臨床研究中核病院のDPC係数での評価、基本小委では否定的な意見相次ぐ―中医協・基本問題小委
2015.12.10.(木)
医療法上の臨床研究中核病院について、DPCの機能評価係数IIの中で評価してはどうかというDPC評価分科会の提案に対し、9日に開かれた中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会では診療側の委員から否定的な意見が相次ぎました。
ただし支払側委員は特段の反論をしていないため、厚労省は近く開かれる中医協総会に、改めて「臨床研究中核病院の機能評価係数IIでの評価」を提案する見込みです。
なお、この部分を除いてDPC改革案は概ね了承されています。
2016年度の次期診療報酬改定では、DPC制度についても見直しが行われます。DPCの制度設計などを検討する、診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会は11月30日に最終的な改革案をまとめました(関連記事はこちら)。
改革案は多岐にわたる内容を含んでおり、例えば「II群の要件に内科系学会社会保険連合の提唱する『特定内科診療』の診療実績を加える」、「機能評価係数IIに、重症患者の受け入れ状況を評価する『重症度指数・係数』を新設する」、「入院期間IIIを延長し、点数を引き下げる」、「患者の重症度を加味したCCPマトリックスを脳血管疾患、糖尿病、肺炎に試行導入する」などが目立ちします。
こうした見直し案の中で、最後までDPC分科会委員の意見が割れたのが「臨床研究中核病院を機能評価係数IIの中で評価すべきか否か」という点です。
厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨企画官は、臨床研究中核病院は「他の病院よりも高機能である」ことが医療法で担保されており、▽保険診療を受ける入院患者に地域のおける機能においてもメリットがある▽機能評価係数IIの考え方の1つである「高度・先進的な医療の提供機能」にも合致する―ため、機能評価係数II(地域医療係数の体制評価指数)で評価することが妥当と強調しています。
これに対し、DPC分科会では賛成意見も出ましたが、「臨床研究中核病院が、機能面で他のI群・II群病院よりもどれだけ優れているのかというエビデンスが弱い」「優れた病院は臨床研究中核病院に限らない」といった反対も出されていました。(関連記事はこちらとこちら)
ところで現在、地域医療指数のうち体制評価指数については、I群・II群病院では12項目のうち10項目を満たせば満点の評価を受けられます。ここに臨床研究中核病院の評価が入り13項目となったとして、既に10項目を満たしていれば、それ以上評価が上がることはないのです。こうした点を踏まえて、DPC分科会では「臨床研究中核病院の機能評価係数IIでの評価」導入を了承しました。(関連記事はこちら)
9日の基本問題小委では、DPC分科会の小山信彌分科会長(東邦大学医学部特任教授)からDPC改革案が報告されましたが、診療側の委員から「臨床研究中核病院の機能評価係数IIでの評価」について異論が出されました。
中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「臨床研究中核病院の評価は、一般財源から政策医療として手当する中で行うべき」と指摘し、診療報酬上での評価そのものに反対しました。
また万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、「臨床研究中核病院が優れたアウトカムを出しているのか、優れたプロセスで診療を行っているのかを見てから評価すべき」と述べ、2016年度の次期改定での導入は時期尚早と反対しています。
これに対し、眞鍋企画官や厚労省医政局研究開発振興課の神ノ田昌博課長は、「高度・先進的な機能を持つことは医療法で担保されている」ことや、「論文数や医師主導治験に関するアウトカムデータもある」ことなどを説明しましたが、診療側委員の納得は得られていません。
もっとも、支払側委員はこのテーマについて特段の反論をしていません。このため厚労省保険局医療課の担当者は、「近く開かれる総会にDPC改革案を報告するが、その中で『臨床研究中核病院の機能評価係数IIでの評価』を改めて提案したい」とコメントしています。中医協の基本問題小委と総会はほとんど同じであるため、診療側の委員とどのような調整が進むのか、今後の議論に注目する必要があります。
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