高齢者の高額療養費をどのように見直すべきか、年内の結論目指し医療保険部会で検討開始
2016.7.15.(金)
世代間・世代内の負担の公平化を図るため、高額療養費の見直しに向けて年内(2016年内)に具体案をまとめる―。
14日に開催された社会保障審議会の医療保険部会では、このようなスケジュール感が確認されました。今後、月1回程度のペースで議論を重ねていく予定です(関連記事はこちら)。
被用者保険サイドは「現役世代の納得」を重視した見直しが必要と強調
今年(2016年)6月に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太方針2016)や、規制改革実施計画などでは、社会保障改革について具体的な指示がなされています。
例えば、医療費の「見える化」を行い地域差を縮減していくこと、軽度者への介護保険サービスのあり方を見直すことなど多岐にわたる内容が盛り込まれており、医療保険制度に直接関係するものとしては、14日の医療保険部会では次の2項目に焦点が合わせられました(関連記事はこちらとこちら)。
(1)高額療養費制度
(2)後期高齢者の窓口負担
このうち(1)の高額療養費については、現在、「70歳未満」と「70歳以上」で外来における負担上限が異なるなどの差異があります。この点について、世代間・世代内の公平(負担能力に応じた負担)を進めるための見直し案を年(2016年)内に検討することになっているのです。
また(2)の窓口負担については、後期高齢者において「原則1割」とされていますが、こちらも公平を確保するための見直し案を2018年度まで(集中改革期間)に検討することとされています。
これらをどのように見直していくかについて具体案はまだ示されていませんが、14日の医療保険部会では、委員からさまざまな意見が出されました。
被用者保険を代表する委員は、早急な見直しを求めています。後期高齢者医療の財源は、国が50%、若人からの支援(後期高齢者)支援金が40%、高齢者自身の保険料が10%という構成になっていますが、後期高齢者支援金などの負担が非常に重く、被用者保険(健康保険組合や協会けんぽ)では、保険料収入の4-5割が支援金などに充てられています(関連記事はこちらとこちら)。こうした事態を重く見て、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)や新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)、望月篤委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)らは「(支援する)現役世代の納得」を重視し、改革を断行するよう強く求めています。
とくに望月委員は、「外来特例(70歳以上では外来医療のみに着目した上限額が設定されている)の廃止」や「上限額の見直し」を来年度(2017年度)からすみやかに実施すべきと要望しました。
また白川委員は、「健保組合決算は2014年度に黒字、15年度も黒字となる見込みだが、これは加入者1人当たり5万円弱(事業主負担を合わせれば10万円弱)に相当する保険料率の引き上げを行ったためだ(関連記事はこちら)。高齢者支援金のために保険料率引き上げを行っている格好である」とし、「現役世代の納得」を十分考慮した見直しを行うよう求めています。
一方、原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)らは、国保改革(2018年度から財政責任が都道府県に移管される)に向けてシステム開発を行っていることを紹介した上で、「高額療養費の見直しによって開発中にシステムに改修を行う必要がある。早期の情報共有とあわせて、施行時時期に配慮をお願いしたい」と要望しています。
さらに福田富一委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長・栃木県知事)の代理として出席した山本圭子参考人(栃木県保健福祉部保健医療監)は、(2)の後期高齢者自己負担の見直しに関連して、「保険料の見直し」をセットで検討すべきと指摘します。
安倍晋三首相が本部長を務める社会保障制度改革推進本部では、昨年(2015年)1月13日に「医療保険制度改革骨子」をまとめ、そこでは「後期高齢者の保険料軽減特例(国が予算措置で保険料の軽減を実施している)を段階的に縮小し、激変緩和措置を講じた上で2017年度から本則に戻す(軽減は行わない)」考えが打ち出されています。山本参考人は、この「保険料軽減特例の廃止と激変緩和措置」と、「窓口負担のあり方」をセットで議論すべきと指摘しているのです。
「窓口負担のあり方」見直しは(2)のとおり2018年度内、保険料軽減特例の廃止は2016年中(2017年度から実施するため)に結論を出す必要があります。山本委員の指摘を踏まえれば、両者も本年内に議論することになりそうです。
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