一般病床の平均在院日数は16.5日、病床利用率は75.0%に―2015年医療施設動態調査
2016.9.7.(水)
2015年10月1日現在、活動中の医療施設は17万8212施設あり、うち一般病院は7416施設(前年よりも10施設減)。病院の病床数は167万3669床で、一般病床が89万3970床(同246床減)、療養病床が32万8406床(同262床増)となっており、一般病床の平均在院日数は16.5日(同0.3日減)、病床利用率は75.0%(同0.2ポイント増)となった―。
このような状況が、厚生労働省が6日に公表した2015年の「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」から明らかになりました(関連記事はこちらとこちら)(厚労省のサイトはこちら、過去の資料をご覧になりたい方はこちら)。
病院のダウンサイジングが進む
まず2015年10月1日現在、全国で活動している医療施設数を見ると17万8212施設(休止・1年以上の休診中施設を含めると18万458施設)で、前年より666施設・0.4%増加しました。
内訳を見ると、一般病院7416施設(前年に比べて10施設・0.1%減)、一般(医科)診療所10万995施設(同534施設・0.5%増)などとなっており、有床診療所は7961施設で前年から394施設・4.7%の大幅減少となっています。メディ・ウォッチでも繰り返しお伝えしているように(関連記事は関連記事はこちら)、有床診の減少が続いており、2018年中頃には7000施設を切る可能性があります。
病院について詳しく見てみると、開設者別では医療法人がもっとも多く5737施設(同16施設・0.3%増)、次いで公的1227施設(同4施設・0.3%減)が多くなっています。
病床規模別では、50-99床が2127施設(病院全体の25.1%)、100-149床が1429施設(同16.9%)、150-199床が1338施設(同15.8%)、200-299が1121施設(同13.2%)などとなっており、200床未満の中小規模病院が全体の7割弱(68.9%)を占めています。我が国の特徴である「小規模病院が多い」状況が続いています。また、病床規模を縮小した病院は283、逆に増床した病院が145となっており、多くの病院でダウンサイジングを行っていることも分かりました。後に述べるように平均在院日数の短縮の影響があると予測されます。
人口10万人当たりの一般病床数、最多の高知と最少の埼玉で2.2倍の格差
次に病床数を見てみると、2015年10月1日現在、日本全国で167万3669の病床があります。前年に比べて7043床・0.4%減少しています。医療法に定められた病床の種別に見ると、一般病床が89万3970床(前年に比べて246床・0.0%減)、療養病床が32万8406床(同262床・0.1%増)、精神病床が33万6282床(同1892床・0.6%減)、結核病床が5496床(同453床・7.6%減)、感染症病床が1814床(同36床・2.0%増)となっています。
人口10万人当たりの一般病床数は703.3床で、前年に比べて0.3床減少しています。これを都道府県別に見ると、もっとも多いのは高知県で1076.9床(同12.3床増)、次いで大分県1007.9床(同0.5床増)、北海道980.2床(同3.3床減)など。逆にもっとも少ないのは埼玉県で490.6床(同0.5床減)、次いで神奈川県507.0床(同1.7床減)、愛知県535.0床(同4.7床減)という状況です。最多の高知県と最低の埼玉県の格差は2.2倍で、昨年よりも若干広がりました。病床数の格差は、在宅医療や介護施設の整備状況とも関係していると指摘されています。2018年度からは新たな医療計画と介護保険事業(支援)計画がスタートするため(関連記事はこちらとこちら)、地域の医療・介護提供体制の再構築に向けた検討を総合的に進める必要があります。
平均在院日数、最長の高知と最短の神奈川で7.6日の開きあるも、全体として短縮傾向
次に一般病院の患者数や稼働状況などを見ていきましょう。
2015年の1年間における一般病院の1日平均在院患者数は67万32人(前年から0.0%の微増)、1日平均新入院患者数は4万981人(同2.2%増)、1日平均退院患者数は4万411人(同2.3%増)となりました。
外来については1日平均で130万9018人の患者が来院しており、前年に比べて0.5%減少しています。
平均在院日数は16.5日で前年よりも0.3日短縮しました。DPCの拡大や、診療報酬による誘導によって一般病床の平均在院日数は短縮を続けていることが分かります。もっとも都道府県別に見ると大きなバラつきがあり、最長は高知県の21.5日(前年に比べて0.5日減)、次いで熊本県の20.2日(同0.3日減)、和歌山県の19.7日(同0.2日減)で長く、逆に最短は神奈川県の13.9日(同0.2日減)、東京都の14.1日(同0.4日減)、愛知県の14.2日(同0.5日減)で短くなっています。最長の高知県と最短の神奈川県では7.6日と、一週間以上の開きがあります(関連記事はこちら)。無用な在院日数の延伸はADLの低下や感染リスクの高まりなどの弊害もあり、さらなる在院日数短縮への取り組みが待たれます。もっとも全体として在院日数が減少傾向にあることは間違いなく、次に述べる病床利用率に影響を及ぼします。
病床利用率は75.0%で前年に比べて0.2ポイント向上しました。在院日数を短縮すれば「空床」が生まれるため、同時に新規患者の獲得が必要です。しかし、近隣の他院でも同様の動きがあるため、新規患者の獲得はそう容易でありません。この利用率の向上は「集患」対策の効果に合わせて、病床規模の縮小(ダウンサイジング)の影響もあると考えられ、詳細な分析が待たれます。
最後に一般病院(大学附属病院など医育機関を除く)における100床当たり従事者数を見てみると、▽医師15.6人(前年に比べて0.3人増)▽歯科医師0.8人(増減なし)▽薬剤師3.4人(同0.1人増)▽看護師55.8人(同1.5人増)▽准看護師7.7人(同0.4人減)▽診療放射線技師など3.3人(同0.1人増)▽臨床検査技師など4.1人(同0.1人増)▽管理栄養士など1.8人(同0.1人)―という状況で、人員体制が手厚くなっている状況が伺えます。
ただし都道府県別に人口10万人当たりの医師数を見ると、全国平均では168.9人ですが、もっとも多い高知県では246.0人、もっとも少ない新潟県では134.0人となっており、大きな格差があることが分かります。現在、厚労省の検討会で「医師の地域・診療科偏在の是正」に向けた議論が進んでおり、年末までに具体的な方策が示される見込みです。
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