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GemMed塾 看護モニタリング

高額薬剤問題で激論、「小さく攻め拡大は定石」「制度が翻弄され大迷惑」―中医協薬価専門部会

2016.9.15.(木)

 中央社会保険医療制度協議会の薬価専門部会が14日開かれ、画期的な抗がん剤である「オプジーボ(ニボルマブ製剤)」など超高額な医薬品の対応に関連して、製薬業界からヒアリングを実施しました(資料はこちら)。期中の薬価改定が検討されている現状について、製薬業界は断固反対の姿勢。委員との質疑応答の中では、医療費増大の引き金になると懸念されるオプジーボの適用患者拡大について、製薬業界の「小さいところから始めるのは当然の企業戦略」との説明に対して、診療側委員が「企業戦略に公的医療保険制度が翻弄されるのは、たまったものではない」とするなど、製薬業界と委員の間で激論が展開されました。

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薬価の期中改定、断固反対

 オプジーボやC型肝炎治療薬の「ハーボニー錠(レジパスビル・ソホスブビル)」など、超高額薬剤の薬価収載(保険収載)が相次いでいます(関連記事『ソバルディやハーボニーの登場で医療費の伸び激化、ただし「将来の医療費削減効果」も考慮を―医療保険部会』)。相次ぐ超高額薬剤が医療費を押し上げ、社会保障制度の破綻につながる懸念が指摘されています。

 オプジーボは当初、推定対象患者数470人の希少がんの治療薬として薬価が設定されました。その後、薬価が据え置かれたまま推定対象患者数二桁多い疾患へと適応を拡大。仮に対象患者全員へ1年間投与すると、年間1兆7500億円の計算になります(関連記事『極めて高額な薬剤、医療保険を持続する中で、薬価の設定や適正使用をどう考えるべきか―財政審』)。

 国はこうした状況を懸念。中医協においては、オプジーボに限って2018年度の薬価改定を待たずに再算定(期中改定)する必要性が議論されています(関連記事『超高額薬剤の薬価、検討方針固まるが、診療側委員は「期中改定」には慎重姿勢―中医協総会』)。今回のヒアリングでは、こうした議論に対する製薬業界の意見を求めました。

 ヒアリングは3団体に対して実施。日本製薬団体連合会の多田正世会長は、「薬価こそが企業経営の要であり、持続的経営の源」とした上で、「これまでにないルールを突然導入し、適用することは到底容認できない。より広い視点から国民的な議論を行うべき」としました。

 米国研究製薬工業協会・在日執行委員会の梅田一郎副委員長も、例外的に薬価を引き下げるルールの導入について、「イノベーション促進に逆行する政策。日本国内での研究開発投資意欲を削ぐ」とする一方、「日本の医薬品市場規模の拡大はすでに十分に抑制されている」と指摘。欧州製薬団体連合会のカーステン・ブルン会長は、「問題は高い薬価ではなく、どのように財源の手当てを行うである」と論点が不適切であるとした上で、「予見性と安定性を確保するためステークホルダー間での総合的な議論が必要」としました。

慎重な議論求める製薬業界

 「薬価こそが医療経営の要」とする多田氏に対して、中川俊男委員(日本医師会副会長)は、持続可能な社会保障制度を考える上で「薬価が最大の論点」と指摘。その上で、「製薬メーカーとして、日本の医療界のプレイヤーとして、持続性を担保するための努力が見えない」と批判しました。これについて多田氏は、「革新的な新薬を作ることが使命。いい薬があって初めて(社会保障制度は)維持できる」と返しました。

 続けて中川氏が、薬価算定時の革新性の意義と適用拡大時の対応は異なるのではないかと尋ねると、多田氏は小さな市場から少しずつ拡大していく製薬メーカーの企業戦略への理解を求めました。しかし、中川氏は、「企業戦略であるなら大問題。企業戦略に公的医療保険制度が翻弄されるのは、たまったものではない」として、こうした問題意識があるか否かについてさらに尋ねると、多田氏は「『ただちに(期中改定)』というところに違和感がある。慎重な議論が必要」としました。

競合薬も高値の可能性

 また、一部報道にある第二のオプジーボとして注目されるがん免疫薬の「キイトルーダ」(米メルクが開発)について、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が言及。オプジーボの薬価が問題視されている中で、この問題解決に時間がかかり、その間に第二、第三の競合薬が承認されれば、オプジーボを基準に価格が付けられることになります。そのため幸野氏は「オプジーボの価格を見直した上で価格を決めるべき。オプジーボの価格が(競合薬にも)付いたら不合理だ」と製薬業界に意見を求めましたが、資料を持ち合わせていないなどの理由でコメントは得られませんでした(関連のニュースはこちら)。

厚労省「期中でも緊急対応可能」

 中川氏は、期中改定の可能性について、現行ルール上での対応は可能かと厚生労働省に質問。保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は「期中であっても緊急対応は可能。今議論しているのは、当初の予想を超えて対象患者数が増え、医療費の総額が増えた特例的事態への対応について。緊急対応は必要との認識」としました。

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