医薬品の最適使用推進ガイドライン、医療経済でなく「学術的」根拠に基づき作成せよ―日病協
2016.11.2.(水)
超高額な抗がん剤のオプジーボ(ニボルマブ製剤)などで作成が進められている「最適使用促進ガイドライン」は、あくまで学術的根拠に基づいて作成されるべきである―。
2日に開かれた日本病院団体協議会(日本病院会や全日本病院協会、全国公私病院連盟など13の病院団体で構成)の代表者会議では、今後の中央社会保険医療協議会などでこういった主張をしていく方針を固めたことが、終了後の記者会見の席で神野正博議長から報告されました。
また、社会保障審議会の医療保険部会にも病院団体の代表者を委員として出席されるよう求めていく方針も発表されました。
オプジーボやレパーサといった新規作用機序医薬品を対象に、ガイドラインを作成
中医協を中心に、オプジーボなどの超高額医薬品の薬価の在り方に関する議論が進められています。これまでに、当面の対応として▼専らオプジーボを対象として緊急の薬価引き下げを行う▼最適使用推進ガイドラインを定め、診療報酬上の留意事項通知に盛り込む―方針が薬価専門部会で固まっています(関連記事はこちらとこちら)。
後者の最適使用推進ガイドラインは、新規作用機序医薬品(当面、オプジーボと高コレステロール血症治療薬のレパーサ)を対象に、▼当該医薬品を使用する医療機関に求められる施設要件(施設の専門性や、副作用への対応体制など)▼当該医薬品の患者要件―を定めるもので、厚生労働省や関係学会、PMDA(医薬品医療機器総合機構)で作成が進められています。
日病協では、この最適使用推進ガイドラインの性質について「あくまで学術的な根拠に基づいて作成されるべきである」「(根拠は順次蓄積されていくため)普段の見直しが必要である」という点を中医協などで主張していく方針を確認しました。2日の記者会見で神野議長は「ガイドライン作成するか否かを決める時点では、『高額』という経済的な視点があると思うが、ガイドラインそのものの中に医療経済的視点を盛り込むことはおかしい」と説明しています。
この点について中医協では、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)を中心に「医療経済的な視点に立って医薬品の価格や使用方法などを検討する必要がある」旨の発言が出されています。日病協は「最適使用推進ガイドラインは、新規作用機序医薬品について、学術的な面からの適正使用を進めるもの」と主張する構えであり、両者は別々の側面からの指摘と理解することができそうです。
高額療養費など議論する社保審・医療保険部会にも病院代表の委員を
2日の日病協・代表者会議では、医療保険部会の委員に関する議論も行われました。医療保険部会では、来年(2017年)の医療保険改革に向けて高額療養費や入院患者の光熱水費(居住費)負担に関する検討が行われています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
この点について代表者会議では、高額療養費の対象には医療資源投入量の多い急性期の入院患者が多いにもかかわらず、医療保険部会には病院代表の委員が入っていないという点が問題視されました。神野議長は厚労省に対し「医療保険部会の委員として病院代表者を加える」よう要望していく考えを示しています。
また、介護療養病床や看護配置4対1などを満たさない医療療養病床の新たな転換先が社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」で議論されていますが、代表者会議では「一般病床からの転換も認めるべき」との方向で一致しています。年末にかけて特別部会で詰めの議論が行われますが、そこでの議論に要注目です(関連記事はこちら)。
さらに厚労省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会では、年末に「偏在対策」に関する意見を取りまとめる予定です。この点について神野義長と原澤茂副議長から「保険医定数制などを求める意見も出され、これに明確な反対意見は出なかった」旨が紹介されましたが、日病協としての結論には至っていません(関連記事はこちら)。
なお、医師需給について厚労省は「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(ビジョン検討会)を設置し、そこでの結論を踏まえて、医師などの将来需給推計を改めてより精緻に行うことを決めています。この点について日病協・代表者会議では「働き方のビジョンなどは医師需給分科会で議論するものと思っていたので、医療界は違和感を覚えている。(ビジョン検討会設置の目的ななどについて)きちんとした説明が必要である」旨を指摘しています(関連記事はこちらとこちら)。
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