地域包括ケア病棟、手術・麻酔の包括除外に向け、一歩前進か―中医協総会
2016.1.13.(水)
2016年度の次期診療報酬に向け、中央社会保険医療協議会・総会は改定論議を整理した骨子を了承しました。ここでは、急性期以外の入院医療について見直し内容を眺めてみます。
地域包括ケア病棟については、比較的軽度な急性期患者に対する入院医療を整備する観点から「包括範囲」などを見直す、ことが明示されました。
この点については診療側内部で意見に隔たりがありましたが(関連記事はこちら)、「手術・ブロック注射を除く麻酔」を出来高評価とする方向で、診療側の意見は収れんしていることが伺えます。なお、手術・麻酔が包括から除外された場合、地域包括ケア病棟入院料などの点数は引き下げられます。どこまでの引き下げになるのか、1月下旬からの議論に注目が集まります。
療養病棟など慢性期入院医療については、これまでの議論どおり次のような見直し内容が明示されています(関連記事はこちら)。
▽基本料2についても、医療区分の高い患者の受け入れに関する基準を設ける
▽医療区分の評価をより適正なものとするため、「酸素療法」「うつ状態」「頻回な血糖検査」の項目について、きめ細かな状況を考慮するよう見直す
▽在宅復帰機能強化加算について、急性期などから受け入れた患者の在宅復帰がより適切に評価されるよう、計算式・指標を見直す
▽障害者施設、特殊疾患病棟において、意識障害を有する脳卒中患者など、療養病棟の患者と同一の状態にある者について、適正な評価となるよう評価体系を見直す
すべての入院医療に共通する項目の1つとして「退院支援」の推進が挙げられます。この点、厚労省は次の3つの見直し案を明示しました(関連記事はこちら)。
(1)病棟への退院支援職員の配置を行うなど、積極的な退院支援を実施している医療機関に対する評価を充実する
(2)NICUからの退院や、地域連携診療計画を活用した医療機関間の連携について、さらなる推進を促すとともに簡素化を行う
(3)算定回数が少ない退院支援項目を廃止する
このうち(1)については、退院調整加算の施設基準に「退院支援の専従・専任看護師などの配置」を盛り込むなどの厳格化も予想されましたが、これでは同加算を算定できない病院が数多く発生するため、「より手厚い退院支援体制を敷いている病院の評価充実」という形になったと考えられます。
このほか入院医療については、次のような見直し項目が明示されています。
▽医師事務作業補助体制加算1の評価、算定対象を拡大する(関連記事はこちら)
▽入院中の他医療機関受診時の減算について、特に診療科の少ない医療機関などに配慮した控除率に緩和する(関連記事はこちら)
▽月平均夜勤時間の計算方法を見直すとともに、月平均夜勤時間72時間要件のみを満たさない場合について、早期改善に留意しつつ救済措置の水準などを見直す(関連記事はこちら)
▽7対1・10対1病棟において、看護職員の手厚い夜間配置、看護補助者の夜間配置の評価を充実する
▽13対1病棟において、看護補助者の夜間配置の評価を新設する
▽小児入院医療管理料を、「在宅療養指導管理料」「在宅療養指導管理材料加算」など在宅医療の導入に係る項目を退院月にも算定可能とする
▽小児慢性特定疾患への継続的な医療を確保するために、小児入院医療管理料の算定対象年齢を延長する(関連記事はこちら)
▽NICU・PICUの算定日数上限を引き上げる
▽調整係数について75%を機能評価係数IIに置き換えるなど、DPCについて必要な見直しを行う(関連記事はこちら)
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