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医療機関の自主的取り組みと協議を通じて地域医療構想を実現-厚労省検討会

2015.1.29.(木)

 医療提供体制の再構築に向けた議論が進んでいます。厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は29日、都道府県が地域医療構想をどのような手順で実現するのか具体的な方向性を示しました。まず「医療機関の自主的な取り組み」に期待し、次いで「地域での協議」、さらに「地域医療介護総合確保基金」の活用という三段階で進める考え方が示されています。

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1月29日に開催された、第7回「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」

1月29日に開催された、第7回「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」

 検討会では▽高度急性期▽急性期▽回復期▽慢性期―の各機能の境界点を模索しており、具体的な数量基準が間もなく明らかになる見込みです。

病床機能報告制度により、毎年度ギャップを把握

 地域医療構想の実現に向けたプロセスは、大まかには「地域医療構想と現状とを比較し、2025年のあるべき医療提供体制実現に向けた取り組みを行う」ことの繰り返しに集約されます。厚労省は、地域医療構想策定から実現までのプロセスを下図のように整理しました。

地域医療構想の実現に向けたプロセス

地域医療構想の実現に向けたプロセス

 ここでは、地域医療構想の実現に向けて最も重要な「2025年のあるべき医療提供体制を実現するための施策」を詳しく見てみましょう。

 都道府県は、2025年の必要病床数と現状との比較をまず行い、地域の課題を分析・把握した上でギャップを埋めるための取り組みを実施します。現状は、年度ごとに行われる「病床機能報告制度」のデータから明らかになります。したがって、毎年度ギャップを確認し、必要病床数に近づけるための取り組みを練り直しながら実施していく必要があります。

地域医療構想策定後の、構想実現に向けた取り組み年間スケジュール。これを毎年度繰り返し、構想を実現する

地域医療構想策定後の、構想実現に向けた取り組み年間スケジュール。これを毎年度繰り返し、構想を実現する

地域医療構想実現に向け、自主的な取り組みを促す

 ギャップを埋めるための取り組みは、主に次の3つです。

(1)医療機関の自主的な取り組み

(2)医療機関相互の協議

(3)地域医療介護総合確保基金の活用

 いずれも医療機関の「自主性」を重視していますが、都道府県は▽施設・設備整備への支援▽地域連携パスの整備・活用▽関係者が集う会議の開催▽ICT(情報通信技術)を活用した地域医療ネットワークの構築▽看護職員やソーシャルワーカーの研修開催-などの複合的な支援を行うことが必要です。

 (1)の自主的な取り組みは、各医療機関が、「自院の医療内容や体制」と、病床機能報告制度から明らかになる「他院の医療内容・体制や選択状況」などに基づいて、将来どの機能を目指していくかを自ら決めるものです。データに基づいて客観的に自院の機能を評価し、将来の患者像なども見据えた選択をしなければなりません。

各地域医療構想区域には、どの医療機能がどの程度あるのか(イメージ)

各地域医療構想区域には、どの医療機能がどの程度あるのか(イメージ)

地域医療構想区域内の各病院が、どのような医療機能をどれだけ選択しているか(イメージ)

地域医療構想区域内の各病院が、どのような医療機能をどれだけ選択しているか(イメージ)

 また医療機関が機能を選択する際には、各病棟で患者の収れんを図る必要があります。地域医療構想や病床機能報告制度の根底には、「病床機能の分化と連携を推進し、効率的で質の高い医療を提供する」という大方針があるためです。

 この点、厚労省医政局の佐々木昌弘・医師確保等地域医療対策室長は「各病棟において、一定数の患者は選択した機能からのずれが生じるだろう(下図参照)」と見通しながらも、「限られた資源を適切に使う努力が必要」との見解を示しました。

各医療機能を選択した病棟でも、入院患者と機能には一定のずれが生じると想定される

各医療機能を選択した病棟でも、入院患者と機能には一定のずれが生じると想定される

 また、自主的な取り組みを進めるにあたっては、機能に見合った必要な体制構築(人員や設備の整備)が必要となるケースも少なくありません。例えば急性期から慢性期に移行する場合には、療養環境の整備などが必要です。その場合には、(3)の地域医療介護総合確保基金を活用することも考えられます。

調整会議で、構想実現に向けた協議を実施

 また(2)の協議は、構想区域ごとに設置される「地域医療構想調整会議」(協議の場)で行われます。

 調整会議では、地域の状況とギャップの把握をした上で、具体的な「病床機能分化」や「連携の在り方」を議論していきます。例えば「この構想区域では回復期の病床が不足しているので、どうやって充足していこうか」と議論するイメージです。ここでも機能転換を進めるために、(3)の地域医療介護総合確保基金の活用が期待されます。

 会議のメンバーについて厚労省は、▽医師会▽歯科医師会▽病院団体▽医療保険者-を基本とし、議事などに応じて▽病院▽診療所▽特定の診療科などに関する学識者▽薬剤師会▽看護協会▽市町村-からの参加も求める、との提案を行いました。しかし、齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)から「幅広い関係者が参加して議論し、困難な場合には▽医師会▽歯科医師会▽病院団体▽医療保険者-が調整するという仕組みが好ましい」との指摘があり、厚労省医政局の北波孝・地域医療計画課長は「再考する」方針です。

 ところで、会議では「協議による調整」が求められますが、正当な理由なく出席を拒む医療機関も出てきそうです。この場合は、都道府県知事が▽開設・増床への条件付与▽過剰な機能への転換中止の命令(公的医療機関等)や要請(それ以外)-などを行い、会議の機能を担保することが考えられます。

 なお、調整会議は構想区域の設定後に発足しますが、これを前倒しして地域医療構想の策定にも関与することが望まれます。

疾病別の医療機関へのアクセスマップなどを活用


 

 地域医療構想を策定し実現するには、さまざまなデータを活用することになります。厚労省は以下のようなデータを用いることを想定しており、必要なものは同省から都道府県に提供されるもようです。

▽病床機能報告制度に基づく医療提供体制の状況

▽各医療機能別の医療需要に対する医療供給(医療提供体制)の状況

各医療機能別の医療需要に対する医療供給(医療提供体制)の状況

各医療機能別の医療需要に対する医療供給(医療提供体制)の状況

▽疾病別の医療需要に対する医療供給(医療提供体制)の状況

▽疾病別のアクセスマップと人口カバー率

疾病別のアクセスマップと人口カバー率

疾病別のアクセスマップと人口カバー率

▽介護保険関係の整備状況

▽2025年における二次医療圏別の人口推計

 地域医療構想の策定にあたっては、別の構想区域や都道府県にある医療機関を受診する患者(流出入)をきちんと把握する必要があり、その際にこうしたデータが極めて重要となります。

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