中小病院などの主治医機能を推進するとともに、在宅医療の不合理解消を目指す―中医協総会
2016.1.14.(木)
中央社会保険医療協議会総会が13日、2016年度の次期診療報酬改定に向けた骨子を了承しました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。厚生労働省は、この骨子に対するパブリックコメントを募集しています。
今回は外来医療や在宅医療などについて、どのような見直しが予定されるのかを見てみましょう。
厚労省は、「一般外来は中小病院・診療所で、専門外来は大病院で」という機能分化を進めています。このため2014年度の前回診療報酬改定で、中小病院・診療所の「主治医機能」を評価する地域包括診療料・地域包括診療加算が新設されました。2016年度の次期改定では、次のような見直しを行うことで、主治医機能などのさらなる推進を図る考えです(関連記事はこちらとこちら)。
▽地域包括診療料・地域包括診療加算の対象患者の範囲を「脂質異常症、高血圧症、糖尿病以外の疾患を有する認知症患者」に広げる、などの拡充を行う(関連記事はこちら)
▽小児科のかかりつけ医機能を推進するため、患者の同意の下、適切な専門医療機関などと連携して継続的かつ全人的な医療を行うことを評価する(関連記事はこちら)
▽定期的・継続的な口腔管理により口腔疾患の重症化を予防し、歯の喪失リスクの低減を図る「かかりつけ歯科医」の機能を評価するため、初期う蝕(虫歯)に対する定期的かつ継続的な管理の評価などを行う
▽「かかりつけ薬剤師・薬局」について、次のような評価を行う(関連記事はこちら)
・患者が選択した「かかりつけ薬剤師」が、処方医と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握した上で患者に対して服薬指導等を行う業務を薬学管理料として評価する
・地域包括診療料などの算定患者に対してかかりつけ薬剤師が業務を行う場合は、調剤料、薬学管理料などに係る業務を包括的な点数で評価することも可能とする
・基準調剤加算について、「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、在宅訪問の実施、開局時間、相談時のプライバシーへの配慮などの要件を見直す
・医師と連携して服用薬の減薬などに取り組むことを評価するため、重複投薬・相互作用防止加算の算定可能な範囲を見直し、あわせて疑義照会により処方内容に変更がなかった場合の評価は廃止する
・継続的な薬学的管理を推進するため、「患者宅の服用薬を保険薬局に持参させた上で管理・指導を行い残薬削減などに取り組む」ことを評価するほか、分割調剤の活用を認めるなどの見直しを行う
一方、大病院の専門外来機能を評価し、軽症患者の大病院への集中を避ける(勤務医の負担軽減)ために「紹介状を持たずに、大病院の外来を受診する場合の特別負担」(定額)の徴収が義務化されます(関連記事はこちらとこちら)。
対象は「特定機能病院」と「一般病床500床以上の地域医療支援病院」で、具体的な金額(最低金額)は、今後、さらに調整されます。
在宅医療については、「多数の施設入所者に過度な訪問診療などを行わせ、診療報酬のキックバックを受ける」などの不適切事例を是正するために「同一建物に居住する複数の患者に、同一日に訪問診療を行う場合の減算」(同一建物・同一日減算)が設けられています。しかし、この規定がかえって診療行為を歪めている可能性があり、次期改定での見直しが予定されています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
在宅医療の見直し内容も多岐にわたり、ポイントは次のようなところです。
▽特定施設入居時等医学総合管理料の対象施設を見直し、名称を変更する
▽在宅時医学総合管理料・特定施設入居時等医学総合管理料について、「月1回訪問による管理料の新設」「重症度が高い患者の評価の拡充」「同一建物・同一日減算の定義を見直し、診療人数による評価の細分化」などを行う
▽在宅患者訪問診療料に係る「同一建物・同一日減算」の評価を見直す
▽機能強化型在支診などの実績として、看取りだけでなく、重症児に対する医学管理の実績も評価する
▽在宅医療を専門に実施する診療所を評価する
▽休日の往診・十分な看取りの実績を有する医療機関に関する評価の充実を図る
▽在宅自己注射の適正な評価を行うため、「注射指導回数に応じた評価の差の縮小」や「複数医療機関が同一患者に指導管理を行った場合の点数算定を認める」などの見直しを行う
▽重症児の訪問看護に積極的に取り組む訪問看護ステーションを評価する
▽病院・診療所からの訪問看護の評価を充実する
▽医療ニーズが高く複数の訪問看護ステーションからの訪問を受けている利用者に対して、同一日に2か所目の訪問看護ステーションが緊急訪問を実施した場合を評価する
▽在宅薬剤管理指導業務において、医師の処方内容に対する疑義照会に伴い処方変更が行われた場合を評価する
▽介護老人福祉施設の入所患者に対する薬学的管理を評価する
このほか昨今、注目を集めている「重症化」予防に向け、次のような見直しが行われます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▽糖尿病性腎症の患者の重症化予防のため、進行した糖尿病性腎症の患者に対する質の高い運動指導を評価する
▽ニコチン依存症管理料について、「標準的な回数の治療の実施を促すための評価見直し」「若年者の治療を充実するための喫煙本数に関する要件の緩和」を行う
▽慢性維持透析患者の下肢末梢動脈疾病について、「下肢の血流障害を適切に評価し、他医療機関と連携した早期の治療を行う」ことを評価する
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