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かかりつけ医は普及すべきだが、外来定額負担には反対、かかりつけ医の定義も曖昧―社保審・医療保険部会

2016.10.26.(水)

 「かかりつけ医以外の外来を受診した場合の、別途の定額負担」を導入しても、かかりつけ医の普及にはつながらないのではないか。そもそもかかりつけ医の定義が明確でない―。

 26日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会では、委員からこういった指摘が相次ぎました(関連記事はこちらこちら)。

 骨太方針2015などで検討を指示されたテーマですが、医療保険の専門家は「却下」という結論を出したと言えます。

10月26日に開催された、「第99回 社会保障審議会 医療保険部会」

10月26日に開催された、「第99回 社会保障審議会 医療保険部会」

ほとんどの委員が「かかりつけ医以外受診での外来定額負担」に反対

 安倍晋三内閣が2015年6月に閣議決定した骨太方針2015(経済財政運営と改革の基本方針)では、「かかりつけ医の普及」を目指し、外来の定額負担について検討するよう厚生労働省に指示。同年12月に経済財政諮問会議が決定した「経済・財政再生アクションプログラム」でも、同様の指示がなされています。

 具体的には、「患者がかかりつけ医以外の外来を受診した場合に、現行の1-3割の定率負担とは別に『定額負担』を導入する」ことの是非が検討テーマとなります。

経済・財政再生計画 改革工程表(抜粋2)、かかりつけ医以外の外来受診について定額負担の導入を2016年末までに検討するよう求めている

経済・財政再生計画 改革工程表(抜粋2)、かかりつけ医以外の外来受診について定額負担の導入を2016年末までに検討するよう求めている

 しかし26日の医療保険部会では、ほとんどの委員がこのテーマについて「反対」を表明しました。

 反対の理由として、まず「『かかりつけ医』の定義が不明である」という点があげられます。日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)では、2013年8月に、かかりつけ医とは「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義しました。しかし、ほとんどの委員は「共通認識になっていない」「定義があいまいである」と指摘しています。

 また多くの委員があげた反対理由の2つ目に、「仮にかかりつけ医がいたとして、『かかりつけ医以外』を受診した場合の定額負担をどう運用するのか」という点があります。例えば、高齢者では「眼科のかかりつけ医は●●先生、内科のかかりつけ医は◆◆先生」といった具合に、多くのかかりつけ医を持つ方も少なくありません。逆に若者は「かかりつけ医を持っていない」ケースも少なくありません。こうしたケースでは、どのように定額負担を課せばよいのかが極めて難解です。

 さらに、新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)や松原謙二委員(日本医師会副会長)らは、2002年の健康保険法等改正法の附則第2条に反するとも指摘します。附則第2条では「将来にわたって7割の給付を維持する」とされており、ここに定額負担が導入されれば、この規定を反故にすることになってしまうからです。

 この点、2015年の健保法等改正、2016年度の診療報酬改定で導入された「紹介状を持たずに特定機能病院などを受診した場合の定額負担(初診時5000円以上、再診時2500円以上)」は本規定に反しないかが気になりますが、松原委員は「身近なクリニックなどを受診し、紹介状を書いてもらえば定額負担は発生しない」ことから、本規定との齟齬はないとの見解を示しています(関連記事はこちらこちら)。

 また白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)や菊池令子委員(日本看護協会副会長)らは「定額負担を課すことで、かかりつけ医の普及が進むのか」という点にも言及しています。

 ただし、ほんとの委員は「外来の機能分化を進めるために、かかりつけ医の普及を促進することは極めて重要」との見解も強調しています。上記の大病院における定額負担や、2014年度診療報酬改定で導入された地域包括診療料・地域包括診療加算は、外来医療の機能分化を進めるものです。高機能の大病院に軽症患者が数多く受診することは、「高機能病院でなければ受けられない医療が必要な患者」のアクセスを阻害し、医療従事者の過剰負担を招くため、機能分化が求められていますが、まだ十分とは言えないようです。

 今回の外来定額負担は医療保険部会として「却下」の烙印を押されましたが、外来機能分化をさらに進める方策を練って行く必要性は薄れていません。

スイッチOTC薬の給付率引き下げ、別の高額薬剤にシフトしてしまうのでは

 26日の医療保険部会では、「スイッチOTC化された医療用医薬品の保険給付率を下げるべきか」というテーマについても議題となりました。やはり骨太方針2015などで指示されているテーマです。

 スイッチOTCとは、医療用医薬品としての使用実績などを踏まえて、「その成分は安全性が比較的高く、OTC(一般用医薬品など)として適切である」と判断された医療用医薬品のことです。最近では、消炎鎮痛剤のロキソプロフェンナトリウム水和物(外用)(ロキソニンゲルなど)がスイッチOTC化されました。一般用医薬品は全額自己負担であるのに、同じ成分の医療用医薬品では1-3割の自己負担で済んでいることなどに鑑み、骨太方針では▼公的保険の役割▼セルフメディケーションの推進―などを考慮して、見直しを検討するよう求めています。

 このテーマについては、さまざまな角度からの反対意見がありました。

 薬剤の専門家である森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「仮にスイッチOTCの給付率を下げれば、かえってより高額な医薬品へのシフトが生じてしまい。安価で安全性の高い医薬品の使用が阻害されてしまう。スイッチ化にもブレーキがかかるのではないか」と指摘し、反対姿勢を明確にしました。

 また前述の外来定額負担と同様に、「将来にわたって7割の給付を維持する」との規定に反するとの指摘もあります。

 一方、白川委員は「そもそもスイッチOTCは保険給付から除外すべきである」と指摘した上で、超高額薬剤を含めた薬剤の保険給付そのものという大きなテーマで議論する必要があると指摘しています。

 このようにさまざまな意見があり、医療保険部会としての合意は形成できていません。

 
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