介護給付費分科会に、療養病床特別部会の病院代表委員の参画を求める―日病協
2016.12.16.(金)
介護療養などからの新たな転換先となる「新介護保険施設」の詳細に関する議論が、今後、社会保障審議会の「介護給付費分科会」で行われるが、急性期病院にも関係の深い事項であり、「療養病床の在り方等に関する特別部会」の病院代表委員の審議への参画を要望していく―。
日本病院団体協議会(全日本病院協会や日本病院会、全国公私病院連盟など13の病院団体で構成)の神野正博議長(全日本病院協会副会長)は、16日に開かれた代表者会議終了後の記者会見でこのように強調しました。
また、一部の医薬品を除き「毎年の薬価改定」に反対である姿勢を改めて確認しています。
新たな介護保険施設の設備基準や報酬水準、急性期病院にも関係が深い
介護療養病床や看護配置4対1などの基準を満たさない医療療養病床について、2018年3月で設置根拠となる経過措置が切れるため、新たな転換先として「医療」「介護」「生活」の3つの機能を備えた「新たな介護保険施設」(新類型)を創設することが、社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」で決まりました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
厚生労働省は、今後、転換に向けた準備期間などを詰め、来年(2017年)の通常国会に介護保険法改正案を提出する構えです。ただし、具体的な施設基準や報酬水準などは、2018年度の介護報酬改定に向けて、社会保障審議会の「介護給付費分科会」で議論されることになっているため、特別部会では病院代表の立場で参画している西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)らから「新類型ヘ転換を迫られているのは病院である。介護給付費分科会に病院代表の委員を参加させるべき」との要望が出されていました。
16日の日病協代表者会議でもこの点が議題となり、神野議長は「少なくとも特別部会の病院代表委員が介護給付費分科会に委員として参画できるよう求めていく」という点で一致したことを報告しています。
特別部会に病院代表として参画していたのは、全日病の西澤副会長のほか、日本医療法人協会の加納繁照会長、日本慢性期医療協会の武久洋三会長、日本病院会の松本隆利理事の4氏です。神野議長は、「日慢協の武久会長がすでに介護給付費分科会に委員として参画しているが、急性期病院にとっても関係の深い事項であり、特別部会の病院代表メンバー全員が介護給付費分科会に委員として参画できるようにするのが筋であろう」と述べています。
今後、厚労省との調整が行われると思われますが、▼他のサービス関係団体の委員▼費用負担者側の委員―などとの人数バランスなど、さまざまな点も考慮しなければならず、難しい調整となりそうです。
最適使用推進GLで、必要以上に適応を絞るのはいかが
16日の代表者会議では「薬価制度改革」「2018年度診療報酬改定」についても議論が行われました。
前者の薬価制度改革については、安倍晋三首相から「抜本改革に向けた基本方針を年内に策定せよ」との指示が出されています。諮問会議の民間議員からは「全品目について毎年の薬価改定を行うべき」との要望が出ており、塩崎恭久厚生労働大臣は「市場実勢価格を迅速に把握し、少なくとも年1回薬価を見直す(調査方法に応じて、適切な引下げ幅を設定)」との方向性を示しています。近く、厚労・財務・内閣府特命大臣に内閣官房長官を加えた4大臣会合で基本方針が固められます(関連記事はこちら)。
この点について代表者会議では、改めて「オプジーボのような特別な事情があるものは別として、毎年の薬価改定には反対である」「医療全体を考える必要があり、薬価の改定だけが毎年行われるのは片手落ちである」といった点で意見が一致したことが、神野議長と原澤茂副議長(全国公私病院連盟常務理事)から明らかにされました。
なお、この点に関連して、中央社会保険医療協議会ではオプジーボとレパーサ(高コレステロール血症治療薬)について、設備の整った施設で、当該医薬品の投与や望ましい患者に使用されることを目指す「最適使用推進ガイドライン」の作成に向けた議論が進められています。神野議長は「ガイドラインは科学的根拠に基づいて作成される必要がある。治験を通じた科学的根拠に基づいて『効能効果』が設定され、それとは別により厳しい『ガイドライン』が設定されれば、必要以上に適応を狭めることになるが、それはいかがなものだろうか。『ガイドライン』が(医療費・薬剤費)効率化の武器にされないよう注視していく」との考えを改めて強調しています(関連記事はこちら)。
このほか代表者会議では、「医療保険改革について(高額療養費の見直しなど)政治先行で議論が進められることに懸念を覚える」、「新たな医療計画の中では『高額医療機器配置を地域医療構想調整会議で議論する』といった記載がなされるようだが筋が違うのではないか」(関連記事はこちら)、「『新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会』で医師の勤務状況に関する実態調査が行われているが、内容などがずさん極まりない。回答率がものすごく低くなるのではないか」(関連記事はこちら)といった政府・与党に対する厳しい指摘が出ています。
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