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GemMed塾 看護モニタリング

健保組合の16年度予算、全体で1384億円の赤字、平均保険料率も9%超―健保連推計

2016.5.4.(水)

 2016年度は、健康保険組合全体では1384億円の赤字決算となり、保険料率の平均が前年度同様に9%を超える―。

 こうした状況が、このほど健康保険組合連合会が発表した2016年度の「健保組合予算早期集計結果の概要」から明らかになりました(前年度の状況はこちら)。

 健保連では、「経済・財政再生計画の改革工程表」に基づき、医療提供体制の見直し、医療費適正化施策の実施などを総合的に実行することが重要と強調しています。

赤字額はわずかに改善するも、高齢者医療制度創設以後9年連続の赤字

 健康保険組合には、主に大企業の従業員とその家族が加入しています。健保連では、16年度予算データの報告があった1378組合の数値を集計・分析し、健保組合全体(1399組合)の状況を推計しています。

 健保連によると、16年度は経常収入7兆81578億円に対して、経常支出が7兆9541億円で、健保組合全体で1384億円の赤字決算となる見込みです。前年度に比べて赤字総額は40億円減少(改善)していますが、2008年の医療保険改革で高齢者医療制度が創設されて以来、9年連続の赤字となる見通しです。

2016年度には、健保組合全体の赤字額は1384億円となり、保険料率を引き上げざるを得なかった組合が215となった

2016年度には、健保組合全体の赤字額は1384億円となり、保険料率を引き上げざるを得なかった組合が215となった

 赤字の大きな原因は、高齢者の増加によって、75歳以上の高齢者が加入する「後期高齢者医療制度」を支えるための後期高齢者支援金や、75歳未満の高齢者の加入割合を調整するための前期高齢者納付金が増加し、財政を圧迫している点にあります。健保組合全体では、高齢者支援金などが保険料収入に占める割合が42.78%と、依然として半分近くを占めています。さらにこの割合が5割超の組合は254あり、回答組合のおよそ2割(18.4%)となっています。これは、「加入者自身のためではない支出が、収入の半分近くを占める」状態であり、健保連は制度の改善を強く求めています。

協会けんぽ以上の保険料率設定が全体の5分の1を超える状況

 健保組合の主な収入は、加入者が納める保険料です。全組合の平均保険料率は、16年度には9.103%となり、前年度に続いて2年連続で9%超となっています。2007年の平均保険料率は7.308%だったことから、およそ10年間で1.25倍となっています。

 また、主に中小企業の従業員とその家族が加入する協会けんぽの平均保険料率(10.0%)以上の保険料率を設定している組合は299組合あり、健保組合全体の5分の1を超えています(21.7%)。

高齢者支援金などが収入の70%以上を占める健保組合も1%ある

 健保組合の支出で大きいのは、給付費(加入者が医療機関にかかった場合の7割負担分)と後期高齢者支援金・前期退職者給付金などです。後期高齢者医療制度が創設前の2007年度の1人当たり支援金総額を100とすると、2016年度には139.3となる見込みです。一方で、1人当たり給付費について、2007年度を100とすると、16年度には122.5にとどまっており、もっぱら「支援金などの増加が健保組合財政を圧迫している」ことが浮き彫りとなっています。

1人当たりの給付費は、2007年度に比べて22.5%増にとどまるが、後期高齢者支援金などは39.3%も増加している

1人当たりの給付費は、2007年度に比べて22.5%増にとどまるが、後期高齢者支援金などは39.3%も増加している

 この背景には、昨今の医療保険制度改革によって後期高齢者支援金の計算方法が、かつての「加入者割」(加入者数に応じた負担)から「総報酬割」(加入者数だけでなく、加入者の負担能力に応じた負担)へと徐々にシフトしていることがあります(関連記事はこちら)。

 また、支援金などが保険料収入に占める割合を健保組合ごとに見てみると、40-50%の健保組合が全体の45.5%と最も多く、次いで40%未満が36.1%、50-60%が14.5%、60-70%が2.9%となっています。前年度に比べて、支援金などの負担割合は小さくなっているように見えますが、70%以上の健保組合も1.0%(14組合)あります。901の健保組合は赤字で、これは全体の64.4%を占めています。

半数近い組合で、後期高齢者支援金などの占める割合が40-50%に達しており、70%以上となっているところも1%・14組合ある

半数近い組合で、後期高齢者支援金などの占める割合が40-50%に達しており、70%以上となっているところも1%・14組合ある

 

 こうした厳しい財政状況を受け、健保連では▽高齢者医療への拠出金負担の増加に対する負担軽減措置の拡充▽2017年4月に予定される消費税率引き上げに合わせた、公費投入拡大による高齢者医療費の負担構造改革―を求めるとともに、「経済・財政再生計画の改革工程表」に基づいた医療提供体制の見直し、各種医療費適正化施策の実施、国を挙げた保健事業の展開などを総合的に実行することが重要と強調しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

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