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医療費適正化計画、平均在院日数のみに着目した目標設定から脱却―厚労省

2016.3.25.(金)

 2018年度からの新たな医療費適正化計画では、これまでの「平均在院日数のみに着目した適正化目標」は立てず。在院日数の短縮を「病床機能の分化・連携」や「地域包括ケアシステムの構築」の中に織り込んだ新たな目標を立てる―。

 このような方針が、24日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会で厚生労働省から報告されました。

 厚労省は今年度内に医療費適正化計画の基本方針を策定し、各都道府県はこの方針に沿って具体的な計画を組んでいきます。

3月24日に開催された、「第94回 社会保障審議会 医療保険部会」

3月24日に開催された、「第94回 社会保障審議会 医療保険部会」

医療費適正化の実効性を高めるため、医療費適正化計画を見直し

 2008年の医療保険改革に伴い、都道府県には5年を1期とする「医療費適正化計画」の策定義務が課されています。

 昨年(2015年)の医療保険改革では、医療費適正化の実効性を高めるため、(1)病床機能の分化・連携の推進の成果を踏まえた医療費目標を設定する(2)都道府県の取り組みの中に「後発医薬品の使用促進」などを追加する(3)第3期計画(2018年度から、1期を6年間に延長)の前倒しを認める―という見直し方向が固められました。

 (3)は2017年度から第3期医療費適正化計画のスタートを認めるもので、これを可能とするために厚労省は今年度中(2015年3月まで)に新たな医療費適正化計画基本方針を策定する考えです。

2018年度からの第3期医療費適正化を前倒し実施することが認められており、厚労省は今年度(2015年度)内に新たな医療適正化基本方針を策定する

2018年度からの第3期医療費適正化を前倒し実施することが認められており、厚労省は今年度(2015年度)内に新たな医療適正化基本方針を策定する

 24日の医療保険部会では、現在、厚労省が固めつつある基本方針案(厚労省サイトはこちら)が報告されました。

効率的な医療提供目指し、「病床機能の分化・連携」に着目した目標を設定

 基本方針案は、(A)都道府県が定める目標(B)都道府県が取り組むべき施策(C)医療費の見込み(D)医療費適正化計画の達成状況の評価方法(E)国、都道府県、保険者などの役割―という構成になっています。

 まず(A)の目標について見てみましょう。都道府県には▽住民の健康保持▽医療の効率的な提供―の2項目について具体的な目標を設定することが求められます。

 このうち後者の「医療の効率的な提供」については、これまで【平均在院日数の短縮】に着目した目標を設定することが求められていました。現在の基本方針では「都道府県が定める医療計画における基準病床数等を踏まえ、平成29年度(2017年度)における平均在院日数の目標値を設定することが考えられる」とされています。

 この点について新基本方針案では、平均在院日数にのみ着目した目標設定から脱却し、「病床機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの構築が推進されることによる医療の提供体制を踏まえた医療費の水準」を目標とすることに改められます。

 ただし、「平均在院日数の短縮」がストップするわけではありません。厚労省保険局総務課の渡辺由美子課長はメディ・ウォッチに対し「平均在院日数の短縮は、病床機能の分化・連携に織り込まれている」とコメントしています。現在、地域医療構想が各都道府県で進められており、そこでは地域における▽高度急性期▽急性期▽回復期▽慢性期―のニーズを踏まえた必要病床数見込みなどが設定されることになりますが、高度急性期や急性期に病棟の機能を分化させる中では、自ずと平均在院日数の短縮が必要になってきます。より総合的に「医療の効率的な提供」が求められるようになると言えます。

 また「医療の効率的な提供」については、▽後発医薬品の数量シェア80%以上▽医薬品の適正使用の推進(重複投薬の是正など)―も目標が設定されることになります。

2023年度医療費、過去データからの推計値に、縮減策の効果を反映させて推計

 (C)の医療費見込みについては、新基本指針案の中で算定方法が示されています。ただし現時点では「外来医療費の見込み」に限定されており、「入院医療費見込み」の算定方法は今夏に追加されます。

 新基本方針案は、都道府県に対して外来医療費を次のように見込むよう求めています。

(ア)2013年度の医療費(実績推計)をベースに、過去の医療費の伸び率や人口動態などを踏まえて2023年度の医療費を推計する(医療費適正化前)

(イ)「特定健診・保健指導実施率」「後発品使用割合」について全国目標を達成した場合には医療費が縮減すると考えられが、その縮減を(ア)に反映させる(第1段階)

(ウ)さらに「1人当たり医療費の地域差」について、都道府県と保険者などが連携して縮減することを(イ)に反映させる(第2段階)

 (ウ)では、▽民間事業者も活用したデータヘルスの推進▽健康づくりインセンティブの強化(ヘルスケアポイントの実施など)▽糖尿病重症化予防の推進▽栄養指導などのフレイル対策▽予防接種の普及啓発▽重複投薬の是正―などによって、地域差を縮減することが求められます。

 また国は近く、NDB(ナショナルデータベース)を活用して都道府県間の医療費の地域差などを「見える化」したデータセット(厚労省サイトにあるサンプル)を都道府県に提供することにしており、これによって(ウ)の取り組みにより実効性を持たせたい考えです。

 なお、今夏に示される「入院医療費見込み」については、外来と同様に「過去のデータから導いた医療費」を、さまざまな施策で縮減する形で算定することになります。例えば「病床機能の分化・連携の推進」や「在宅医療などへのシフト」などが縮減内容に入る見込みです。

2023年度(第3期医療費適正化計画の最終時点)の医療費を見込むに当たっては、過去のデータを基にした推計値に、適正化施策の効果(縮減)を反映させる手法で行う

2023年度(第3期医療費適正化計画の最終時点)の医療費を見込むに当たっては、過去のデータを基にした推計値に、適正化施策の効果(縮減)を反映させる手法で行う

医療提供者にも「自主的な病床機能の分化・連携」などを要望

 医療費適正化は、厳しい経済状況の中で医療保険制度を持続させるために行われます。このため都道府県だけでなく、国や保険者、医療提供者、国民が協働して進めなければいけません。

 新基本方針案では、国に対して「データヘルスの精度向上の支援」をはじめとする保険者への情報提供や、財政支援などを総合的に行うよう要望。

 また医療提供者に対しては、「保険者と連携した重症化予防」「病床機能の分化・連携に応じた自主的な取り組み」「後発品の使用促進」「重複投薬などの是正」を推進するよう求めており、さらに国民に対しては「健康の保持増進」に向けた健診などの受診、健康づくりに励むよう期待しています。

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