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高額医薬品の効能追加、期中の薬価改定も検討すべき―中医協総会で委員から提案

2016.4.13.(水)

 高額な医薬品の薬価を巡り、13日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、診療側・支払側の双方から「薬価制度の根本的な見直しが必要ではないか」との指摘が出されました。例えば「高額な医薬品について、効能・効果が追加され対象患者数が増加した場合には、期中でも薬価改定をすべき」「薬事承認された効能・効果の一部だけを保険適用するルールも考慮すべき」といった提案が出されています。

 今後、中医協を中心に「高額な医薬品の薬価算定ルール」に関する議論が行われる見込みです。

4月13日に開催された、「第330回 中央社会保険医療協議会 総会」

4月13日に開催された、「第330回 中央社会保険医療協議会 総会」

オプジーボやハーボニーなど高額薬剤の開発続き、中医協委員の問題意識高まる

 2014年9月に「根治切除不能な悪性黒色腫用薬」として薬価収載された「ニボルマブ製剤」(オプジーボ点滴静注)は、20mgでは15万200円、100mgでは72万9849円という高額な薬価が設定されました。

 また昨年8月にC型肝炎治療薬として薬価収載された「レジパスビル アセトン付加物/ソホスブビル」(ハーボニー配合錠)は、1錠当たり8万171円30銭という高額な薬価設定が行われました(その後、市場拡大再算定により引き下げ)(関連記事はこちらこちら)。

 このような高額な医薬品は今後も上市されると見込まれていますが、「医療保険の継続」という観点から見て、どのように薬価を考えていくべきかという重要課題があります。

 13日の中医協総会では、高脂血症用剤(注射薬)として「エボロクマブ(遺伝子組換え)」(レパーサ皮下注)の薬価収載が承認されました(収載は4月20日予定)が、14mg1ml1筒で2万2948円という高額な薬価を巡り、委員からさまざまな指摘・提案がなされました。互いに強く関連しますが、便宜上、次の2点に分けて考えてみましょう。

今般薬価収載が承認された(収載は4月20日予定)高脂血症用剤のエボロクマブ(レパーサ皮下注)では、140mg「2万2948円」という高額な薬価が設定された

今般薬価収載が承認された(収載は4月20日予定)高脂血症用剤のエボロクマブ(レパーサ皮下注)では、140mg「2万2948円」という高額な薬価が設定された

(1)薬事承認と保険収載(薬価収載)の関係

(2)薬価設定方法

薬事承認された効能・効果の一部のみを保険収載すべきか

 (1)の薬事承認と保険収載については、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)から、▽薬事承認においても医療経済的な視点からの審査を導入すべき▽事実上の「薬事承認=保険収載」となっている構図を見直すべき―という2つの問題提起が行われました。

 前者の承認について、厚労省保険局医療課の中井清人薬剤管理官から「現在、国際的な統一基準に基づいた審査が行われており、そこに特段の医療経済的な判断は行われていない」旨の説明がなされましたが、中川委員は「今後、高額医薬品の開発が進むと見込まれており、承認段階でも医療経済的な視点での審査が必要」と強く要望しました。中川委員は医薬品の審査・承認を行う薬事食品衛生審議会を「公開すべき」とも求めています。

 後者は、薬事承認された「効能・効果」と、保険償還が認められる「効能・効果」(つまり適応)との関係をどう考えるべきかというテーマです。

 前述の「エボロクマブ(遺伝子組換え)」(レパーサ皮下注)を例にとって考えてみましょう。本剤は、▽家族性高コレステロール血症▽高コレステロール血症(ただし、既存薬での効果が不十分な場合などの限定つき)―について効能・効果が認められ、保険償還も同様となります。しかし、中川委員は「家族性高コレステロール血症に限定して保険収載すべきではないか」と提案しました。

 現在でも「薬事承認された効能・効果の一部のみを保険収載する」ことも制度上は可能ですが、そうした運用はなされていません。その背景には、▽新薬開発の意欲を削ぐ可能性がある▽制度的な安定性を欠く―といった理由があります。

 例えば「レパーサは家族性高コレステロール血症についてのみ保険償還を認める。高コレステロール血症は、薬事承認を経て製造・販売は認めるが、保険償還は不可」というルールを設定するとして、「なぜ高コレステロール血症について保険償還は認められないのか」という疑問に現時点で明確な根拠のある回答はできません。このため厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「しっかりと根拠に基づいた議論をする必要がある」ことを強調し、まず厚労省内部で検討する考えを述べました。

 なお、この「根拠」の1つに、今年度(2016年度)から試行される「費用対効果評価」が該当すると考えられますが、明確な「根拠」になるまでには相当の時間(データ蓄積や分析など)が必要です。

 これらは「薬事承認」という厚労省医薬・生活衛生局の所掌事務ともからむため、どういった場で議論するべきかも含めた検討が必要となります。

高額薬剤の機能や効能に応じた、きめ細かなルール設定の提案

 (2)の薬価設定については、まさに中医協マターと言えます。ただし、診療側・支払側双方とも「高額な薬剤の薬価を単純に引き下げろ」という乱暴な主張はしていません。

 中川委員は、次のように高額薬剤を分類し、それぞれに合ったルールを議論すべき提案しています。

▽治癒を目指す高額薬剤(C型肝炎治療薬のソバルディやハーボニーなど):治癒により削減される「将来の医療費」も勘案したルール

▽長期間の投与が必要となる生活習慣病治療薬(今般、薬価収載されるエボロクマブなど):既存薬との比較を慎重に行い、安易な拡大は認めない

▽延命を可能とする高額薬剤(抗がん剤のオプジーボなど):国民的な慎重な議論が必要

高額薬剤の効能・効果追加、患者数拡大に応じて薬価を「期中」に改定すべきか

 また中川委員は「効能・効果が追加となった場合に、期中(2年毎の薬価改定の中間時点)での薬価見直しを行うべき」とも求めました。

 例えばオプジーボは、前述のように「根治切除不能な悪性黒色腫」(の治療薬として薬事承認・保険収載となりましたが、その後、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」への効能・効果も認められました。前者の「根治切除不能な悪性黒色腫」の推定対象患者数は470人でしたが、後者の「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の対象患者数は少なくとも5万人と見込まれています。中川委員は、「対象患者数が大幅に拡大されて、薬価も高額なままという仕組みはおかしい」と強く主張しています(関連記事はこちら

ニボルマブ製剤(最下段のオプジーボ)は、体重60kgの人に1年間投与すると、薬3500万円の薬剤費が発生する。旧来からある抗がん剤「イレッサ」や「アレセンサ」に比べて格段に高額である

ニボルマブ製剤(最下段のオプジーボ)は、体重60kgの人に1年間投与すると、薬3500万円の薬剤費が発生する。旧来からある抗がん剤「イレッサ」や「アレセンサ」に比べて格段に高額である

 この提案には、支払側の花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)や薬価算定組織の清野精彦委員長も同様の問題意識を持っていることを述べており、花井委員は「特に原価計算方式で薬価設定された場合には、ベースとなる市場が変わるので、期中の見直しをすべきである」と付言しています。

 ただし、期中に薬価が変更になれば、場合によってはDPCの点数にも影響が及ぶなど、診療報酬全体を見直す必要性も出てきます。さまざまな角度からの議論が必要でしょう。

 なお、中井薬剤管理官は「高額な薬剤には、バイオ医薬品など高コストなものが多く、単純な価格引き下げ議論はできない。こうした問題に薬価制度だけで対応できるのか、全体を見て検討する必要がある」とコメントしています。

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