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GemMed塾 ミニウェビナー DPC委員会のありかたとは?

ソバルディやハーボニーの登場で医療費の伸び激化、ただし「将来の医療費削減効果」も考慮を―医療保険部会

2016.5.27.(金)

 2015年4-11月の医療費は、過去に比べて「対前年の伸び率」が大きくなっており、この背景にはC型肝炎治療薬の「ソバルディス錠」と「ハーボニー錠」という高額薬剤の保険収載があると考えられる―。

 厚生労働省は26日の社会保障審議会・医療保険部会に、このような分析結果を報告しました。

 高額薬剤の保険収載のあり方が中央社会保険医療協議会などでも議論されており、医療保険部会でもこのテーマが議題となった格好です。ただし委員からは、「ソバルディ錠などには『C型肝炎の完治』が期待できることから、将来的な医療費削減効果も考慮すべきではないか」といった意見も出ており、より広い視点に立った議論が必要と言えます。

5月26日に開催された、「第95回 社会保障審議会 医療保険部会」

5月26日に開催された、「第95回 社会保障審議会 医療保険部会」

2105年度後半から医療費の伸び率高まる、ハーボニーなど抗ウイルス剤が増加

 医療費の伸び(対前年同期比)の推移を見ると、2011年度には3.1%でしたが、以後は▽2012年度・1.7%率▽13年度:2.2%▽14年度:1.8%―とやや低い水準で推移していました。「都道府県の行う医療費適正化対策」(特定健診や平均在院日数の短縮など)の効果が現れてきたのではないか、と期待する声も出ていました。

 しかし2015年度に入ると、4-11月における医療費の伸び率は3.1%となり、かつての高水準に戻っていることが分かったのです。特に、▽8月:3.5%▽10月:3.6%▽11月:5.2%―という具合に、年度の後半に入ってからの伸び率が高くなっています。

主に調剤医療費の高騰によって、2015年度後半から医療費の伸び幅が大きくなっていることが分かる

主に調剤医療費の高騰によって、2015年度後半から医療費の伸び幅が大きくなっていることが分かる

 この背景に何があるのか。厚労省保険局調査課の秋田倫秀課長は次のように分析しました。

(1)診療種類別に見ると、「入院外」と「調剤」で伸び率が大きくなっている

 ・入院外では、▽2012年度:1.0%▽13年度:1.7%▽14年度:1.3%だったが、15年4-11月は前年同期に比べて2.5%増

 ・調剤では、▽2012年度:1.3%▽13年度:5.9%▽14年度:2.3%だったが、15年4-11月は前年同期に比べて8.2%増

(2)「入院外」医療費の伸びには、入院医療から外来医療へのシフトなどの要素もある

(3)調剤医療費のうち薬剤料、特に多くを占める内服薬薬剤料に着目して見ると、「処方せん1枚当たり薬剤種類数」は減少、「1種類当たり投薬日数」は微増にとどまっているものの、「1種類1日当たり薬剤料」が前年同期に比べて6.7%と大きく伸びている。

(4)どのような薬剤の薬剤料が伸びているのかを薬効別に見ると、「抗ウイルス剤」で顕著である(2015年11月に内服薬薬剤料の総額は前年に比べて577億円増加しているが、うち抗ウイルス薬の増額が348億円で、増加額の60.3%を占めている)

調剤医療費高騰の要因を分析したところ、内服の抗ウイルス薬の薬剤料増加が著しいことが分かる

調剤医療費高騰の要因を分析したところ、内服の抗ウイルス薬の薬剤料増加が著しいことが分かる

 ちなみに2014年度の国民医療費の40兆8000億円程度と推計されており、1か月当たりに換算すると3兆4000億円となります。すると、抗ウイルス薬増加額の1か月当たり増加額348億円(2015年11月)は、「医療費を1%程度押し上げている」と考えることができます。

 この抗ウイルス剤薬剤料の大幅増には、画期的なC型肝炎治療薬である「ソバルディ錠」と「ハーボニー錠」の薬価収載が関係しているのではないかとも考えられます。中医協では、「高額薬剤の開発や適応拡大(対象疾患の拡大)が続けば医療保険制度が持たなくなってしまう」という指摘も強くなってきています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 この点、松原謙二委員(日本医師会副会長)は「将来的には、C型肝炎が完治することも期待されている。その場合、トータルで見れば医療保険財政にとってはプラスになると考えられる」と述べています。

 一方、支払側の立場から白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は、将来の医療費削減効果には理解を示した上で、「どの程度の期間、医療費高騰が続くのかを推計すべき」と要望しています。

入院外医療費、高齢化以外の要素で伸びている、今後の詳細分析が必要

 厚労省の秋田調査課長は、これとは別に「医療費の伸びの構造」についても解説しています。ちなみに、5月末にも閣議決定される「骨太方針2016」の中では「高齢化や診療報酬以外の『その他』の医療費の伸び」について分析を行うよう指示される見込みです(関連記事はこちら)。

 まず入院と入院外に分けて、医療費の伸びの要因を分解すると、「入院医療費の伸びはほぼ高齢化で説明できる」ものに、入院外医療費では「高齢化以外の影響」も大きいことが分かります。

入院医療費(ブルー)については、もっぱら高齢化によって医療費が増加しているが、入院外(赤)については、高齢化だけでなく他の要因で医療費が大きく増加していることが分かる

入院医療費(ブルー)については、もっぱら高齢化によって医療費が増加しているが、入院外(赤)については、高齢化だけでなく他の要因で医療費が大きく増加していることが分かる

 もっとも、ここには先に述べたように「入院から外来へのシフト」などの要素もあるため、より詳細な分析が待たれます。

 また、入院・入院外ともに「受診延日数」が減少する一方で「1日当たり医療費」(つまり単価)が上がり、総医療費は増加しています。

1人当たり医療費を見ると、入院・入院外とも増加傾向にあるが、特に入院では0-4歳、75-84歳、入院外では80歳以上で増加幅が大きい

1人当たり医療費を見ると、入院・入院外とも増加傾向にあるが、特に入院では0-4歳、75-84歳、入院外では80歳以上で増加幅が大きい

 入院では0-4歳、75-84歳で「1人当たり医療費」の伸び幅が大きくなっています。さらに▽受診率▽1件当たり日数▽1日当たり医療費―の3要素に分析すると、「1日当たり医療費」の増加が著しくなっています。一方、受診率や日数は減少していることから、「不要な入院の是正」や「在院日数の短縮化」が進んでいることが伺えます。

入院の1日当たり医療費を3要素に分解すると、受診率と1件当たり日数が減少し、1日当たり医療費が増加している状況が伺える

入院の1日当たり医療費を3要素に分解すると、受診率と1件当たり日数が減少し、1日当たり医療費が増加している状況が伺える

 一方、入院外は80歳以上の高齢者で「1人当たり医療費」の伸びが大きくなっています。3要素に分けると、「受診率」「1日当たり医療費」が伸びています。ただし受診率は若人で増加しているものの、高齢者では減少傾向にある点には注意が必要です。また、1件当たり日数が減少している、これは「長期投薬」による再診回数の減少によるものと考えられます。

入院外の1日当たり医療費を3要素に分解すると、1件当たり日数が減少し、受診率と1日当たり医療費が増加している状況が伺える

入院外の1日当たり医療費を3要素に分解すると、1件当たり日数が減少し、受診率と1日当たり医療費が増加している状況が伺える

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