15年末にかけて「外来受診時定額負担」などを議論―医療保険部会
2015.10.22.(木)
社会保障審議会の医療保険部会では、これから年末(2015年末)にかけて「地域医療構想と整合性のとれた医療費適正化計画」や「かかりつけ医以外に外来受診した場合の定額負担」―などについて議論していく―。こうした方向が、21日に開かれた医療保険部会で確認されました。
安倍晋三内閣が策定した、わが国の経済と財政を復活させるための方針「骨太方針2015」の中では、社会保障分野の検討事項について「2020年度までのスケジュール」を策定することが求められています。
関係省庁(厚生労働省、財務省、総務省など)で協議して年内にスケジュールを固めることになっており、財務省は既に9日の財政制度等審議会・財政制度分科会にスケジュール案を提示しています(関連記事はこちら)。
医療保険部会でも政府と並行して検討項目について議論をしていくことになっており、具体的には次の10項目について検討します。
(1)外来医療費について地域差を分析し、重複受診などの適正化を行いつつ地域差を是正する
(2)地域医療構想と整合的な形で、都道府県ごとに医療費適正化計画を策定する(国が15年度中に標準的な算定方式を示す)
(3)都道府県の行う病床再編や地域差是正の努力を支援するための取り組み
(4)医療・介護を通じた居住に係る費用負担の公平化の検討
(5)かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や、外来時の定額負担についての検討
(6)世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点からの検討(高額療養費制度の在り方)
(7)世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点からの検討(後期高齢者の窓口負担の在り方)
(8)保険給付の範囲や内容について適正化し、保険料負担の上昇などを抑制するための検討(生活習慣病治療薬などについて、費用面も含めた処方の在り方などの検討)
(9)保険給付の範囲や内容について適正化し、保険料負担の上昇などを抑制するための検討(市販類似薬に係る保険給付の見直しの検討)
(10)後発医薬品の価格などを踏まえた特許の切れた先発医薬品の保険制度による評価の仕組みや在り方などの検討
これらの検討事項について、この日の医療保険部会では総括的な自由討議が行われました。
例えば(6)の高額療養費については、15年1月から「より高額な所得者に対する区分の設定」や「一般所得者の細分化」などが行われていますが、見直し対象は70歳未満に限定されています。この点について白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)や望月篤委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)から「70歳以上の高齢者についても所得の高い人はいる。70歳以上の高額療養費についても、見直しを行うべき」と強く求めています。
白川委員は、(9)の市販品類似薬(OTC類似薬)について、2012年度・14年度の診療報酬改定で「一部保険給付からの除外」が行われている点に触れ、「一部ではなく本格的に導入すべきだ。湿布薬については、健保連がレセプトデータを分析した結果を踏まえて、『第1世代湿布薬の保険給付からの除外』や『保険償還の上限設定』を提言している」ことも強調しています(関連記事はこちら)。
また財務省が強く推している(5)の外来定額負担(関連記事はこちら)については、菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)から「地域によって医療資源や所得はばらばらであり、一律の定額負担を導入しても効果に地域差が出てしまう。地域ごとに定額の『最低額』を設定するという仕組みが好ましいのではないか」との見解を披露しました。
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