はこちらこちら)、20日の閣議後に次のような方針を確認、決定しました。

 方針策定に当たって塩崎厚労相は、「『国民皆保険の持続性』『イノベーションの推進』を両立しながら、『国民負担の軽減』と『医療の質の向上』を実現する観点から、基本方針に基づいて薬価制度抜本改革に取り組む」との基本的な考え方(4原則)を強調しています。

【薬価制度の抜本改革】

(1)保険収載後の状況の変化に対応できるよう、効能追加などに伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するため、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す

(2)市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う。そのため、薬価調査(2年に一度)の中間年においても大手医薬品卸業者などを対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目(詳細は2017年中に中央社会保険医療協議会で検討)について薬価改定を行う。また薬価調査の結果の正確性や調査手法などを検証し、それらを踏まえて薬価調査事態の見直しを検討し、2017年中に結論を得る

(3)革新的新薬創出の促進に向け、▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度のゼロベースでの抜本的見直し▼費用対効果評価の本格的導入(費用対効果の高い薬は薬価引き上げを含めて)―などにより、真に有効な医薬品を適切に見極めて、イノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図る

 (1)は、オプジーボのように「効能効果追加などで市場が大幅に拡大したにも関わらず、長期間、高額な薬価が維持される」という事態を防ぐ仕組みです。厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は「2017年度中の実施を目指している」とコメントしており、2018年度を待たずに何らかの薬価制度改革などが行われる見込みです。

 (2)は「全品目を対象に薬価調査を行い、市場実勢価格と薬価との間の乖離率が大きな場合には薬価を引き下げる」というものです。2年に一度の薬価改定も「乖離率の大きなものについて薬価を引き下げる」という仕組みであることを考えれば、「全品目を対象とした薬価改定を毎年行う」ことになるでしょう。2017年中に具体的なルールを固め、▼2017年に通常の薬価調査を行い、18年度に薬価改定▼2018年度に大手卸を対象とした調査を行い、19年度に薬価改定▼2019年度に通常の薬価調査(透明性などを改善)を来ない、20年度に薬価改定▼2020年度に大手卸を対象とした調査を行い、21年度に薬価改定―といった流れで進むことになりますが、「大手卸を対象にした調査をどのように行うのか」「薬価引き下げの対象をどの程度にするのか」などは、今後、中医協での議論を待つ必要があり、厚労省医政局経済課の大西友弘課長は「詳細は未定である」と述べるにとどめています(関連記事はこちら)。

 なお、薬価が毎年改定された場合、薬剤を包括評価しているDPCの包括点数などに影響は出るのでしょうか。この点について厚労省保険局医療課の迫井正深課長は「DPC包括点数の計算方法や、現場での対応などは、別のプロセスで事務的に検討する必要がある。薬価改定に伴って、実務面にどのような影響が出るのかも整理していく」との考えを示しており、DPC点数も毎年改定される可能性が濃厚です(関連記事はこちら)。

 (3)のうち「費用対効果評価」に関しては、一部の医薬品(オプジーボやソバルディ・ハーボニーなど)・医療機器(胸部大動脈瘤の治療に用いるカワスミNajuta胸部シテントグラフトシステムなど)を対象に、2018年度から試行導入することになっています。しかし、基本方針では「本格導入」と明記されていることから、迫井医療課長は「対象品目なども含めて、従来のスケジュール(18年度からの試行導入など)を再点検する」との見解を明らかにしています。一気に、費用対効果評価の導入が進むと予想されますが、患者を含めた関係者にデメリットが生じないよう、十分な検討を期待したいところです(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

 また迫井医療課長は「薬価改革と明記されているが、フィロソフィ(上記の4原則)は医療機器や医療技術についても同様に当てはまるので、どのように反映させるのか中医協で議論してもらう」との考えも示しました。

薬価制度の抜本改革や、新医療技術の迅速提供方策などを検討

 4大臣は、上記の薬価制度改革に合わせて、次のような【今後の取り組み】を行うことも確認、決定しています。

(1)薬価算定方式の正確性・透明性の徹底(製薬企業にとって機密性の高い情報に配慮しつつ、薬価算定の根拠の明確化・薬価算定プロセスの透明性向上を検討し、結論を得る。また、特に高額医薬品などについて制度の差異を踏まえつつ外国価格調整の方法の改善(より正確な外国価格把握など)を検討し、結論を得る

(2)薬価制度改革で影響を受ける関係者の経営実態について機動的に把握し、その結果を踏まえ、必要に応じて対応を検討し、結論を得る

(3)我が国の製薬産業について「長期収載品に異存するモデル」から「より高い創薬力を持つ産業構造」へ転換するため、革新的バイオ医薬品およびバイオシミラー(バイオ後続品)の研究開発支援方策などの拡充を検討するとともに、ベンチャー企業への支援、後発品企業の市場での競争促進を検討し、結論を得る

(4)安定的な医薬品流通の確保(流通改善の推進、市場環境に伴う収益構造への適切な対処を進める。特に適切な価格形成促進のため、単品単価契約の推進と早期妥結の促進に効果的な施策を検討し、結論を得る)

(5)評価の確立した新たな医療技術について、費用対効果を踏まえつつ、国民に迅速に提供するための方策のあり方を検討し、結論を得る

 これらは、上記の薬価制度改革で一定の打撃を受ける製薬メーカーや卸業者、薬局・薬剤師、医療機関などに一定の配慮をするものと見ることもできそうです。塩崎厚労相は「4原則を基本に据えた上で、関係者の意見をしっかり聞き、1年かけて薬価制度改革の具体案を策定していく」考えを強調しています(関連記事はこちら)。

 
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