かかりつけ医以外の外来受診、新たな定額負担の是非について年内に結論を出す―社保審・医療保険部会
2016.1.21.(木)
かかりつけ医以外を外来受診した場合に新たな定額負担を導入するのか、25対1医療療養や介護療養の転換を具体的にどう進めるのか、このような医療保険・医療提供体制に関する課題について、今年中(2016年)に結論を出す―。20日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会では、こういった検討スケジュールを確認しました。
政府の経済財政諮問会議は、昨年12月24日に「経済・財政再生計画改革工程表」を取りまとめました。わが国の経済と財政を再生するためには、さまざまな課題を解決する必要があります。工程表では、解決方策を「いつまでに」「どこで」議論するのかが明らかにされており、具体的な改革内容は今後、各所で行われる議論に委ねられています。
少子高齢化が進展する中で、社会保障費がわが国の財政を圧迫し、かつ企業の経済活動にも影響を及ぼしている(例えば健康保険料や年金保険料の事業主負担の高騰)ことから、経済・財政改革の中では、社会保障にも厳しい目が向けられており、工程表の中でも44の改革項目が提示されています。
20日の医療保険部会では、44項目のうち保険局に関連する項目と、改革スケジュールについて厚生労働省保険局総務課の渡辺由美子課長から説明が行われました。
例えば、「慢性期の医療・介護ニーズに対応するサービス提供体制に係る制度上の見直し」として、介護療養病床や25対1医療療養病床の転換策について2016年末までに結論を得ることとされています。この項目については、15日に開かれた「療養病床の在り方等に関する検討会」で3つの新たな転換先案が取りまとめられ、近く、社会保障審議会の医療保険部会・医療部会・介護保険部会などで具体的な制度設計に関する議論が始まります(関連記事はこちら)。
また、「医療・介護を通じた居住に係る費用負担の公平化」として、入院時の光熱水費相当額に関する患者負担をどのように見直していくべきか、やはり2016年末までに結論を得る必要があります。
「かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や外来時の定額負担」に関しては、かかりつけ医以外の外来を受診した場合に新たな定額負担を導入すべきか否か、やはり2016年末までに結論を出す必要があります(関連記事はこちら)。一方、診療報酬上の対応については、▽主治医機能の推進▽紹介状なく大病院の外来を受診した場合の新たな定額負担―について、現在、中央社会保険医療協議会で具体的な内容の議論をしており、2016年度からの新たな点数などに反映される見込みです(関連記事はこちらとこちら)。
さらに「世代間・世代内での負担の公平化を図り、負担能力に応じた負担を求める」点に関しては、主に高額療養費制度(歴月の医療費自己負担が一定額を超える場合には、超過額を保険から給付し、自己負担を一定額に抑える仕組み)の見直しについて、2016年末までに結論を得ることが求められています。
また「医療保険、介護保険ともに、マイナンバーの活用などにより、金融資産などの保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組み」を、2016年末までに検討しなければなりません。介護保険では、補足給付(低所得の施設入所者に対して、室料などを保険から給付する)に関して金融資産の保有状況などを考慮して対象者を選定する仕組みが導入されており、これを医療保険にも拡大してはどうかというテーマです。
このほか、「スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率の在り方」についても2016年末までに結論を得ることが必要です。
2016年末まで、つまり今年中に結論を出さなければならない項目が多数あることが分かります。遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)は、「医療保険部会で十分な審議時間がとれるよう工夫してほしい」と事務局に指示しています。
ところで、医療保険に関連する課題は、このほかにも▽高齢者医療制度の在り方▽被用者保険をめぐる諸課題(例えば任意継続被保険者制度の是非)▽子どもの医療費助成―などがあります。20日の部会では、「こうしたテーマについても検討スケジュールを示してほしい」との要望が相次ぎました。
新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)や小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は、特に高齢者医療制度について「被用者保険の中には、後期高齢者医療制度などへの拠出金・納付金負担が収入の4割を超えているところもある。現役世代の負担を過重にする仕組みは速やかに見直すべきである」と強く訴えています。
75歳以上の後期高齢者は、現役世代とは異なる「後期高齢者医療制度」に加入します。後期高齢者医療制度の財源は、患者負担を別にすると、▽公費5割(国4割、都道府県1割、市町村1割)▽高齢者自身の保険料1割▽現役世代からの支援金4割―という構造になっています。
現役世代からの支援金は、依然は「当該保険者の加入者数に応じたもの」となっていましたが、徐々に「当該保険者の負担能力に応じたもの」へと移行することになっています(関連記事はこちら)。しかし、少子高齢化が進む中では、支援金の負担が重くなってきており、抜本的な見直しを求める声がかねてからあります。今後の医療保険部会での議論が注目されます。
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