Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

ニコチン依存症管理料、中医協の支払側は施設基準の厳格化を要望―中医協総会

2015.12.17.(木)

 禁煙を望む人に対する指導を評価する「ニコチン依存症管理料」をどう見直していくべきか―。16日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、診療側委員から「算定対象患者を広げるべき」との意見が出される一方で、支払側委員は「施設基準を厳格化すべき」と主張するなど、激論が交わされました。

 またDPC見直し案のうち「臨床研究中核病院の機能評価係数IIでの評価」についても、診療側と支払側では意見の隔たりがあります。

 いずれも結論には至っておらず、年明け(2016年)1月からの議論を注目する必要があります。

12月16日に開催された、「第320回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月16日に開催された、「第320回 中央社会保険医療協議会 総会」

支払側委員は「禁煙指導の保険適用」そのものに対する疑問も

 ニコチン依存症管理料は、(1)ニコチン依存症にかかるスクリーニングテスト(TDS)で依存症と診断される(2)ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上である(3)直ちに禁煙することを希望し、説明を受け、同意をしている―という3つの要件を満たす患者のみが対象となります。

 厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「若年からの喫煙はニコチン依存症となるリスクが高い」ため、若年者について(2)の要件(ブリンクマン指数200以上)を緩和してはどうかと、10月21日の中医協総会で提案。

 診療側委員はこれを了承したものの、支払側委員は「そもそも禁煙指導を公的保険で賄うべきだろうか」との疑問を提示し、厚労省提案に難色を示していたのです(関連記事はこちら)。

 こうした状況を踏まえ、宮嵜医療課長は16日の中医協総会に「ニコチン依存症管理料と治療効果との関係」に関するデータを提示しました。

 ニコチン依存症の治療は「12週にわたり計5回の禁煙指導」を行うことが標準とされ、▽初回230点▽2-4回184点▽5回180点―に設定されています。患者の都合で5回の指導が終了する前に治療が中止された場合には、途中までの期間の点数を算定できます。

 宮嵜医療課長は、指導の回数と禁煙の成功率(9か月後の禁煙状況)とを比較したところ、5回の指導を終了した患者では、他(全体や1-4回での中止者)に比べて成功率が高い(49.1%)ことを指摘しています。

禁煙指導を5回(標準的治療方法)終了した場合、禁煙成功率は高くなる

禁煙指導を5回(標準的治療方法)終了した場合、禁煙成功率は高くなる

 診療側委員は、このデータから「禁煙指導には効果がある」としてニコチン依存症管理料の有用性を強調しました。

 しかし支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「全体でみると禁煙成功率は3割に止まり、『7割は失敗』という状況だ。やはり保険で賄うべきかという疑問がある」とした上で、「保険収載を継続するのであれば施設基準を厳しく設定すべきではないか」と指摘しました。具体的には、禁煙成功率の高い「5回の指導」が終了した患者の割合を施設基準に盛り込んではどうかと提案しています。

 両者の意見は相反関係にこそありませんが(診療側は算定要件、支払側は施設基準)、まだ隔たりがあり、年明け(2016年)1月からの詰めの議論がどう進むのか注目する必要があります。

禁煙指導により、最大で1346億円の医療費削減効果

 なお、厚労省健康局健康課の正林督章課長は、禁煙指導によって次のような医療費削減効果があることを紹介しています(関連記事はこちら)。この数字を基に診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「私が支払側委員であれば算定対象拡大に大賛成する」とコメントしています。

●20歳代:現行どおりブリンクマン指数200以上を対象とすると7.6億円、ブリンクマン指数の要件を撤廃すると132.5億円

●全年齢:ブリンクマン指数200以上を対象とすると991.1億円、ブリンクマン指数要件を撤廃すると1346.8億円

臨床研究中核病院のDPCでの評価、診療側は反対を再表明

 16日の中医協総会には、DPC制度改革案も報告されました。改革内容は概ね了承されましたが、懸案となっていた「医療法上の臨床研究中核病院を機能評価係数II(地域医療指数の体制評価指数の1項目)で評価する」点について診療側の中川委員から反対意見が改めて出されました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 中川委員は「かつての予算上の臨床研究中核病院(臨床研究品質確保体制整備病院)などでは、不祥事が相次いでおり、今回の提案は拙速である」「診療報酬ではなく補助金を充当すべきである」と強い調子で述べています。

 一方、支払側の花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「予算上の臨床研究中核病院の反省を踏まえて、ハードルの高い医療法上の臨床研究中核病院が設けられた」「体制評価指数の1項目であり、直接診療報酬で評価するものではない」ことから厚労省提案は合理的であるとして、提案を指示しています。

 厚労省保険局医療課の担当者は、「診療側委員からは強い反対があるが、支払側委員は賛成しており、結論は出ていない」として、年明けからの議論の中で改めてこの見直し案を提示することも含めて検討を進めることにしています。

【関連記事】
予防医療を保険給付の対象とすべきか、診療・支払側で激論―中医協総会
臨床研究中核病院のDPC係数での評価、基本小委では否定的な意見相次ぐ―中医協・基本問題小委
医療法上の臨床研究中核病院、DPCの機能評価係数IIでの評価を了承―DPC評価分科会
臨床研究中核病院を機能評価係数IIで評価する厚労省案、一部委員は猛反発―DPC評価分科会
7対1の重症患者割合、25%へ引き上げ軸に攻防開始、看護必要度にM項目新設―中医協総会
7対1病院、10対1などへの移行見据え「病棟群単位の入院基本料」を認める―中医協総会
臨床研究中核病院の承認要件固まる、医師主導治験3年間で4件以上など

病院ダッシュボードχ 病床機能報告