オプジーボ、来年2月から薬価を半額に引き下げ―中医協総会
2016.11.16.(水)
来年(2017年)2月から、超高額な抗がん剤の『オプジーボ』について、緊急的に薬価を半額に引き下げる―。
16日の中央社会保険医療協議会総会では、このように了承されました。
オプジーボの年間販売額は1516億円、巨額再算定を準用して薬価を半額に引き下げ
革新的な抗がん剤のオプジーボは、希少がんであるメラノーマ(根治切除不能な悪性黒色腫、推定対象患者は470人)の治療薬として超高額な薬価(100mgで72万9849円)が設定されました。その後、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(推定対象患者は5万人)へ適応が拡大されましたが、適応拡大時期が2016年度の薬価改定の対象設定後となったため、高額な薬価が据え置かれています(関連記事はこちら)。
厚労省はオプジーボについて「超高額な薬価を維持したまま、さらに適応が拡大する」ような状態を放置することはできないとも考え、中医協で緊急的な対応(薬価の特例的な引き下げ)を行う方針が決定。今般、厚労省から具体的な対応方法が提示され、了承されました。
具体的には、11月24日(予定、企業から不服が出た場合には再度検討の可能性も)にオプジーボの薬価引き下げに関する告示(薬価基準の一部改正)を行い、年明けの2月1日から適用されます。このタイムラグは、すでに医療機関が購入している在庫などに配慮するものです。
具体的な薬価については、▼オプジーボ点滴静注20mgは現行の15万200円から7万5100円▼同100mgは現行の72万9849円から36万4925円―と半額に設定されます。
薬価引き下げの根拠としては、2016年度の薬価制度改革で導入された巨額再算定(特例の市場拡大再算定)のうち、「年間予想販売額が1500億円超、かつ予想の1.3倍以上の場合、薬価を最低で50%引き下げる」という規定が準用されました。
オプジーボを製造販売する小野薬品工業は11月7日に「2016年度の予想販売額が1260億円となる」(腎がんへの適応を含めて)ことを公表しており、ここに「流通経費」(いわば卸業者のマージン、医薬品産業実態調査に基づく2012-14年度の平均値7%)、「消費税」(8%)、「乖離率」(卸業者による医療機関への納入価格と薬価の差、2015年度調査による6.9%の2分の1と設定)、「2016年度の効能追加分」を勘案して、厚労省はオプジーボの年間販売額を1516億円と見積もり、上記の規定を準用することを決めました。
通常の薬価改定であれば、薬価調査を実施して販売額などを調べますが、今般はこの過程を踏まないため、こうした考え方に立ったものです。したがって、「流通経費」や「乖離率」などは、今回の緊急対応に限ってのものとなります。なお、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は乖離率を調査データの2分の1と設定した点について、「緊急の対応であり、保守的に、かつ厳しく見積もったもの」と説明しています。
超高額薬剤の薬価制度については、2018年度の次期改定に向けて抜本的な見直しを行う方針が中医協で固まっています。この点に関連して、厚労省は「今回の緊急的対応の対象となった医薬品(オプジーボ)について、2018年度改定においては、2017年度薬価調査に基づき、『今回の引下げを行わなかったと仮定した販売額』を算出の上、2018年度薬価制度改革に基づく再算定を改めて実施する」考えも示しています。
こうした見直しについて、医薬品製造メーカーサイドの加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は総会に先立って開催された薬価専門部会で、「イノベーション強化が極めて重要だが、メーカーに十分な収益がなければ、新薬の開発ができなくなってしまう。緊急の引き下げは、今後、あってはならない」旨を訴えました。しかし診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「そもそもメーカーの『企業戦略』によって今回の事態が起きている。製薬メーカーも医療保険制度の1プレイヤーであることを忘れてはならない」旨の強い批判を行いました。
なお、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、今後の薬価制度改革に向けて、「オプジーボなどについて最適使用ガイドラインが作成されれば、使用できる医療機関が限定され、そこに患者が集中することになる。そうなれば、残薬を減らすための機材導入などもできる。今後、使用量ベースの医薬品費請求についても検討すべき」と提案。中川委員も一定の理解を示しました。
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