年に4回、効能追加などで市場規模が一定以上に拡大した医薬品の薬価を見直し―塩崎厚労相
2016.11.28.(月)
薬価収載後の状況の変化に対応できるよう、効能追加などによって市場規模が一定以上に拡大する場合、年4回の新薬の薬価収載の機会を活用して、柔軟に薬価を見直す―。
25日の経済財政諮問会議で、塩崎恭久厚生労働大臣はこういった内容を盛り込んだ「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を策定する考えを表明しました。
薬価の期中改定はDPC点数など診療報酬本体にも影響
社会保障費の高騰によって我が国の財政が圧迫されていると指摘されます。社会保障費の高騰には、高齢化のほか、医療技術の高度化、とくに超高額の薬価の出現が大きく関係していると分析されています(関連記事はこちらとこちら)。中央社会保険医療協議会では、画期的な抗がん剤であるオプジーボ(ニボルマブ製剤)を対象とした、緊急の薬価引き下げを来年(2017年)2月に実施する方針を決定したほか、薬価制度全般について抜本的な見直しを2018年度改定に向けて検討していくこととしています。
塩崎厚労相はさらに、次のような内容を盛り込んだ「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を策定する考えを25日の経済財政諮問会議で明確にしました。
(1)薬価収載後の状況の変化に対応できるよう、効能追加などで市場規模が一定以上に拡大する場合、年に4回ある新薬の薬価収載の機会を最大限活用して、柔軟に薬価を見直す
(2)市場環境の変化により一定以上の薬価差が生じた品目(後発品を含む)について、少なくとも年1回、これまでの改定時期に限らず薬価を見直す
(3)薬価算定方式(原価計算方式・類似薬効比較方式)の正確性・透明性の向上とイノベーション評価の加速化を図るとともに、医療保険財政に大きな影響を及ぼし得るバイオ医薬品について、研究開発支援方策(バイオシミラーについては、価格付けの方針、数量シェア目標を含む)を早急に策定する
(4)外国価格のより正確な把握を含め、外国価格との調整を大幅に改善する
(5)費用対効果評価による価値に基づき、上市後の薬価引上げを含めた価格設定を本格導入する(費用対効果評価の本格導入を加速化する)
基本方針の策定に向けて、中医協の議論がさらに活発化しますが、例えば(2)の一部医薬品に関する改定時期以外(つまり期中)の薬価見直しは、DPC点数に影響することはもちろん、医療機関経営への影響も大きく、診療報酬本体を巻き込む可能性もあり、どういった議論が展開されるのか注目を集めます(関連記事はこちら)。
なお諮問会議では、民間議員から次のような「薬価制度の抜本改革に向けた提言」も行われています。塩崎厚労相の考えにも一部取り入れられていることが分かります。
【薬価設定当初と異なる事態の際の迅速な薬価改定】
▼「患者数見込みの拡大に反比例する」形で可及的速やかに薬価を引き下げるルールを設ける
▼高額医薬品を対象として、保険収載後においても内外の価格差が一定の幅(例えば2倍以上)を超えている場合には可及的速やかに薬価改定を行う
【薬価算定の透明性】
▼「原価計算方式」(類似薬がない新薬の薬価算定ルール)において、製造総原価の詳細内訳の公表を義務付ける
▼費用対効果評価を本格適に導入する
【後発医薬品】
▼既収載品に対する後発医薬品の価格を3-4割程度に引下げ、後発品価格の一本化を図る(同一効能同一薬価)。また、長期収載品(特許切れ先発品)の保険償還額を後発品の薬価に基づき設定する
【流通価格を適切に反映する仕組みの構築】
▼国が毎年、医薬品の流通価格を調査し、下落実勢を毎年度予算に適切に反映する毎年改定の仕組みとする
▼薬価告示の時期や妥結率向上に向けたインセンティブの見直しを含め、更なる流通改善に取り組む
【研究開発投資の促進】
▼効能に応じて営業利益率を加算する仕組みなどを創設する
▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度を検証し、新薬創出により費用対効果の高い仕組みとする
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