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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2015年度の医療費は41兆5000億円、調剤医療費の伸びが著しい―2015年度概算医療費

2016.9.20.(火)

 2015年度(平成27年度)の医療費は、前年度に比べて1兆5000億円・3.8%増加し、41兆5000億円となった―。

 こういった状況が、厚生労働省がこのほど発表した「医療費の動向」から明らかになりました(関連記事はこちらこちら)(厚労省のサイトはこちら)。

 この数値は、国民医療費の98%に該当する「概算医療費」と呼ばれるもので、労災や全額自己負担などの費用は含まれていません。したがって18年秋に公表される国民医療費では42兆3000億円強になると考えられます。

15年度の医療費の伸びは3.8%、調剤医療費の影響が大きい

 2015年度の医療費を見てみると41兆5000億円で、前年度に比べて1兆5000億円・3.8%増加しています。医療費は過去最高を更新しています。また1人当たりで見ると32万7000円で、前年度に比べて1万3000円・3.8%の増加となっています。

2015年度(平成27年度)の医療費は41兆5000億円で、前年度に比べて3.8%の増加となった。12年度から医療費の伸びは低い水準で落ち着いていたが、従前に高い水準に戻ったように見える

2015年度(平成27年度)の医療費は41兆5000億円で、前年度に比べて3.8%の増加となった。12年度から医療費の伸びは低い水準で落ち着いていたが、従前に高い水準に戻ったように見える

1人当たり医療費を見ると、75歳以上の後期高齢者では伸び率こそ低いものの、94.8万円で若人の4倍強となっている

1人当たり医療費を見ると、75歳以上の後期高齢者では伸び率こそ低いものの、94.8万円で若人の4倍強となっている

 医療費の伸び率は、12年度は1.7%、13年度は2.2%、14年度は1.8%と、最近は比較的低い水準にとどまっていました。しかし15年度は3.8%となり、11年度以前の高い水準に戻っています。この最大の要因は後に出てくるように調剤医療費の伸びにあると考えらます。この点は後に少し詳しく見ていきましょう。

後期高齢者の医療費、伸びは小さいものの、1人当たりでは95万円弱

 15年度の医療費を制度別に見ると、被用者保険が12兆2000億円(本人6兆4000億円、家族5兆20000億円)、国保が12兆円、後期高齢者医療(75歳以上の高齢者)が15兆2000億円、公費が2兆1000億円となっています。

 前年度からの伸び率を見ると、被用者保険が4.9%(本人6.4%、家族3.2%)、国保が1.8%、後期高齢者医療が4.6%、公費が3.4%となりました。

診療種類別の医療費を見ると、調剤医療費の伸びが著しく、これが医療費を押し上げる要因の1つとなっていることが分かる

診療種類別の医療費を見ると、調剤医療費の伸びが著しく、これが医療費を押し上げる要因の1つとなっていることが分かる

 また、制度別の1人当たり医療費を見ると、被用者保険が16万3000円(前年度に比べて4.2%増)で、うち本人が15万4000円(同4.6%増)、家族が16万1000円(同3.9%増)、国保が33万9000円(同5.1%増)、後期高齢者医療が94万8000円(同1.9%増)という状況です。

 後期高齢者の1人当たり医療費は、伸び率自体は若人に比べて低くなっていますが、もともと高いことに加え、後期高齢者の数も増えており、医療費に占めるシェアは15年度には36.6%となりました(0.3ポイント増)。今後も高齢化が進行することから、医療費を国民全員で負担しきれる水準に抑えるために、「高齢者医療制度改革」が依然として重要な課題の1つに位置づけられます。

調剤医療費、前年度に比べて9.4%増加

 診療種類別に医療費を見ると、医科入院が16兆4000円(医療費全体の39.5%)、医科入院外が14兆2000億円(同34.3%)、歯科が2兆8000億円(同6.8%)、調剤が7兆9000億円(同19.0%)となりました。

 診療種類別医療費の伸び率(対前年度)は、医科入院が1.9%、医科入院外が3.3%、歯科が1.4%、調剤が9.4%となっています。前述したように、調剤医療費の著しい伸びが、医療費全体の膨張率アップを招いていると考えられます。

診療種類別の医療費を見ると、調剤医療費の伸びが著しく、これが医療費を押し上げる要因の1つとなっていることが分かる

診療種類別の医療費を見ると、調剤医療費の伸びが著しく、これが医療費を押し上げる要因の1つとなっていることが分かる

 また、受診延日数(これは「延べ患者数」に相当する)の伸び率を診療種類別に見ると、全体では前年度に比べて0.05%の微増、医科入院で0.0%の微減、医科入院外で0.03%の微増、歯科で0.01%の微増、調剤で0.15%増という状況です。

受診延べ日数の状況を見ると、全体として増加傾向にあり、今後の詳細な分析が待たれる

受診延べ日数の状況を見ると、全体として増加傾向にあり、今後の詳細な分析が待たれる

 医科入院では「平均在院日数の短縮」や「重複・頻回受診の適正化」「入院から外来へのシフト」が一定程度進んでいるために、受診延日数が減少していると考えられ、その分、外来患者増につながっている可能性があります。

 さらに、診療種類別の1日当たり医療費を見ると、全体では1万6100円(前年度に比べて600円・3.6%増)、医科入院が3万5000円(同700円・2.0%増)、医科入院外が8500円(同300円・3.2%増)、歯科が6800円(同100円・1.2%増)、調剤が9600円(同700円・7.3%増)、訪問看護が1万1000円(同100円、0.5%増)となっており、やはり調剤医療費の伸びが大きなことが分かります。

保険薬局1施設当たりの医療費は、前年度から7.9%増加

 医療機関の種類別に1施設当たり医療費を見ると、大学病院173億2978万円(前年度比4.6%増)、公的病院51億7788万円(同4.1%増)、法人病院16億9500万円(同2.6%増)、個人病院7億7146万円(同2.2%増)、診療所1億188万円(同1.6%増)、歯科診療所3980万円(同1.4%増)、保険薬局1億4051万円(同7.9%増)などとなっています。

 やはり保険薬局の1施設当たり医療費の伸び率が大きくなっていることが分かります。

医療施設の種類別に1施設当たり医療費を見ると、保険薬局において大きな伸びを示している

医療施設の種類別に1施設当たり医療費を見ると、保険薬局において大きな伸びを示している

ハーボニーなどの影響か、抗ウイルス薬の薬剤費は前年度から3.6倍に

 これまで調剤医療費の伸びが著しいことを見てきました。これについて厚労省は「調剤医療費(電算処理分)」に特化した分析もしています(厚労省のサイトはこちら)。

 その中で目を引くのが、薬効分類別の薬剤費の動向です。とくに「抗ウイルス剤」を見ると、15年度は4139億円で、前年度に比べて2954億円・247.1%の増加となっています。つまり、14年度から15年度にかけて抗ウイルス剤の費用が3.6倍に膨れ上がっているのです。ここには、やはり画期的なC型肝炎治療薬であるハーボニー錠やソバルディ錠の出現が大きく影響していると考えられます。

抗ウイルス薬の薬剤費については、2014年度から2015年度(この間にハーボニーやソバルディが保険収載された)にかけて3.6倍に増加している

抗ウイルス薬の薬剤費については、2014年度から2015年度(この間にハーボニーやソバルディが保険収載された)にかけて3.6倍に増加している

抗ウイルス薬の薬剤費の動向を見ると、ハーボニーやソバルディが保険収載された2015年度(平成27年度)から爆発的に増加していることが分かる

抗ウイルス薬の薬剤費の動向を見ると、ハーボニーやソバルディが保険収載された2015年度(平成27年度)から爆発的に増加していることが分かる

 もっとも、ハーボニー錠などでは「完治」が見込めるため、将来的には医療費を縮減させる効果もあると見られており、超高額薬剤については様々な角度からの検討が必要と見られています。現在、中央社会保険医療協議会においては、もっぱらオプジーボに焦点を合わせた議論が進んでいますが、今後は超高額薬剤について分類した議論が必要とされています。例えばハーボニーのように将来の医療費を縮減させる医薬品と、オプジーボのように長期間に渡って使用が必要な医薬品では、薬価のあり方について考え方が異なる(前者では医療費の増大は一時的なものとなる可能性がある)からです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 今後の中医協や社会保障審議会・医療保険部会での議論にさらに注目が集まります。

高知県の平均在院日数、東京都より3週間近く長い

 15年度の推計平均在院日数は、日本全国では30.5日で、前年度に比べて2.1%短縮しています。

 しかし、都道府県別に見ると大きな格差があることが、改めて浮き彫りとなっています。

 長いところを見ると、▽高知県44.6日(同1.8%減)▽鹿児島県43.7日(同2.2%減)▽山口県43.1日(同0.4%増)▽佐賀県41.7日(同1.5%減)▽徳島県40.6日(同2.5%減)―などが目立ちます。

  逆に、▽東京都24.1日(同1.6%減)▽神奈川県24.4日(同1.5%減)▽愛知県25.4日(同2.4%減)▽岐阜県26.0日(同1.3%減)▽長野県26.7日(同2.3%減)―などで短くなっています。

 最長の高知県と最短の東京都を比べると、20.5日、つまり3週間弱、平均入院期間が異なることが分かります。患者の疾患構成や重症度によってここまでの格差が出るとは考えにくく、適正化が求められていると言えるでしょう。在院日数の無用な延伸は、医療費の膨張につながることはもちろん、院内感染や入院患者のADL低下などのリスクを高めてしまい、患者のQOLを下げることになる点にも留意が必要です(関連記事はこちら)。

都道府県別の推計平均在院日数を見ると、全体的に短縮傾向にはあるものの大きな格差があることが分かる

都道府県別の推計平均在院日数を見ると、全体的に短縮傾向にはあるものの大きな格差があることが分かる

 
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