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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

薬価の抜本改革、基本方針を諮問会議で、具体案を中医協で議論―中医協・薬価部会

2016.11.30.(水)

 薬価制度の抜本改革については、政府基本方針を経済財政諮問会議で年内に定め、これに沿って具体的な改革内容を中央社会保険医療協議会の薬価専門部会などで議論していく。ただし両者に齟齬があってはいけないので、諮問会議と中医協が並行して議論を行っていく―。

 30日に開かれた中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長からこういった説明が行われました。

 25日の諮問会議に塩崎恭久厚生労働大臣が提出した「検討の方向性」では、「一定以上の薬価差が生じた医薬品について、少なくとも年1回、改定時期に限らず薬価を見直す」方針が示されています。これは「毎年改定」をも伺わせる書きぶりで、今後、厚労省と中医協との間でどのような調整が行われるのか注目が集まります。

11月30日に開催された、「第121回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

11月30日に開催された、「第121回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

塩崎厚労相が中医協の議論なども受け、諮問会議で意見を述べる中で基本方針を策定

 超高額医薬品が相次いで開発されるなど、医薬品費の増加が医療費の伸びの主要因となりつつあります。こうした点を重視し経済財政諮問会議では薬価制度の抜本改革が検討テーマとなり、25日の会合では塩崎厚労相から「検討の方向性」が提示されました。諮問会議では年内に薬価制度抜本改革に向けた「政府の基本方針」を策定する予定です。

塩崎厚労相が経済財政諮問会議に提示した、薬価制度抜本改革の方向性

塩崎厚労相が経済財政諮問会議に提示した、薬価制度抜本改革の方向性

 これを受け、30日の薬価部会でも「薬価制度の抜本改革」がテーマとなりましたが、塩崎厚労相の提示した『検討の方向性』や議論の進め方に対し、委員から批判が相次ぎました。

 診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「薬価制度については中医協で丁寧に議論してきたが、ここに来て『諮問会議の決定に従え』という流れになっている。薬価については中医協が議論の最上位にいるはずである」と述べ、諮問会議で基本方針を決定する点に強い不快感を示しました。

 支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も「塩崎厚労相の示した検討の方向性には、中医協で議論されていない項目もあり唐突である」と述べ、さらに中川委員と同旨の不満を漏らしています。

 関連して、諮問会議と中医協の役割分担も気になります。迫井医療課長は、こうした点について「薬価制度改革は中医協で議論するテーマである。一方、超高額薬剤の取り扱いなどは国会でも指摘される国民的課題であり、国家財政にも大きな影響を与える。そこで我が国の経済財政政策を議論する諮問会議において『薬価制度改革の基本方針を定める』旨が安倍晋三内閣総理大臣から指示されたものである。したがって、政府基本方針については諮問会議で定め、具体案についてはこれまで通り中医協で議論してもらう」と説明、さらに「諮問会議と中医協で齟齬があってはいけないので、両者で並行して議論していく」方針も明らかにしました。

 「年内の策定」ということで、残された時間は限られていますが、中医協で薬価制度改革に関する議論を行うとともに、塩崎厚労相が中医協をはじめとする関係者の議論も踏まえて諮問会議に出席し、そこで意見する中で「政府基本方針」が策定されることになります。中医協から塩崎厚労相に宛てて何らかの「見解」や「建議」などを提出するかについては決まっていませんが、少なくとも「中医協案をまとめた上で、それを諮問会議で議論する」といったプロセスは踏まないようです。

「毎年の薬価改定」、実現可能性やDPCへの影響は

 メディ・ウォッチでもお伝えしたように、塩崎厚労相が提示した「検討の方向性」の中には、「一定以上の薬価差が生じた品目(後発品を含む)について、少なくとも年1回、これまでの改定時期に限らず薬価を見直す」という項目が含まれています。

 これがどのような仕組みとなるのかは、今後の具体案に関する議論を待つ必要がありますが、文言どおりに読めば「毎年の薬価改定」をも意味するものと考えられそうです。このテーマについては、これまでも中医協で議論され、「反対」意見が大勢を占めています。30日の薬価部会でも、製薬メーカーの代表として参加している加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)や中川委員は「毎年の薬価改定は受け入れられない」との見解を改めて明確にしています。

 一方、支払側委員は「実勢価格から大きく乖離した償還価格を設定することは好ましくない。毎年改定には検討の余地がある」といった姿勢も示しており、30日の部会でも幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)から「議論の前提として、薬価と実勢価格(医療機関が卸業者から購入する価格)とがどう乖離していくのかのメカニズム、例えば『直線的に乖離していく』のか、『改定直後に一気に乖離する』のか、『改定からしばらくは乖離せず、薬価調査に近くなって乖離する』のか、などを明らかにしてほしい」と要望しています。

 塩崎厚労相の検討の方向性では「一定以上の薬価差のある薬剤」として、毎年改定の対象を絞っているようにも思えますが、▼薬価調査を毎年行わなければ薬価差は把握できないのではないか▼2年に一度の通常改定では「一定以上の薬価差のある薬剤」を対象にした薬価見直しが行われており、結局、全体を対象とした毎年改定なのではないか―など、さまざまな疑問も生じます。また、毎年の「薬価調査」を行うとして、▼価格妥結が十分になされておらず、調査から正確な実勢価格は把握できないのではないか▼早期妥結を極端に促せば、単品単価取引を阻害するのではないか―といった課題もありそうです。

 こうした課題を踏まえて、どのような仕組みを構築していくのか、今後の議論が注目を集めます。

 ところで仮に薬価が毎年改定されたとして、例えばDPC点数はどうなるのでしょう。通常改定であれば、見直し後の薬価を踏まえてDPC点数も見直すことになりますが、具体的な「毎年改定」の姿によって影響の度合いも変わってくると考えられます(関連記事はこちら)。

 

 また25日の諮問会議では、菅義偉内閣官房長官から「新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出等加算、一定の新薬について2年に一度の薬価引き下げにおいても一定程度価格を維持する仕組み。製薬メーカの新薬開発に向けた原資を確保することが狙い)の強化」なども検討するよう指示されています。これに関連して中川委員は「イノベーションの評価は有用性加算などで十分に評価されているのではないか。さらなるイノベーション評価は、新薬創出等加算ではなく、別の財源(補助金や研究開発税制)で対応すべきである」と述べ、現在試行導入中の新薬創出等加算のあり方そのものの議論も中医協で行われることになりそうです。

新薬創出等加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)と、加算が適用された新薬の薬価推移のイメージ

新薬創出等加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)と、加算が適用された新薬の薬価推移のイメージ

 

 なお厚労省は、中医協の薬価制度抜本改革に向けて、現行制度の「課題」を10項目整理しています。塩崎厚労相が示した「検討の方向性」に盛り込まれたもののほか、「長期収載品の薬価のあり方」なども課題に含まれています。

現在の薬価制度の大枠と、そこに内在されている課題を厚労省が整理した図

現在の薬価制度の大枠と、そこに内在されている課題を厚労省が整理した図

  
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