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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

「ビジョン検討会設置は聞いていない」医師需給の新たな推計方針に不満噴出―社保審議・医療部会(2)

2016.10.21.(金)

 医療従事者の将来需給について、「働き方の変化」などを勘案してより詳細に推計することになりましたが、20日に開催された社会保障審議会の医療部会では、議論の進め方について委員から不満が噴出しました(関連記事はこちら)。

 厚生労働省は、IT技術などの進展による労働内容の変化を踏まえるほか、新たにタイムスタディ調査を行うなど、より精緻に「働き方の変化」を踏まえることが必要である点を強調し、委員に理解を求めています。

10月20日に開催された、「第48回 社会保障審議会 医療部会」

10月20日に開催された、「第48回 社会保障審議会 医療部会」

新たな働き方のビジョンまとめ、新データも収集して、改めての需給推計

 安倍晋三内閣が昨年(2015年)6月に閣議決定した骨太方針2015(経済財政運営と改革の基本方針2015)」は、「人口構造の変化や地域の実情に応じた医療提供体制の構築に資するよう、地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正などの観点を踏まえた医師・看護職員等の需給について検討する」よう厚労省に指示しています。

 厚労省はこれを受け、「医療従事者の需給に関する検討会」、さらに下部組織として医師、看護師、リハビリ専門職それぞれの将来需給を推計する分科会を設置。医師については、医学部入学定員設定の関係もあるため、一足先に議論を進め、今年(2016年)5月に次のような推計結果を示すとともに、医学部入学定員増特例措置の一部を当面継続する方針を固めました(関連記事はこちらこちらこちら)。

▽上位推計(医師需要が最も大きくなると仮定):2033年頃に約32万人で需給が均衡し、2040年には医師が1.8万人過剰となる

▽中位推計(一定程度、医師需要が大きくなると仮定):2024年頃に約30万人で需給が均衡し、2040年には医師が3.4万人過剰となる

▽下位推計(医師需要が最も小さくなると仮定):2018年頃に約28万人で需給が均衡し、2040年には医師が4.1万人過剰となる

将来の医師需給の試算結果、早晩、供給量が需要量を上回ることが明確に(上位推計でも2033年以降は医師供給過剰になる見込み)

将来の医師需給の試算結果、早晩、供給量が需要量を上回ることが明確に(上位推計でも2033年以降は医師供給過剰になる見込み)

 ただし、議論の中で「高度急性期などの医師労働時間は、より適正化(短縮する)ことなどが考慮されるべき」との指摘があり、分科会では▼医師の働き方・勤務状況などの現状を把握するための全国調査を行う▼新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)の策定―を行い、改めて「医師需給推計の精緻化」を行うことを軸とする中間まとめを行っています(関連記事はこちら)。

 厚労省は今般、この中間まとめに沿って、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(ビジョン検討会)を設置。ビジョン検討会の結論を踏まえて、医師などの将来需給推計を改めてより精緻に行うことを決めました。

 しかし20日の医療部会では、中川俊男委員(日本医師会副会長)や山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)らから、「ビジョン検討会の設置や、改めての推計などは医師需給分科会で一度も議論されずに決定された」「ビジョン検討会は非公開で開催される」といった点について不満が噴出。さらに、議論の際に厚労省医政局の神田裕二局長が不在で合ったため、中川委員は「局長は医療部会を軽視しているのか」という旨の発言まで行いました。

 これに対し、厚労省医政局総務課の中村博治課長は、前述のように医師需給分科会で「新たな働き方のビジョン」を策定し、精緻な需給推計を行うという中間まとめの趣旨に沿っていることを説明。さらに、同局医事課の武井貞治課長も「女性医師、勤務医などにどういった働き方がふさわしいのかをビジョン検討会で議論してもらい、さらにタイムスタディ調査を実施し、新たな就労データを入手し、精緻に推計したい」と述べ、理解を求めています。

 したがって、例えば医師需給分科会では、当面「偏在の是正」に向けた対策を練り、ビジョン検討会が報告書をまとめた(来年2月予定)後に、改めて需給推計の議論を行うことになります。

医療提供体制に係る改革公定表、ビジョン検討会のとりまとめ後に、医師・看護師などの需給推計の議論を行うことが示されている

医療提供体制に係る改革公定表、ビジョン検討会のとりまとめ後に、医師・看護師などの需給推計の議論を行うことが示されている

 

 なお、中川委員は「新たな需給推計の裏には、医師を増やそうという意図があるのではないか。医師が近い将来、過剰になることは明白であり、そうなれば何が生じるかは歯科医師や弁護士の状況を見れば分かる」とも指摘。これに対して加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は「病院では医師不足が深刻であり、『数年後に過剰になる』と言われても、現状ではとても負担に耐えられない」と述べ、当面の医師養成数増に期待を寄せており、医療提供側の内部でも見解に大きな相違があります。

 
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