【医療保険改革】高所得・加入者若い保険者に一層の負担-全面総報酬割に合わせ、厚労省提案
2014.10.7.(火)
厚生労働省は6日、社会保障審議会医療保険部会に、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健保組合といった被用者保険による後期高齢者支援金の負担方法の見直し案を提示しました。加入者の所得が高い保険者ほど支援金の負担を大きくする「全面総報酬割」を導入するのに合わせて、65-74歳の前期高齢者が多い国保による高齢者支援金の負担を和らげる仕組み(財政調整)も見直します。見直し後は、若い加入者が多い被用者保険の負担を一層増やす内容です。
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年末に編成する2015年予算案に反映させる必要があるため、厚労省は正式な見直し案を12月には固めたい考えで、年明けに召集される次の通常国会への関連法案の提出を目指します。ただ、企業の健保組合が加入する健康保険組合連合会(健保連)は、現役世代の負担軽減策を欠いたままの全面総報酬割の導入に強く反対していて、調整の難航は避けられそうにありません。
後期高齢者医療制度が08年に創設された当初、被用者保険による支援金の負担は保険者の加入者数によって決まる仕組みでしたが、加入者一人当たりの所得が高い保険者ほど支援金の負担を大きくする「総報酬割」と呼ばれる仕組みが10年に部分導入されました。これは、保険者間の負担能力の格差に対する配慮からです。
一方、市町村国保では、若い人に比べて病気にかかりやすい前期高齢者の加入率が34.2%と、全保険者の平均(14.3%)を大きく上回っています。そこで、保険者間の財政負担を調整するため、協会けんぽや健保組合などの被保険者が前期高齢者の加入率や加入者の所得に応じて、国保の前期高齢者による支援金を一部、肩代わりしています。
厚労省が医療保険部会に提案したのは、全面総報酬割の導入に合わせてこうした財政調整の仕組みを見直して、▽この肩代わり分も全面総報酬割で決める形にして、前期高齢者の加入率による財政負担の調整は無くす▽総報酬割を導入する上、前期高齢者の加入率に応じて被用者保険側の負担を調整する-の2通りで、同省ではこのうちの案2を軸に調整を進めます。
ただ、仮にこの案が導入されると、加入者の所得が高くて前期高齢者が少ない保険者に大きな負担を求めることになるため、厚労省ではこうした仕組みに段階的に切り替えたり、被用者保険の負担が膨らみ過ぎないための対応策を検討したりするとしています。